國分 麻依子 院長の独自取材記事
清和会クリニック
(奈良市/学園前駅)
最終更新日:2024/12/02

奈良市学園大和町の住宅街に2024年3月にオープンした「清和会クリニック」。慢性腎臓病の発症前から透析治療期まで一貫した治療を提供しながら、介護老人保健施設も併設しているクリニックだ。院長を務めるのは、日本腎臓学会腎臓専門医・日本透析医学会透析専門医である國分麻依子先生。外来診療では、腎臓内科以外にも骨粗しょう症や糖尿病などの生活習慣病の治療にも注力している。また、慢性腎臓病の進行を抑制するために、医師や看護師、臨床工学技士、栄養士などが連携するチーム医療で一人ひとりの患者をサポートしている。「自分が受けたいと思える治療を提供したい」と語る國分院長に、開業への思いや治療の特徴を聞いた。
(取材日2024年10月24日)
慢性腎臓病の前段階から介入し、重症化予防をめざす
國分院長は、開業医のお父さまの背中を見て医師になられたと伺いました。

昼夜問わず患者さんのために診療を続け、地域や社会全体の医療の発展にも取り組む父の在り方を尊敬し、医師をめざしました。腎臓を専門に選んだのは、末永く患者さんを診ることができるからです。腎臓病は一度患ったらその後の経過をずっと診ていくことになります。その上、生活習慣病など全身の疾患との関わりも非常に大きい病気です。そういった裾野の広い医療に自分は携わりたいと思ったのです。大学卒業後に入局した奈良県立医科大学附属病院の循環器腎臓代謝内科は、生活習慣病の治療やその合併症の管理が主な領域であるもの、実際は疾患の垣根なく何でも診る診療科で、朝から晩まで肺炎や脳梗塞など本当にさまざまな疾患の対応をさせていただきました。その後、奈良県総合医療センターで、腎臓病をはじめ心臓病、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病の治療の経験を多く積みました。
開業に至った経緯を教えてください。
父と同じように、生まれ育った奈良でいつかは開業して地域貢献をしたいという思いはありました。また、慢性腎臓病の患者は増加の一途をたどっているものの、腎臓内科がある医療機関がまだまだ少ないことを懸念していました。町の開業医のレベルでも腎臓を専門的に診られるクリニックが必要ではないか、と思ったのが大きなきっかけです。さらに、透析患者さんの高齢化も年々進んでいます。透析を始めたものの、高齢になることで医療機関への通院が困難になり、行き場がなくなってしまった方が増えている現状も気になっていました。そこで、介護老人保健施設を併設し、入所しながらでも透析が受けられる場所をつくりたいと思い、開業を決意したのです。
クリニックのめざす姿を教えてください。

まず、誤解のないように申し上げておくと、透析治療に力を入れているものの、患者さんに透析を勧めたいわけではないのです。もちろん必要な時期が来たりご要望を受けたりした際には、適切な透析治療が受けられる環境も整えています。しかし、私たちが最も重視しているのは、透析が必要になるまでの期間をいかに延ばせるか、です。重症化をさせないように、慢性腎臓病の前段階となる生活習慣病などの治療や進行を遅らせるための治療を早期に行い、万が一重症化された場合には安心して末永く透析が受けられる。そのようなクリニックでありたいと願っています。
治療の選択肢を提示しながら患者の人生に寄り添う
診療においてのポリシーを教えてください。

