清水 総一郎 院長の独自取材記事
あいなん整形外科クリニック
(南宇和郡愛南町/宿毛駅)
最終更新日:2024/09/06

2024年7月、愛南町の御荘地区に新たに誕生した「あいなん整形外科クリニック」。院長を務める清水総一郎院長はこの地域で生まれ育ち、「いつか地元で開業したい」という学生時代からの目標を今夏ついにかなえることができたという。大学卒業後は長年県外の大学病院で研鑽を積み、2020年に愛媛・南予へと戻ってからは愛媛県立南宇和病院に約4年間勤めてきた。そんな清水院長が医師を志したきっかけや、開業にあたって新しく建てた施設のこだわり、そして長年にわたり愛着を持つ愛南町の地域医療について語ってもらった。今まさに歩み始めたばかりの医院のこれからに、注目してほしい。
(取材日2024年8月7日)
「いつか地元で開業を」という願いをかなえる
こちらは今年の7月に開業されたばかりなんですよね。

もともと学生時代から、いつか地元であるここ愛南町・御荘地区に戻って自分の医院を開業したい、と考えていたんです。縁あって2020年に関東から南予に戻り、開業前は愛媛県立南宇和病院で4年間整形外科の勤務医として働いていました。このタイミングでの開業となったのは、支えてくれるスタッフの人員がそろったことが大きいですね。看護師やリハビリテーションスタッフのほか、現在当院に勤めている職員の多くは、南宇和病院時代からともに働いてきた信頼できる面々ばかり。一緒に大勢の患者さんを診てきた仲間という感覚がとても強く、時には私のお尻をたたいて鼓舞してくれるような心強い人たちばかりです。
先生のこれまでの歩みについてお聞かせください。
中学時代までは愛南町で過ごし、高校は地元を出て岡山県の川崎医科大学附属高等学校へと進学しました。全国的にも珍しい医学部の附属高校なんですが、叔父がそこへ進学し医師となったことで学校の存在を知っていたんです。高校卒業後はそのまま川崎医科大学へ進学し、大学卒業後も同様に同大学付属病院で研修医となって、それから約10年勤めました。その間で1年だけ愛媛に戻り、四国がんセンターや愛媛県立療育子どもセンターで診療をしていた時期もありました。2020年4月には愛媛へ完全に戻り南宇和病院で勤務して、その後開業し、現在に至ります。
医師、あるいは整形外科を志したきっかけは何でしたか。

特にこれといった大きな動機はないのですが、もともと父が歯科医師だったので、医療に関わる職業は幼い頃から身近にありましたね。親の影響もあり、当初は自分も歯科医師になるのかな、とぼんやり思っていました。ただ昔からサッカーをはじめとしたスポーツが好きだったので、そこに関わりたい、貢献したいという思いもあったんです。あとは高校進学の際に大きな影響を受けた叔父が整形外科の医師になったこともあって、結果叔父とまったく同じルートで、整形外科の道に進むことになりました。
些細な症状の悩みから日々のリハビリまで、幅広く診療
開業から約1ヵ月の現在、こちらには主にどのような患者さんが訪れているのでしょう。

地域には高齢の方が多いので、骨粗しょう症の治療のほか、全身のさまざまな部位のリハビリに訪れる方が大半です。そういった状況も開業前からある程度予測できていたので、医院の建物を建てる当初から、リハビリルームは南窓で、明るく広々とした空間を作るよう念頭に置いていました。設備も先進の機器を多数導入しています。全身治療に対応したウォーターベッドも備えていますので、患者さんにも喜んでいただけたらうれしいですね。
先生の専門分野について、詳しくお聞かせいただけますか。
大学病院にいた頃は、いわゆる「手の外科」が専門でした。主に手や上肢のけが、手指や手首の腱鞘炎、骨折や関節の痛みの治療をメインとする分野です。手は腱、神経、血管、骨、関節からなる繊細な器官なので、かなり細かい診療・処置技術や知識を求められます。そもそも医療機関の母数が少ない過疎地域の個人医院である以上、当然今は専門にこだわらずさまざまな症状を幅広く診療する必要があります。ですがその中でも手の外科を専門として学んだ知識は、現在の診療にも非常に役立っているんです。持っていて損はない知識だったな、と強く感じています。
診療で患者さんと向き合う際、どのようなことを意識していますか。

話しやすい雰囲気は意識しているポイントですね。基幹病院で勤めていた頃は多忙で精神的にも余裕がなく、当時の自分を反面教師にするという意味でも、今は特に雰囲気づくりに気をかけるようにしています。具体的には、医師と患者という立場を取り払ったコミュニケーションを心がけています。もともと自分が生まれ育った土地でもありますし、狭い地域ですから、患者さんの中には昔からのご近所さんや知人、そのご家族なんかもいらっしゃるんです。そんな環境ですから、感覚としては親戚やご近所付き合いをする間柄に近い距離感で、患者さんと日々接しています。
医院が地域住民の交流の場となれるように
診療の中で、医師としてやりがいを感じる瞬間はどのような時でしょうか。

患者さんの笑顔を見られた時は、やはり何よりもうれしいですね。さまざまな診療科がある中でも、整形外科は骨折の治療などを筆頭に、特に治療の過程が目に見えてわかりやすい分野だと思うんです。過去に大学病院で勤めていた際、人工関節の手術に携わったことがあるのですが、患者さんが「手術が怖くてずっと悩んでいたのが、もったいなかった」と朗らかにおっしゃるのを聞いたこともあります。整形外科の診療を通じて人助けになっていると感じられる時に、これ以上ない幸せを感じます。これからもそんな瞬間を増やしていきたいものですね。
ご多忙な日々かと思うのですが、休日はどんな方法でリフレッシュしていますか?
7歳の息子と2歳の娘がいるのですが、平日の仕事終わりはよく息子とゲームをしていますね。家族は普段宇和島市に住んでいるので、平日は愛南町に住んでいる私が直接会えるのは週末だけなんです。ただ会うことができない平日も、息子とは共通の趣味であるオンラインゲームを一緒にプレイしながら、いろんな会話をしてコミュニケーションを取っています。昔は今ほど遠隔地に住んで気軽にやりとりできる手段もなかったものですから、そう考えると技術の進歩は本当にありがたいものだなあと感じますね。
最後に今後の目標や、読者へのメッセージをお願いします。

まだまだ医院としては始まったばかりで慌ただしい日々が続いていますが、ゆくゆくはこの場所が地域の寄り場や交流の場としての役目を果たせるといいな、と思っています。患者さんと私、そして気さくで明るいスタッフたちも含め、全員で、まるでご近所さんのように、長く親しくお付き合いできる関係を作っていきたいですね。診療科としては整形外科を標榜してはいますが、体の不調や悩み事、困り事など、症状や専門分野なども気にすることなく、何でも気軽に相談してもらえる存在になれるよう、これからも医院一丸となって頑張っていきたいです。