木下 裕継 院長の独自取材記事
木下耳鼻咽喉科
(大和市/中央林間駅)
最終更新日:2025/03/14

東急田園都市線中央林間駅を降りてすぐ、6階建てビルの最上階にある「木下耳鼻咽喉科」。すでに地域に根づいていた耳鼻咽喉科医院を、15年前に木下裕継院長が改名し継承開業した。木下院長は日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医の資格を持ち、大学卒業後は聖マリアンナ医科大学病院に入局。主に難聴治療や蝸伝図検査に携わっていた経験から、クリニックでも専門性の高い難聴治療や検査を提供可能だ。アレルギー治療にも力を入れており、舌下免疫療法やレーザー治療など複数の治療法から患者のニーズに適した方法を提案している。実直でさっぱりした木下先生の人柄もあり、開業当初から長く勤めているスタッフも多い。「確かな診断と治療を提供することが地域への恩返しになる」と語る木下先生に、治療のコンセプトや今後の展望について話を聞いた。
(取材日2025年2月19日)
患者一人ひとりの問診時間を確保するため予約制を導入
クリニックの治療方針やコンセプトを教えてください。

「確かな診断で確かな治療を提供する」、これが第一の理想ですね。診断が間違っていたら、正しい治療は不可能ですから。基本的に開業医は地域医療の末端であり入り口を担っています。正しく診断し、必要があれば大規模病院につなげるのが役目と考えていますので、患者さまへのヒアリングを何より大切にしてきました。長年の経験から、診断に必要な情報の8割は問診で得られると感じているので、コンパクトな院内ながら聴力検査設備やエックス線、内視鏡など耳鼻咽喉科の症状を検査するのに必要な物を充実させています。それでもやはり、患者さまが自覚されている症状や困り事を丁寧にお聞きすることが最も重要ですね。
問診の時間を確保するために予約制を導入したそうですね。
私が1人で診療をしており、たくさんの患者さまを受け入れると問診の時間を確保できなくなってしまうからです。医師である私自身が心身健康で治療を提供するためにも、患者さま一人ひとりとじっくり向き合える予約制を導入しています。もちろん、予約がないから受診ができない、というわけではありません。緊急の症状でない限りご予約された患者さまが優先のため、長くお時間をいただく可能性もありますが、できる限り対応したいと考えています。
耳鼻咽喉科専門医になられたきっかけや、得意分野を教えてください。

大学時代に部活動でお世話になった教授が耳鼻咽喉科専門医だったのがきっかけです。もともと人や社会の役に立てる専門職に就くために医学部を選んだので、どの診療領域を専門に学ぶかは決めていませんでした。そのような中、部活動を通して尊敬できる教授に出会い、その教授のもとで働こうと聖マリアンナ医科大学病院の耳鼻咽喉科に入局しました。大学病院では人工内耳や蝸電図など、常に聴覚に関わる研究や治療に携わりました。蝸電図とは、聴覚をつかさどる感覚器官である蝸牛が音刺激によってどのような反応をするか調べる検査です。音は物理的な空気の振動であり、その刺激が蝸牛で電気信号に変換されると脳に知覚として伝わります。その電気信号を記録することが、難聴の程度や性質の診断に役立つのです。一般的に蝸電図は手間がかかり過ぎるため、他の検査方法が採用されがちですが、長年難聴の研究に携わった経験から当院では蝸電図を導入しました。
診断精度を高めるため、難聴検査時に認知検査を実施
来院される患者さんの年齢層や主訴を教えてください。