「自分が受けたいと思える治療を提供したい」というのが私のポリシーです。私が患者さんの立場なら、治療に関してあらゆる選択肢やそのメリット・デメリットまできちんと提示され、専門用語を使わずにわかりやすく説明されるのが望ましいと思っています。ですので、患者さんにもそういった対応を心がけています。また、私たちが取り組む治療は、患者さんとの綿密なコミュニケーションの上で生かされると考えています。何でも気軽に相談していただけるよう、スタッフ一同親しみやすい雰囲気づくりに努めています。
腎臓専門医として、どういったことにこだわっていますか。
まずは大前提として、透析が必要になるまでの期間をいかに延ばせるかを大事にしています。慢性腎臓病は進行してしまうと戻ることはありません。そのため、進行させないように、早期介入をして生活習慣の改善や治療を行うことにこだわり診療しています。次に腎不全が進んだ際の透析治療に関する選択肢の提示ですね。日本で透析を開始するとなれば、ほとんどの病院やクリニックにおいて、血液透析のみを提示しているのが現状です。しかし、実際には腹膜透析や腎臓移植という選択肢もあります。その選択肢を提示できるのは、腎臓専門医であること、さらにその経験値が豊富にあることが前提となります。当院では、患者さんに対し、最初から血液透析・腹膜透析・腎臓移植という3つの選択肢を提示させていただきます。こういった幅広い選択肢を最初からきちんとご提案する必要があると考えています。
透析室は居心地の良さにこだわられたそうですね。

透析施設といえば、ベッドがずらりと並んでオープンな造りになっている医療機関が多いですが、私が仮に透析を受けるとしたら、それは絶対に嫌だなと感じていました。当院では、ベッドとベッドの間にパーティションを立てて、プライバシーが守られた半個室の空間で透析を受けていただけます。また、座っても受けられるようチェアー型も用意しています。一方、感染症対策として個室も用意しています。感染症に罹患している方が外から直接この個室に入ることができ、一般の患者さんと交わらないような設計になっています。また、こちらの介護老人保健施設に入居中で、かつ透析が必要な患者さんにとっては、エレベーターを降りたすぐの場所に透析室があるので、身体的にも負担が少なく透析が受けていただけるのではと考えています。
定期検診を推奨、異変があれば早めの受診を
日常の診療において患者に対して心がけていることは何でしょう。

何かしらの身体の異変や疾患を抱える患者さんの多くが、言葉一つで納得できるわけではないと思うのです。ましてや医師と信頼関係が築けていない状況ですぐに病名を告げられたとしても不安になることも多く、納得できなくて当然でしょう。それまでに予防的な治療や症状が良くなったり悪くなったりの時期を経て、医師やスタッフとさまざまな話をする中で、徐々に自分に合う治療法を考えていくほうが良いと思いますし、そのためにはある程度の時間が必要でしょう。私は、患者さんが困っていることや生活状況などを把握するために、患者さんとの会話をとても大切にしています。特に専門としている慢性腎臓病は、残念ながら回復がほぼ見込めない病気です。だからこそ、人生の伴走者としてずっと支えて差し上げたいですし、お気持ちに寄り添っていきたいなと。そして少しでも透析や移植までの期間が延びればと願っています。
生活習慣病の治療にも注力されていますね。
日本の透析の原因疾患の1位は糖尿病、次いで高血圧症というように、生活習慣病と慢性腎臓病の関連は非常に大きいのです。起こり得るさまざまな合併症を早期に予防していくことが重要だと考えています。また、他の診療科の医師と腎臓専門医では、腎臓に関する重症度の判定の仕方に差があり、腎臓専門医は透析にならないよう早めに手を打つための判断もできます。腎疾患に関して、より早期のご紹介を広く呼びかけているところです。また、食事療法では外来で栄養士が個別のアドバイスも行っていますので、ご活用いただけたら、と思います。一方、骨粗しょう症のリスクも高まるため、予防治療には非常に力を入れています。骨折の予防により、患者さんの日常生活動作が保たれた期間を延ばしていくことも、私たちの目標の一つです。骨密度などが気になる方は、ぜひご相談ください。
最後に地域の方へメッセージをお願いします。

奈良県においては、全国平均より速いスピードで高齢化が進行してます。当院も施設での受け入れに加え、往診などにも取り組んでいますが、新しい医療介護システムなどを考えていかなければならない時期に来ているのでは、と思います。一方で地域の方々には、やはり何をおいても早期受診をお勧めしたいです。悪くなってからではなく、早め早めに行動することで重症化するリスクの低減をめざせるからです。健康診断の機会があれば必ず受けていただき、何か異常があれば必ず医療機関を受診していただきたいと願っています。もちろん、当院でもさまざまなご相談に応じていますので、いつもと違ったことがあれば、お気軽に受診していただけるとうれしいです。