伊藤 翠 院長の独自取材記事
あさひキッズクリニック
(尾張旭市/三郷駅)
最終更新日:2025/06/05

2024年6月、尾張旭市に開業した「あさひキッズクリニック」。伊藤翠院長は、これまで培ってきた大規模病院での経験を生かし、新生児から高校生まで幅広い患者の診療を行う。「地域の方々にとって身近で、何かあったときに気軽に相談できるような存在でありたいです」と真っ直ぐに語る伊藤院長。穏やかで誠実な人柄がにじむ診療スタイルは、親子の不安を優しく受け止めてくれる。院内はバリアフリーで、双子用ベビーカーも快適に移動できるよう広めに設計。予防接種や健診にも力を入れ、10ヵ月健診では管理栄養士による栄養相談など多面的なサポートを提供。保護者の相談にも柔軟に対応し、対話を大切にする診療を徹底。地域に根差し、信頼されるクリニックをめざす伊藤院長に、開業の経緯や診療方針、今後の展望など、たっぷりと聞いた。
(取材日2025年5月13日)
女性医師として、親子に寄り添う診療を地域に届けたい
まず、開業の経緯を教えてください。

私はこれまで大きな病院での勤務を通じて多くを学びましたが、もっと身近な存在として、目の前の人の役に立ちたいという思いが常にありました。この地域を開業の地に選んだのは、私自身が東三河出身で親しみがあったからです。ここは昔から製造業が盛んな場所で、女性も家業などで忙しく働いている方が多く、そうしたご家庭を支えたいという気持ちもありました。私は5人きょうだいの長女で、小さい子を身近に感じながら育ってきたこともあって、子どもと関わることにまったくストレスを感じたことがありません。そんな原点の経験が、今の診療スタイルや「地域で寄り添う医療を届けたい」という思いの土台になっていると感じています。
お越しになる患者さんは、どういった方が多いですか?
赤ちゃんから高校生まで、幅広い年齢層の患者さんが来院されます。私自身、NICU( 新生児集中治療室)のある病院で長く勤務してきた経験があり、新生児の診療には比較的慣れていると思います。そうした経験を生かしてお子さんを診ています。ご相談の内容もさまざまで、風邪のような軽い症状の方が多い一方で、川崎病や呼吸器系の重大な疾患が判明するケースもあります。重大な病気のケースは多くはありませんが、だからこそ見逃さないことが大切だと考えています。これまで大きな病院で、緊急手術が必要になるようなケースや、髄膜炎など重症の感染症も経験してきましたので、「この子は注意が必要だな」という兆候を見極める感覚は、培ってきていると思います。
すてきなクリニックですね。こだわりや特徴について教えてください。

最もこだわった点は、バリアフリーであることです。一戸建ての建物である利点を生かし、双子用の大きなベビーカーなどでもスムーズにそのまま入れるように設計しました。小さな段差一つでも、親御さんにとっては大きな負担になります。眠っているお子さんを無理に抱き上げることなく受診できるようにするなど、受診のハードルを少しでも下げることを意識しました。また、お子さんは丸い形に親しみを持ちやすいので、丸くてかわいらしい印象のオリジナルキャラクターを取り入れて、私自身の白衣やスタッフのスクラブにも刺繍を施しています。親しみやすさと安心感を持っていただけるよう、細部にまで気を配っています。
安全性に配慮した予防接種や健診で親子を支える
同院が大切にしている診療方針とは?

やはり、地域の方々に長く愛され、頼りにされるクリニックでありたいという思いを一番に持っています。そのためにも、地域の方々にとって身近で、何かあったときに気軽に相談できるような存在でありたいと考えています。また、この地域では女性の小児科医が少ない印象がありますので、私が女性医師ということもあり、お子さんや保護者の方に安心してかかっていただけるような雰囲気づくりを心がけています。お子さんが風邪をひいた時はご家族にも同じような症状が出ることもありますので、可能な範囲で保護者の方の診療にも対応しています。
力を入れている取り組みを教えてください。
予防医療の重要性を強く感じており、予防につながる取り組みに力を注いでいます。お子さんの予防接種はここ10年で種類や数が増え、精密かつ安全性に配慮して進めることがますます大切になっています。日本はまだ諸外国に比べて接種数が少ないため、当院ではスケジュール管理も含めてしっかり対応したいと思っています。また、乳児健診にも力を入れており、育ちや発達で注意が必要な場合もあるため、お母さんやご家族が安心して子育てできるよう丁寧に成長を見守っています。特に10ヵ月健診では、計測・診察に加え、管理栄養士による栄養相談や視力のスクリーニング検査も実施しています。健康な時こそ健診を手厚く行うことが大切だと考えています。
診療時においては、どういったことを大切にされていますか?

親御さんの意見を大切にしています。抗生剤や薬の使用に慎重なお考えの方もいらっしゃいます。そうした場合も、一方的に提案するのではなく、話し合いながら一緒に治療方針を決めていくことを大切にしています。そのため、できる限り多くの選択肢を用意できるよう心がけています。例えば、漢方薬や水薬、必要に応じた一般療法など、「お薬が苦手ならこういった方法もありますよ」とご提案できるようにしています。また、お子さんは緊張して診察に来られることが多いので、なるべくリラックスしてもらえるような声かけを意識しています。あまり長時間、緊張を強いるような診察にならないよう、配慮しながら対応しています。
大規模病院での経験を生かし、見逃しのない診療を
これまでどういった経験を積まれてきましたか?

大学病院で臨床研修を経て、市立四日市病院で小児科を、その後は名古屋市の西部医療センターで副部長も経験しました。いずれも名古屋市立大学の小児科医局の関連病院で、重症のお子さんを診る機会も多くありました。そうした経験があるからこそ、危険な状態かどうかを早く見極められるのが自分の強みだと思っています。実際、具合の悪いお子さんは来院時から様子が違うんです。立てなかったり、自分で動けなかったりすることが多いです。そういった姿を見て判断ができるというのは、これまでの経験があってこそだと思っています。
スタッフの方についてもお聞かせください。
現在、看護師・管理栄養士・医療事務スタッフが在籍しています。管理栄養士は通常、事務業務にも携わっていますが、必要に応じて栄養指導を行ったり、乳児健診の際には指導担当として入ってもらったりという体制を取っています。皆前向きで、自主的に動ける方ばかりです。安心して任せられるので、非常に助かっています。クリニックはトップダウンだけでなく、チームで作り上げていくことが理想で、実際スタッフと意見を交換しながらより良い環境づくりを進めています。子育て経験があるスタッフも多く、皆子ども好きで心強い仲間です。スタッフのお子さんが予防接種を気軽に受けられるようにするなど福利厚生も工夫し、働きやすい環境づくりに努めています。
最後に、今後の展望と読者にメッセージをお願いします。

私が大切にしているのは、大きく3つあります。院内をバリアフリー設計にするなどどなたも安心して来院いただけるようにすること、予防接種や健診を精密かつ充実した内容で提供すること、そして女性医師として子育て中の保護者の方に寄り添った診療を行うことです。開業して間もないですが、多くの方に来院していただいて、本当にありがたく思っています。ここをしっかり続けて、地域の皆さんのお役に立てるクリニックでありたいと考えています。これまで積んできた経験を生かして、赤ちゃんから高校生まで幅広く対応しています。何か困ったことや気になることがあれば、気軽に相談に来ていただければと思います。どうぞ遠慮なくお越しください。