横田 亜彩子 院長の独自取材記事
メンタルウェルビーイングクリニック用賀
(世田谷区/用賀駅)
最終更新日:2025/03/12

東急田園都市線の用賀駅から歩いて5分ほどの場所にある「メンタルウェルビーイングクリニック用賀」。明るく朗らかな印象の横田亜彩子院長は、社会人を経て医師になった経歴を持つ。「受診ハードルの低いクリニックにしたいんです」と語る横田院長は、一人ひとりが自分らしく生きる「ウェルビーイング」の実現をめざしているという。同院のコンセプトや横田院長が医師をめざしたきっかけ、診療にかける想いや取り組みを聞いた。
(取材日2024年10月22日)
患者一人ひとりのウェルビーイングをめざす
用賀という地を選んだ理由や、内装へのこだわりを教えてください。

当初は利便性から都市部を考えていましたが、ビル街や人混みの多さから、患者さんが通院する上で疲れてしまうのではと感じました。そんな折に用賀の街と出会い、緑の豊かさや空の広さ、開放的な雰囲気に惹かれたんです。患者さんがつらさや不安を抱えていても、空や緑を眺めて少しでもほっとしたり、気持ちが癒やされたりしたら良いなと思い、この場所に決めました。患者さんは緊張して来院されることが多いので、緊張をほぐせるよう内装にもこだわっています。人間は真四角の物や空間に緊張を感じやすいので、診察室の形も真四角を避け、受付カウンターも丸みを帯びたデザインにしています。また、真っ白な内装は目への刺激も強いため、壁紙はグリーンを基調として部屋ごとに色合いを調整しています。カフェカウンターがあり、お茶もお出ししているので、診療後にお茶を飲んで少し落ち着いてから帰っていただくこともできるんですよ。
クリニックのコンセプトは何でしょうか。
当院は「心と体を整える、ウェルビーイング」をコンセプトとしています。ウェルビーイングは健康状態に関わらずすべての方に共通するもので、私自身は「その人らしく生きられること」だと考えています。たとえ病気があっても、病気とうまく付き合い自分らしく生きていけるならば、それはウェルビーイングの体現ではないでしょうか。健康な方でも、悩みを抱えていない方はいません。悩みがある中で、どうやって心身を整えたら良いのかわからないという患者さんも多く、そういった方々の心と体を整えられる場所をつくりたいという想いもあります。患者さんの数だけウェルビーイングの形がありますので、通常診療やカウンセリング以外にも体のケアなどを行い、さまざまなアプローチを通して患者さんをサポートしたいと考えています。
どのような患者さんが来院されていますか。

以前勤めていたクリニックから引き続きいらっしゃる方や、通りがかりで知って来院される近隣の方など、さまざまです。オンライン診療も行っていますので、遠方にお住まいの方もいらっしゃいます。主訴は不眠やうつ病、適応障害が多いですね。精神科や心療内科と聞くとどうしても通いにくさがあると思いますが、当院では患者さんのウェルビーイングを実現する上で、「受診ハードルの低いクリニック」であるよう心がけています。現在の患者さんはそうした当院の想いに共感してくださっていて、家庭や仕事の相談など、誰でも抱え得る悩みを相談したいと来院される方が多くいらっしゃいます。人生にはいろいろなことがあるので、その時期その時期でメンテナンスするように、当院でメンタルや体を整えてもらえたらと思います。
患者が持つ「生きる力」を引き出す治療を
医師になられた経緯をお聞かせください。

