西村 祐紀 院長の独自取材記事
にしむら形成外科クリニック
(熊本市北区/新須屋駅)
最終更新日:2024/09/12

熊本電鉄本線・新須屋駅から徒歩約13分。国道3号の麻生田交差点から入ってすぐの場所にある「にしむら形成外科クリニック」は、2024年4月に開院したクリニック。院内は白を基調とし、患者の不安が和らぐような落ち着いた雰囲気だ。院長を務める西村祐紀先生は、日本形成外科学会形成外科専門医として、数多くの手術を経験してきた。リンパ浮腫の手術も行っており、長年の経験から日帰りでの手術が可能であるほどの実力の持ち主だ。「地域の方々に医療の視点から安心と安全を届けたい」。そう熱く語る西村院長に、診療に対する思いをじっくりと聞いた。
(取材日2024年7月10日)
形成外科専門医による治療を、熊本県内で
開業までのご経験を教えてください。

熊本大学医学部医学科を卒業後、熊本大学医学部附属病院と健康保険人吉総合病院にて研修医として経験を積みました。その後、熊本大学には形成外科の独立した講座がないため、熊本大学医学部附属病院の皮膚科・形成再建科に入局しました。こちらの病院は皮膚科と一緒になっているので、皮膚科についても学ぶことができました。それからさらに熊本機能病院形成外科・小児形成外科で半年間、熊本大学医学部附属病院集中治療部で半年間学ばせていただいた後、当時熊本では形成外科専門医の取得ができなかったため、東京医科歯科大学形成美容外科に国内留学をして、形成外科専門医の資格を取得しました。2019年に熊本大学病院に帰ってきて、5年間形成外科診療を行い、子どもの先天性疾患、乳房再建術、マイクロサージャリーなど形成外科分野を幅広く経験し、当クリニックの開業に至りました。
こちらにはどのような患者さんが来られていますか。
来院される方のご年齢はさまざまですね。皮膚科領域ももちろん診察しているのですが、赤ちゃんだとおむつによるお尻のかぶれ、若い方だとニキビなどの肌のお悩み、ご高齢の方だとイボなどで来院される方もいらっしゃいます。形成外科ではけがや傷痕、巻き爪など比較的軽度な症状の方から、皮膚腫瘍、眼瞼下垂や乳房再建、リンパ浮腫など、手術が必要になる症状を抱えている方にも来院していただいていますね。今までさまざまな医療機関、診療科で経験を積んできたからこそ幅広いお悩みに対応することができているので、この点は当クリニックの強みだなと日々感じています。
どのような設備を導入していますか?

リンパ浮腫の日帰り手術に対応していますので、手術室を備えています。それに伴い、最大77倍まで拡大可能な手術用顕微鏡を導入しています。クリニックでこれほどこだわった手術用顕微鏡を導入している医療機関は県内でもあまりないと思いますが、患者さんが通院できる距離に大学病院レベルの手術を行うことができるクリニックの存在があれば、地域の方々に安心していただけるかなと感じたため導入しました。ICG蛍光造影というリンパ管を可視化させるための機能も搭載しているので、どの箇所にどのような処置が必要なのかをスムーズに察知でき、より適切な手術を行える環境を整えています。
日帰りでのリンパ浮腫手術が可能
リンパ浮腫の手術はどのような方が受けられる手術なのでしょうか。

リンパ浮腫とは乳がんや子宮がん、前立腺がんなどでリンパ節切除を行ったことが原因でリンパの流れが悪くなり、むくみが出る症状のことを指します。なので同手術を受けた方や婦人科系の手術を受けた方が希望されて来院していただくことが多いですね。腕や足がむくんだり、全身にだるさや重さを感じたりするため、日常生活を送ることが困難になる方もいらっしゃるのです。蜂窩織炎などの感染症も発症しやすくなるので、術後に強いむくみが出ている方には、生活をより一層元気に過ごしていただくためにも必要な手術だと感じています。
こちらでは日帰りでリンパ浮腫の手術が受けられるそうですね。
そうなんです。リンパ浮腫の手術はリンパ管を静脈につないで、リンパ液が静脈に流れるようにするとても繊細な手術なので、顕微鏡を使用するんです。そうすると患者さんが少しでも動くと顕微鏡のレンズ内では大きくピントがずれてしまうので、全身麻酔で手術をすることも多いです。そのため入院が必要になることが多いのですが、今までの経験から部分麻酔で手術が可能なので、日帰りでの手術を行うことができるんですよ。入院をしての手術となると、仕事の休みを取るのも困難な方が多いと思いますし、患者さんのメンタル面でも大きな負担になると思うんです。日帰りでリンパ浮腫の手術を行っている医療機関は県内でも多くはないと思いますし、これは私の強みだと自負しています。
手術の際に心がけていることを教えてください。

形成外科医ですので、なるべく傷は小さく、きれいに縫合することを常に意識しています。手術によって病気が改善につながったとしても、できた傷はどんな傷でも一生物となってしまいます。大きく目立つ傷が体に残っていては、その後の人生を心から楽しむことができない方もいらっしゃると思うのです。さらに、少しでもよりよい人生を送るために、傷の修正、乳房再建、リンパ管浮腫の手術を行っています。そのためにできることは何でもしたいですし、その一つとしてきれいな縫合は常に意識しているんです。例えば傷に対していかに張力をかけずに縫合するか、糸の種類や針の動かし方など、患者さん一人ひとりの状態によって変えています。今までの経験を生かし、少しでも手術に対して不安な気持ちや、術後の心配を払拭できるような医師であり続けたいと思っています。
地域に安心と安全を提供できるクリニックをめざして
医師を志したきっかけを教えてください。

小さい頃から心臓外科の医師である父の背中を見て育ち、自然と「医師」という職業にずっと憧れを抱いていました。私も父のように、自身の手で人の命を救うことができる医師になりたいと心に決めたのは高校に入ってからなのですが、子どもの頃の作文などを読み返すと、将来なりたい職業に医師以外にも消防士や警察官などの職業も書いていて、私自身の中で一番大切なことは昔から「人の役に立つこと」なんだなと改めて感じました。手術などで忙しく父を家で見かけることは少なかったのですが、その分苦しんでいる患者さんに手を差し伸べていた彼をずっと誇りに思っています。
休日はどのように過ごされていますか?
休日はパーソナルジムでボクシングを習いに行っています。学生の頃は野球をしていましたし、合気道の初段も持っているので、昔から体を動かすことが好きなんです。もともとボクサーだった方が開いたパーソナルジムなので、とても本格的にボクシングを教えてもらっています。体を動かすことで体力がつくだけではなく、一挙手一投足どのように技を出すか集中しながら行うので、この集中力と判断力は日々の診療や手術にも生きているなと感じています。その他だと、トランプマジックにもはまっていたことがあるので、結構趣味は幅広いですね。機会があれば披露させてください!
最後に、これからの展望と読者の方へメッセージをお願いします。

熊本県内で形成外科の存在をもっと認識してもらえるように、その一助となるべく当クリニックも成長していきたいと考えています。冒頭にもお話ししましたが、形成外科専門医になるために県外に行くほど、まだまだ熊本県内では形成外科医の存在が医療者の間でも認識されていないと感じています。県内の形成外科レベルを引き上げるためにも、これからも一人ひとりの患者さんと真剣に向き合い、患者さんに笑顔になっていただけるような、安心と安全を提供できるクリニックをめざしていきたいです。形成外科でなら対応できる病気もたくさんあります。「こんなことで受診してもいいのかな?」と思わず、いつでも気軽に受診していただけるとうれしいです。