最近は大人、特にご高齢の方の来院がメインです。難聴やめまい、鼻症状でお困りの方が多い傾向ですね。団塊の世代と呼ばれる方々が75、6歳を迎えたこともあり、加齢性難聴で受診される方が増えています。先ほどお話ししたとおり、私は長年難聴の治療や研究に携わっているので、補聴器の適合性の診断などは耳鼻咽喉科の医師の中でも専門性が高いと自負しています。またどのような疾患でも、地域医療を支える開業医として原因や治療法を診断し、専門外だったり当院の設備で解決できなかったりする場合は必要に応じて大規模病院などにつなげます。
難聴でお困りの患者さんには、どのような流れで診断を行いますか。
まずは鼓膜を診て、鼓膜の動きを確認する検査を実施します。次に標準聴力検査と、言葉に関する認知の検査を行います。認知状態が悪いと標準聴力検査の結果も悪くなることが多いので、正しい診断ができません。もし認知の問題が聴力検査に影響を与えていると判断できる場合は、ご家族と相談しながら認知症を専門とする医療機関の受診を勧めます。補聴器をつける、つけないかもご本人やご家族と相談しながら決定していきます。性能が良い補聴器はたいへん高額なので、経済的な問題で利用できない方もいらっしゃいます。お求めやすい価格のイヤホン型補聴器でも十分対応可能な場合もあるので、金銭的に負担を感じる方や中等度、軽度難聴の若い方にはそちらを紹介することもあります。患者さまの症状だけでなく、金銭面に適した補聴器をマッチングさせるのも、医師の大切な役目だと考えています。
耳の聞こえが悪いと感じたら、早めに受診するべきですか。

ご高齢の方は認知症予防につながるので、早めに受診すべきだと思います。基本的に人間は、外部からの刺激がないと脳が休んでしまいます。会話をする、声を出す、体を動かす、そうやって毎日違う刺激を脳に与えて働き続けさせることが、すべて認知症の予防につながると考えています。高齢者施設では、みんなで歌を歌ったりお遊戯をしたりしますよね。それは認知症予防にとって、非常に有益な手段なのです。そのため、ご本人やご家族が耳の聞こえの悪さを感じたら、一度地域の耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。加齢が問題なのか、治療で改善が見込める疾患なのかを見極めて治療方針を決定するためにも受診すべきでしょう。
アレルギー治療にも注力されているとお聞きしました。
アレルギー性鼻炎等の診断や治療に力を入れており、近年は舌下免疫療法に取り組んでいます。舌下免疫療法はスギとダニアレルギーに特化した治療法で、3~5年間は治療の継続が必要です。当院では鼻粘膜の表面をレーザーで照射するレーザー治療も行っており、そちらも有用ですが、こちらは鼻詰まりや鼻水など鼻症状の改善を図ることに特化しています。一方舌下免疫療法は鼻症状だけでなく、アレルギーによる全身症状の改善が期待できるでしょう。ハウスダストが原因のアトピー性皮膚炎にも、良い影響が期待できるという研究結果があります。
広いネットワークで大規模病院や専門の医院を紹介
開業当初から長く勤められているスタッフの方が多いそうですね。

このクリニックを開業して2、3年目頃から、ずっと働いてくれているスタッフが多いですね。15年近く一緒に働いているのであれこれ指示を出す必要もなく、信頼して任せられるスタッフばかりです。このクリニックは長く通われている高齢の方がメインで、スタッフともどんどん顔見知りになっていかれるので、来院される際の安心材料の一つになっていると思います。
お仕事の疲れをリフレッシュできるような趣味はありますか?
釣りが好きで、夏・秋・冬は伊豆半島や三浦半島などで海釣り、夏は岐阜や富山で川釣りを楽しんでいます。1人で車を運転して行くときもあれば、釣り仲間の車に便乗することもあります。釣りを満喫するためなら、車で4、5時間かかる場所でも平気で足を運んでしまいますね。仕事が忙しくない時期は大会にも参加して、4kg以上ある鯛を釣ったこともあります。一緒に楽しむ釣り仲間もたくさんいるので、いい息抜きになっています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

今までどおり、患者さまが悩まれている症状の改善につながる治療を提供していきたいですね。年齢的に新しいことにチャレンジするのは難しいのですが、昨年度に電子内視鏡や聴力検査の機材などを一新しました。開業してから15年以上経過したので、多くの設備がちょうど買い替えの時期だったんです。開業2年目のように、きれいで先進の設備がそろってしまったので、まだまだ引退できません(笑)。最初にお話ししたとおり、当院は「確かな診断と確かな治療」をめざすことがモットーなので、当院でできないこと、わからないことははっきりとお伝えします。例えば喉頭がんなどは専門外ですので、気になる症状がある場合は適切な診断が受けられる医療機関をご紹介します。耳鼻咽喉科に関係する症状で悩まれている方は、適切な治療を見極める入り口として当院をご利用ください。