もともと高校時代の将来の夢が医師で、オーストラリアへの留学中に内科のターミナルケアで1週間ほど学んだこともありました。ですが当時は終末期の患者さんと接するたびに悲しさから泣いてしまい、こんなに弱いなら医師は無理だと諦めたんです。そして社会人になり働く中で、親しい方がうつ病を患うということがありました。とても優秀な方でしたが、うつ病になるとあらゆる社会的な機能が落ちていくこと、そして一度罹患するとなかなか回復が難しいという現状を目の当たりにし、大きなショックを受けたんです。そして、うつ病などでメンタルが崩れた方が、再び自分らしく働けるような支援をしたいと思うようになりました。
アルコール依存の治療にも長く携わられていたと伺いました。
医師になった当初は、患者さんを「助けたい」「サポートしたい」と思っていました。しかしアルコール依存のようなコントロール障害は、医師主体の上からの治療ではなく、患者さん主体の治療が肝となります。患者さんの「自助力」を引き出し、患者さんが自分の力で回復していけるよう促す治療が大切なんです。自助力は「生きる力」ともいえます。患者さんの生きづらさのベースがどこにあるのか、話をじっくり聞きながら探っていき、治療を通して患者さんの生きる力を引き出していく。そうした経験が現在の私の診療の軸につながっていると感じます。大変でしたが、私自身も学ぶことが多かったですね。今でも当時の患者さんが、顔を見せにクリニックへいらしてくれるんですよ。患者さんにとって底つきの時期を知る人生の立会人として、関わり続けています。
診療の際に大切にしていることを教えてください。

精神科や心療内科は緊張した状態でいらっしゃる患者さんが多いので、必ず「よく来てくださいました」と伝え、ウェルカムな姿勢で緊張をほぐすよう心がけています。患者さんによって心地良く感じる距離は異なるので、診察室ではソファーや椅子など、好きなところに座ってもらうようにしています。また真正面ではなく、少し視線が逸らせるように45度の角度で患者さんと向かい合うことも気をつけている点ですね。診療方針を決める際は、患者さんに対して適切な診断をして、スタンダードな治療を説明するという基本の部分を大切にしています。すべての症状を当院で診ようとは考えておらず、他院が適していれば紹介しますし、入院が必要であれば入院設備のある病院を勧めます。患者さんが最短で回復していく道を見つけることを最優先にしていますね。
どんな人にも身近なクリニックへ
クリニックでは自費診療も取り入れられていますね。

自費診療の選択肢を多くしているのは、やはり「受診ハードルの低いクリニックにしたい」という想いからです。例えば自由診療のカウンセリングであれば病名の診断が目的ではないため、人間関係、体調のことなど些細なことでも気楽に相談していただけます。実際、精神的に問題のない方でも、自由診療を選択して受診される方は増えています。「病気ではないと思うけれど悩んでいて」など雑談ベースのお話も歓迎です。ご自身のことやご家族のこと、人間関係など、気兼ねなくご相談いただきたいです。また、うつ病に対するアプローチの一つとして、TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)にも注目しています。脳の特定部位に磁気刺激を与えることで機能を回復させるための治療で、薬物療法を続けていても効果が乏しい場合などに選択肢の一つとなります。
クリニック運営において、スタッフ同士で心がけていることはありますか。
あいさつをはじめ、患者さんへの声かけをきちんと行うことですね。また、患者さんの情報はどんな些細なことでも共有しています。ご意見をいただいた際はその内容を共有し、スタッフ間で話し合って改善するなど、クリニック全体で共通認識を持てるよう心がけています。ですが、こうしたことは私のほうから言わなくてもスタッフが自主的に行ってくれるんです。自分で言うのも何ですが、本当に優しいスタッフに支えられていると思います。良いクリニックであるためには、スタッフ全員が心身ともに健康でいることが大切です。ですので、福利厚生に体のケアを取り入れたり、雑談を含めコミュニケーションをよく取るようにしたり、お互いがお互いの体やメンタルを気遣える関係性を築いています。
読者へのメッセージや、今後の展望について教えてください。

精神科や心療内科は日常のちょっとした悩みからは遠く感じるかもしれませんが、そういった方々の声に応えていきたいと考えています。「1回だけ行ってみよう」「ちょっと相談だけしてみよう」など、どんな方にも来てもらえるクリニックにできるよう、これからも日々患者さんと丁寧にコミュニケーションを取り、適切な診療と真摯な対応を続けていきたいです。また、今後はウェルビーイングの考えが社会にもっと浸透していくよう、積極的に発信していければとも考えています。駅前にはビシネスビルもありますので、企業や産業医とも連携して、用賀で働いている方にもウェルビーイングを届けていけたらうれしいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とはオンライン診療/4400円~、自費診察/初診30分1万3200円、再診30分8800円、復職カウンセリング(50分×4回):一括3万3000円、分割3万5200円(8800円×4回)