伊井 礼 院長の独自取材記事
松原内科クリニック
(世田谷区/東松原駅)
最終更新日:2024/10/28
京王井の頭線東松原駅から徒歩3分。東松原商店街そばの住宅街に、2024年8月に開業した「松原内科クリニック」。伊井礼院長は、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医の資格を持ち、クリニックでは内科や消化器内科の診療に加えて胃や大腸の内視鏡検査が可能だ。開業に際し、管が細い新しい内視鏡システムを導入し、患者の苦痛に配慮した検査に努めている。「内科や消化器内科の症状以外でも、気になることがあったら何でも相談していただきたいです」と、穏やかに語る伊井院長に、開業の経緯やクリニックの特徴、患者や診療への思いを詳しく聞いた。
(取材日2024年9月17日)
めざすのは地域に根差した「患者さん第一」の医療
まずはご開業の経緯を教えてください。
これまで、大学病院や総合病院で、内科全般や消化器内科、内視鏡検査の経験を積んできました。自身が妊娠中のときには、検査という部分にしか携わることができず、大変もどかしい思いをしておりました。というのも、自分が検査を行った患者さんの検査後の様子がわからず、どう過ごしているのかとても気になっていたんです。自分が検査した患者さんが入院中には、こっそり様子を見行ったり、看護師さんがカルテに残しているコメントなどもチェックしておりました(笑)。検査の対応はもちろん、術後のフォローや経過観察まで、その患者さん一人ひとりとしっかり向き合いたいという思いが強くなり、開院することを決意しました。開院にあたって、幼少期を過ごしたなじみのある世田谷区がいいなと考えておりまして、東松原の地を選びました。
なぜ消化器を専門に志されたのでしょうか。
東海大学医学部付属病院の医局時代にお世話になりました、先輩方の存在が大きいです。先輩方は忙しいにもかかわらずいつも仕事を楽しんでいらっしゃり、お昼休みのときも食事を終えたら病棟をラウンドするなど、患者さんのために自分から動いていく方ばかりだったのです。診療に対しても、「病気を治す」ではなく「目の前の患者さんを治すにはどうしたら良いかを考えるように」と教えてくださり、私自身も医療にのめり込んだきっかけになりました。今でも、時間を見つけては恩師の検査を見学に行き、その手技を学ばせていただいています。そのような先輩方たちの姿に憧れて、この道に進むことを決めましたね。
診療のご方針を教えてください。
患者さんの変化をキャッチできるよう、症状だけではなく、顔色や足のむくみなど全体を診るようにしています。勤務医時代に担当したある患者さんにやつれた感じがしたのでお声がけしたら、ご家族がご病気で心労があったようで、涙を流してお話しされるのを伺ったこともあります。そういった心の変化が体の症状につながることもありますし、そうした人生を通じて寄り添う関係を築きたいと思いましたね。病院時代に患者さんと話していると、「ちょっといいですか……」と、主治医にはなかなか言えないからと、ご相談くださることがありました。私自身は、主治医だからこそ「忙しそうだから申し訳ない」と思わずにお話しくださることが一番だと思っています。申し訳ないと思わせてしまっていることがこちらとしても申し訳なく思いますので、患者さんが気軽に何でもお話しできるような環境を、積極的につくっていきたいです。
家族で通える幅広い診療を
院内造りではどのようなことを意識されましたか。
患者さんとそのご家族の方にも、負担なく過ごしていただくことです。例えば院内を車いすでも移動しやすいように動線を組んだり、急変にもすぐに対応ができるよう、内視鏡やレントゲンも完備したり。受付ともスムーズに連携が図れるよう、診察室との距離も近づけています。隣に薬局もあるので、受診後もスムーズにお帰りいただけますよ。現在は風邪症状の方や、消化器疾患、生活習慣病の方などが幅広く受診されている印象です。便秘や下痢のご相談は、内視鏡検査をすぐに勧めるのではなく、内服治療で経過を診ながら対応することが多いです。生活習慣病に関しては高血圧症や脂質異常症、高尿酸血症などの内服治療をされている患者さんがいます。あとは「眠れない」とご相談に来られて、睡眠薬を希望される方もいますね。今後も、20代からご高齢の方まで、幅広い年齢層の患者さんが利用しやすい環境を整えてまいります。
