渡部 晃三 院長の独自取材記事
KPlusクリニック
(中央区/人形町駅)
最終更新日:2025/06/19

人形町駅から徒歩4分。「KPlusクリニック」は2024年、在宅医療専門医院として開業した。渡部晃三院長の専門は膠原病、リウマチ。膠原病は一度発症すると一生付き合っていくことになる病気。全身にさまざまな症状が出る可能性があり、治療法も多岐にわたる。訪問診療の場合も全身を診療する必要があるため、自分のやりたい方針とつながりを感じ、クリニックの開業に至ったのだという。患者はクリニックへの通院が難しい高齢者が多く、在宅医療の中でも膠原病を専門とされているクリニックは少ないという。「在宅医療は、患者さんを最期まで診ることができるのでやりがいを感じます」と、患者やその家族に寄り添った診療を大切にしているという渡部院長に話を聞いた。
(取材日2025年5月15日)
訪問診療とオンライン診療を並行して行う
こちらのクリニックではどのような診療を行っていますか?

当院は、人形町を拠点に在宅医療を専門に扱っているクリニックです。在宅への訪問だけでなく、以前、私が順天堂大学医学部附属順天堂医院で診療していた患者さんや外来をご希望される患者さんは、クリニックでの診療も行っています。現在、メインのドクターは私1人ですが、外科的処置が必要な患者さんには皮膚科、形成外科の医師にサポートしてもらうこともありますね。在宅医療の場合、緩和ケアを受けている方や介護度が高い方などは、すでに訪問看護をつけてらっしゃる方も多いので、現場の看護師と連携しながら診療を行っています。外来の場合もそうだと思いますが、訪問診療で医師が変わると患者さんやご家族の気持ちの負担などが増えると思います。そういった負担を軽くするために、なるべく今まで私が診療した方は、末長く診療していきたいと思っています。
オンライン診療も行っているのですね。
はい。在宅への訪問診療とともに、オンライン診療も行っています。こちらも私が以前勤務していた大学病院や医療機関で診療していた方などを中心に、希望される方を診ています。オンラインの場合は比較的若い世代の方も多く、病状なども自分で説明できることもあり、問診で十分なことが多いですね。ただ、話を聞いてみて、採血など検査をしたほうが良さそうな場合は、クリニックに来ていただいたり、私も往診していますので、都内であれば訪問したりということも可能です。患者さんの中には忙しくて通院できないということもあるので、フレキシブルに動けるようにしています。
忙しい患者さんにとって、気軽に受けられそうでうれしいですね。

はい、実は当院でオンライン診療を始める前から運営している医療サービスもあります。健康診断の結果をもとに気軽に相談でき、オンライン上で予防医療を受けられる場をつくりたいという思いから立ち上げました。たいていの人が、体調がかなり悪くなってから病院を受診されるもの。そうなると、1~2ヵ月入院することもしばしばです。先ほどもお話ししたように、仕事が忙しい人、働き盛りの30〜50代の人ほど、時間が取れず受診するタイミングが遅れてしまうんですよね。入院となると、時間的にも金銭的にも負担が大きくなるので、オンライン診療で気軽に診察をし、日頃の健康管理をサポートできれば、と思っています。
専門に学んできた膠原病治療の知識を役立てたい
改めて、ご経歴を教えてください。

私は、順天堂大学医学部で学び、附属病院の膠原病担当部門に入局しました。在宅医療にももともと興味があったので、入局したと同時に、土日祝日など時間のあるタイミングで訪問診療も行っていました。大学病院を出て独立した際に、在宅医療クリニックで勤務し、その後に当院を開業しました。もともと、私は人の体全体を診療できるドクターをめざしていました。在宅医療も全身を診療する技術や知識が必要です。そして、私が専門に学んでいた膠原病も、内科全般との連携が必要となるんですね。膠原病は専門性の高い分野ではあるのですが、最終的には全身を診る在宅医療とのつながりを感じて、当院を開業するに至りました。
膠原病とはどういう病気なのでしょうか?
膠原病とは一つの疾患を指す名称ではなく、全身のさまざまな臓器に慢性的な炎症が見られる病気の総称です。代表的なものは、関節に痛みや腫れが出る関節リウマチです。関節リウマチは一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、いまだ原因がわかっていないため服薬や点滴で病態をコントロールしながら普段の生活を送れるよう寛解をめざして治療を進めていきます。例えば、20代で発症された場合、これからの人生を考えてこの薬はやめておこう、90代の方ならこれくらいのお薬でコントロールしていこうという診断を医師がしていくので、そこが難しさでもあり、経験や知識を発揮できる部分ですね。また、一度発症すると一生付き合っていくことになる病気なので、患者さんとの信頼関係が築ければ最期まで診療できるという点も、私自身が医師としてやりたかったことにもつながります。
先生はどのような時にやりがいを感じますか?

訪問診療を行っていると、ご高齢の方も多いので、元気に、なるべく普段どおりの生活を送ってほしいと思っています。ただ延命をめざすのではなく、どんな患者さんにもQOL(生活の質)が高い状態で過ごしてもらうことが、願っていることです。リウマチでも寛解状態であれば、いつもどおりの生活を送ってもらえるので、症状をコントロールをするため薬を用いるなど丁寧に診療を続けたいですね。それから、ご家族とのコミュニケーションも大事にしています。ご家族も満足できるような治療を提供したり、なんでも相談してもらえるような関係になれたときにやりがいを感じますね。
大病を防ぐため、予防医療にも力を入れる
診療時にどのようなことを心がけていますか?

先ほども少しふれましたが、患者さんやそのご家族との信頼関係を築くということですね。なんでも話してくれるような存在になるというのは、意識しているところです。特に高齢者の方で、我慢して病状を喋ってくれない方や、医師に気を使ってしまう方も多くいらっしゃいます。仲良くなっていくと、実は昨日こういうことがあってという話を聞くこともでき、そんな本当に病気とは何も関係ないようなことから、病気の現状がわかってくることもあります。早期に見つけるという意味では、何でも話してもらえる関係づくりを大切にしていますね。患者さんに寄り添うように、コミュニケーションの取り方はより気を使っています。
今後の展望を教えてください。
「在宅のかかりつけ医」をめざしていきたいです。現在病気ではなくても今後発症するという可能性はありますし、体調を崩したときにすぐに対応できるよう、バックアップできるような存在でありたいですね。新型コロナウイルス感染症の流行を経て、夜間診療や往診の重要性も感じました。夜に体調が悪くなって、病院に行くのはつらいけれど診てもらいたい。そういう人は一定数いるはずです。また、ステータスが高いアッパー層の方だと、病院に行きたいけれど、どんな病気にかかっているかを人に知られたくないという方もいらっしゃいます。そういう方達のニーズに応えるため、訪問診療のかかりつけ医、患者さんにとってプライベートな部分に配慮できる医師として活動していきたいですね。これからの時代、1家族に1人のかかりつけ医を持つことで、本当の意味での予防医療が成り立つと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

現代では、生活スタイルも人それぞれですので、おのおのがやりやすい方法で生活リズムを整えていけば良いと思っています。でも、皆さんに対して意識してもらいたいのは、年に1回、健康診断を受けること。あとは、体調を崩して数日様子を見ても体調が変わらない、もしくは快方に向かっていないなら、早めに相談するべきかなと思います。悪くなってから治療するより、初期で治療したほうが患者さんの負担は圧倒的に少なく済みます。ぜひ気軽に受診できるような、ご自身のかかりつけ医をつくり、早期発見を心がけてほしいですね。