大橋 伯 院長の独自取材記事
にじいろこどもクリニック
(新潟市西区/新潟大学前駅)
最終更新日:2024/11/14
新潟西バイパス・新通インターからほど近い、アクセス良好な場所に立つ「にじいろこどもクリニック」。クリニックの名前や虹をモチーフにした愛らしいロゴマークには、「色とりどりの個性が集えるクリニックにしたい」という大橋伯院長の温かな思いが込められている。日本小児神経学会小児神経専門医として、大学病院や地域の基幹病院で、脳性麻痺やてんかん、発達障害などの神経疾患を専門に経験を積んだ大橋院長。同院では、一般的な小児疾患の診療や予防接種をはじめ、専門とする発達障害の診療まで、幅広く対応する。診療の際には、子どもの目線に合わせて、一人ひとりに真摯に向き合うことを重視。「毎日子どもたちに会えることが、この仕事の最大の魅力です」と柔和に語る大橋院長に、クリニックの特徴から今後の展望まで、さまざまな話を聞いた。
(取材日2024年8月7日)
「色とりどりの個性」が集えるクリニックをめざして
2024年5月に開業されたそうですね。クリニックのめざすところをお聞かせください。
私は脳性麻痺やてんかん、発達障害といった小児の神経疾患を専門にしています。そのため勤務医時代には、重症心身障害や発達障害の子どもなど、障害がある子どもを診る機会がとても多かったんです。それで開業にあたって、地域の子どもたちの一般的な小児疾患の診療や予防接種、健診に対応することはもちろん、専門とする重症心身障害や発達障害などの診療にも取り組んでいきたいと考えました。クリニック名の「にじいろ」や、虹の下にウサギとひよこをあしらったロゴマークには、「色とりどりの個性が集えるクリニックをめざす」という当院の理想を込めています。ロゴマークの原案は、大学生の娘が描いてくれたんです。
院内の造りにもこだわっているようですね。
色とりどりの個性のある患者さんが集えるよう、院内の動線には特にこだわりました。バギーやベビーカートに乗ったまま、診察室や処置室まで入れるように設計しています。点滴などを行う処置室までは入り口から一直線で進めるようになっていて、私が処置室に出向いて診察を行うことも可能です。さらに、一般の小児科外来の診察室とは別に、発達障害の外来専用の診察室も設けました。靴を脱ぐスタイルなので、床に座って遊ぶことも可能です。また低いテーブルや椅子を用意するなど、お子さんの目線に合わせて診療できるよう工夫しました。
どんな患者さんが多いですか?
開業して3ヵ月ほどですが、さまざまな患者さんが来てくださっています。一般の小児科外来には、赤ちゃんから中学生まで満遍なくいらっしゃっています。主訴としては感染症の患者さんがほとんどで、ここ最近は手足口病や新型コロナウイルス感染症の患者さんが多いです。発達障害の外来に関しては、初診時点で10歳未満のお子さんを対象にしているため、幼児から小学生くらいが多く来院しています。
子どもの目線に合わせて、一人ひとりに真摯に向き合う
発達障害の外来について詳しく教えていただけますか?
発達障害の外来では、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)など、発達に特性のある子どもの診療を行っています。初診時には、心理士が30分ほど事前問診を行った後、私が1時間ほどかけてじっくりと診察を行います。めざすのは、生活環境などを整えて、子どもの生活をしやすくすること。家庭や学校での困り事などを聞きながら、どうすればより楽しく穏やかに過ごせるかを一緒に考えていきます。今は以前に比べ、発達障害に対する理解が進んできました。それで、「集団活動に参加できない」「じっとしていられない」といった子どもの様子を見て、園や学校の先生が保護者に受診を促すこともあります。もちろん親御さん自身が「うちの子は発達が遅いのでは?」と感じて、相談にいらっしゃることもあります。
診療の際にはどんなことを心がけていらっしゃいますか?
あくまで、子どもが主役であり、一人ひとりに真摯に向き合うことを心がけています。風邪などで受診する際、子どもは「来て良かった」と感じることは少ないでしょう。中には泣きながら帰る子もいます。それでも、少しでも楽しい気持ちで来院し、帰宅してくれるよう努め、子ども目線で優しく対応することを大切にしています。心理士は小児分野で豊富な経験を持ち、看護師たちも特性のある子どもたちと接する中で成長を重ねています。自ら率先して行動するスタッフたちを、私はとても頼もしく思っています。
小児科の医師としてやりがいを感じる時は?
毎日子どもたちに会えることが、この仕事の最大の魅力です。泣いたり笑ったりもありますが、「やはり子どもはかわいいな」と思います。小児科の医師になって20年以上たっても、その気持は変わらないです。子どもが「バイバイ」と笑顔で言ってくれるだけで、うれしくなります。小さい時から診療していたお子さんが成長していく様子を見守ることができるのも、この仕事ならではのやりがいだと感じます。当院を開業する際、勤務医時代に診ていた当時まだ赤ちゃんだった子が、もう高校生になっていたり、患者さんたちがお祝いに来てくれた時はとてもうれしく感じました。そのように患者さんと長いお付き合いができるのはありがたいことです。
障害を抱えた子も気兼ねなく受診してほしい
先生が医師をめざしたきっかけや開業の経緯もお聞かせください。
私はよく風邪をひく子で、度々小児科に通っていました。そこで優しくしてもらって安心できたので、「医師」というより「小児科の医師」になりたいと思うようになりました。ですから医学部に入る前から、医師というより小児科をめざしていたんです。小児科の中にも、心臓病や小児がんなどさまざまな専門分野がありますが、私は神経系の疾患を専門に学びました。勤務医時代は日本小児神経学会小児神経専門医として、大学病院や地域の基幹病院、神経疾患の専門病院、療育センターなど、さまざまな医療機関に勤務して研鑽を重ねました。ただ長年にわたり小児神経の分野に特化して診療を続けてきた結果、風邪などの一般的な疾患を診る機会が少なくなり、「小児科の医師としての原点に立ち返って幅広く診療したい」という気持ちが強くなり、開業に踏みきりました。
今後の展望を教えていただけますか?
今後、新たに言語聴覚士に加わってもらうことを考えています。発達障害の子どもの中には、言葉やコミュニケーションが不得意なお子さんもいるため、言語リハビリテーションを提供できるようにしたいと思っています。私が小児科医としてのキャリアをスタートした当時は発達障害という症例は、医療関係者にもあまり認知されていませんでした。しかし20年以上が経過した現在では、発達障害の疑いを持って受診する子どもたちが増加し、軽症例も診断できるようになりました。ですのでこれまでの経験を生かし、多彩な個性を持つ子どもたちを支えることが、私の願いです。何か困った時、地域の親御さんや子どもたちに気軽に利用してもらえるクリニックになれたらいいと思っています。
最後に読者に向けたメッセージをお願いします。
発達障害の外来を設けてはいるものの、一般の小児科外来でも、基礎疾患があったり、体が不自由であったり、知的障害などのあるお子さんにも対応しています。子どもに障害があるために、地域の小児科クリニックへの受診をためらう方の中に、「この子を診てもらえるだろうか?」「理解してもらえるだろうか?」と不安に感じている保護者の方は多くいらっしゃいます。中には、「この子は病気があるから連れて行けるクリニックがなくて」と困っている方もいるでしょう。当院は、基礎疾患のある子どもも含め、さまざまな子どもたちに気軽に来ていただけるクリニックをめざしています。何かあれば、気兼ねなくご相談ください。