こちらでは痛みに配慮した内視鏡検査が可能と伺いました。
当院は先進の内視鏡システムを導入しており、胃内視鏡検査と大腸内視鏡検査の実施が可能です。胃内視鏡検査は、経口または経鼻のどちらかを、ご希望に合わせて選択できます。当院の経口内視鏡は経鼻で使用するものと同じくらい管が細く、えずきにくいため負担が少ないところが特徴ですね。もしも、検査時にポリープが見つかった場合には、ポリープの切除にも対応しており、ご要望に応じて、鎮静剤を用いた検査の実施が可能です。ぼんやりしている中で検査が実施されるので、苦痛を感じにくくなります。また、検査中は、検査に対して緊張や不安を感じている方が多いため、「検査の半分は終わっていますよ」「今は胃液を吸っているところです」のように、こまめな声がけや、背中をなでるなどして安心感をつくること大切にしています。私もスタッフも、気が紛れるようにとたくさんお話をしていますね。
スタッフさんとの連携も大切にされているのですね。
はい。マニュアルどおりではなく、柔軟な対応ができるような連携を大切にしています。患者さんが過ごしやすい環境をおつくりすることに加えて、顔と名前をしっかり覚えること、状態をよく観察すること、「今日はいつもとどんな違いがあるか」など、細かい変化を捉えることを一緒に意識していますね。以前、私が大腸内視鏡検査を担当している病院で、看護師から「患者さんがぼーっとしていて、様子がいつもと違う気がする」と、相談がありました。そこでCT検査で調べてみると、硬膜外血腫が発見されたのです。こうした経験からも、スタッフとの連携したコミュニケーションがあるからこその、きめ細かな診療が提供できるのだと実感しました。スタッフは以前一緒に働いたことがある方や、経験の深い方が多く、気心の知れた関係で、非常に心強く頼もしいですね。
どんなことでも気軽に相談できるクリニックに
医師として大事にされているお考えがあれば教えてください。
「患者さんにとっての主治医は自分一人だ」ということです。こちらも医局時代に先輩方から教えていただいたことで、今の自分の核になっています。当時の先輩方は、自分の患者さんに何かがあったらすぐに駆けつける、という患者さん第一の行動を体現されており、自分も患者さんにとってそんな心強い存在になりたいと思いましたね。クリニックを開業したらからには、患者さんにとっての主治医は自分になります。目の前の症状だけでなく背景にある本当の原因まで見つけて差し上げられるよう、大事なことも一見くだらないようなことも気軽にお話しして、困ったときにはいつでも顔が浮かぶような、生涯の健康を守るお付き合いをしていきたいですね。
伊井先生には娘さんがいらっしゃるそうですね。
はい、中学生の一人娘がいます。子どもと過ごす時間は、本当に自分にとってかけがえのものですね。開業後は、思うように娘と過ごす時間が取れないことも多くなりましたが、「お母さんは忙しくてごめんねって言うけれど、そんなことないよ!」とお手紙をくれたり、私も夫も帰りが遅いときは、「今日は私が作るね!」と夜ご飯を作って待っていてくれたり。子どもにもたくさん救われています。診療のない日曜日など、一緒に過ごす時間がとても大切です。
最後に、地域の方へメッセージをお願いします。
「このような症状で受診してもいいのかな」「どの診療科を受診したらいいのだろう」と迷われている方は、来院や電話のどちらでも良いので、お気軽にご相談ください。例えば皮膚科疾患の患者さんがいらした時なども、一般診療の領域で対応できる症状でしたら、当院で処置を行える体制を整えています。必要に応じて、専門機関へのご紹介も行っていますよ。専門外であっても、当院で可能な処置や処方はするようにし、必要に応じて専門の医療機関を受診してもらうことで、患者さんの負担を軽減できればと思います。また今後は、健康診断後のフォローや、がん末期の患者さんの終末期医療にも対応していきたいです。地域の皆さんに寄り添い、「近くにあって良かった」と思っていただけるクリニックをめざしていきます。