瀬戸山 仁 院長の独自取材記事
瀬戸山クリニック
(鹿児島市/高見馬場駅)
最終更新日:2024/07/22

鹿児島市電1、2系統の高見馬場電停から徒歩1分、ビジネス街の一角にある「瀬戸山クリニック」は、2024年4月に開院した総合内科、消化器内科クリニックだ。白と木目を基調にした院内は、おしゃれなカフェのような雰囲気。受付カウンターの後ろには、クリニックロゴを染め抜いたのれんが掛けられ、訪れる人がほっとできる安心感を与えてくれる。内科と消化器内科、内視鏡検査、超音波検査にも注力する瀬戸山仁(せとやま・ひとし)院長は、「臨床・研究・教育」という医師として必要なキャリアのすべてを経験してきたベテランドクターだ。優しく穏やかな語り口、わかりやすい説明、温かい人柄で「患者さんとお話しすることが僕にとって一番幸せな時間」と話す瀬戸山院長に、これまでの道のりや同院の特徴、今後の展望まで話を聞いた。
(取材日2024年6月25日)
「臨床・研究・教育」の経験を地域医療に還元
開院から2ヵ月、どのような患者さんが受診されていますか?

ここは鹿児島市の中心部にあり、周辺にはビジネス街が広がっています。そのため、40代から60代までの働き盛りのビジネスパーソンの方が会社帰りや休み時間に受診してくださることが多いですね。実は40代から60代のがんの死亡率は高いといわれており、前職の鹿児島県民総合保健センターでは、働き盛りの方のがんの発見が遅れ、仕事ができなくなったケースを数多く見てきました。そのような方々の健康をしっかり守りたいという思いで、ここを開院の地に選びました。最近は、ご高齢でかかりつけ医を探しているという方、他府県から引っ越して来られた方の受診も増えています。
どのような主訴で訪れる方が多いのですか?
内科と消化器内科を専門にしていることから、内科全般に関することや腹痛、健診で異常があったなどのご相談が多いですね。当院では、採血、尿検査、おなかの超音波(エコー)検査、胃・大腸内視鏡などの検査に対応し、生活習慣病の観点においては、高血圧症、糖尿病、高脂血症の患者さんに対する頸動脈エコー検査、血管の硬さを測る動脈硬化のエコーなども行っています。消化器疾患に限らず、動脈硬化疾患なども診させていただき、リスク管理していくことをめざしています。
多彩なご経歴をお持ちと伺っています。

信州大学医学部を卒業後、地元の鹿児島に戻り、鹿児島大学病院や県内の医療機関で内科医、消化器内科医として研鑽を積んできました。その後、京都大学医学部附属病院で再生医療に関する治験や研究に従事し、新規治療の開発に携わりました。また、鹿児島大学病院総合臨床研修センターや鹿児島大学医歯学教育開発センターでは、若手医師や医学生の教育と指導、県内の医師確保対策にも従事し、医療人材育成と県内の医師不足対策に取り組みました。医師になって24~5年になりますが、その間、ありがたいことに「臨床・研究・教育」という医師にとって大事だといわれる3つをすべて経験し、前職の鹿児島県民総合保健センターでは、健診を中心に予防医学や健康増進事業にも携わってきました。この経験を患者さんのために生かせないかと考えたことが開院のきっかけでもあります。
困り事や悩みを相談できる「かかりつけ医」をめざして
クリニックでめざされている医療について教えてください。

「かかりつけ医」というのが、僕の中のキーワードです。何か気になることや困り事があったら、まず僕のところに相談に来てもらい、ここである程度の診断をつけ「専門の先生に診てもらうほうが良い」となれば、信頼できる先生をご紹介しています。それは教育、研究の現場も含め、総合的な内科診療を専門として養われてきたスキルだと感じています。臨床の現場では「不調があるけれど何科を受診すればいいかわからない」というニーズは意外と多くあります。また、近年、かかりつけ医の重要性が盛んにいわれていますが、例えば患者さんから「血圧で診ていただいているかかりつけの先生にコレステロールのことも相談していいんですか?」と聞かれることも。前職では、「それも含めてなんでも相談できるのがかかりつけ医ですよ」というお話をよくしていました。そのような経験から、患者さんをトータルで診られるかかりつけ医が当院のコンセプトになっています。
診療で大事にしていることは何でしょう?
月並みかもしれませんが、患者さんに寄り添うことを大事にしています。常に患者さんの側に立って考える、同じ症状、同じ病気の方でもお一人お一人に背景があります。どんなところに住んで、どんな家族と一緒に暮らしていらっしゃって、どんな食事をして、どんな生活習慣なのか。なるべくそこをお話ししていただいて、それらを踏まえた上でそれぞれの症状や疾患に対応していきます。昔からいわれているように「病気を診るのではなく人を診る」ということですね。表面的な症状や疾患だけを診ていても、なかなか患者さんに本当に満足していただける医療にたどり着きません。患者さんに「ここに相談に来て良かった」「お薬を出してもらって良かった」と思っていただける診療をめざしています。
内視鏡検査も先生のご専門の一つですね。

今、内視鏡検査というのはたいへん進化しています。がんをはじめとする疾患の早期発見には大変有用な検査ですので、「一度検査を受けてつらい思いをしたから、もう二度と受けたくない」と言われることのないよう、患者さんの負担が少ない、安全性に配慮した検査を心がけています。具体的には、使用する内視鏡は先進の細径内視鏡を用いていますし、不安が強い方には鎮静剤を使って負担が少ないかたちで検査をさせていただいています。また、早期の胃がんや大腸がんの微細な病変も見逃さないよう、先進の技術を搭載した内視鏡を導入しています。また、内視鏡は1本1本洗浄をするのですが、高水準の洗浄器を導入して感染管理をするなど、皆さんが安心して内視鏡検査を受けられる環境も整備しています。
患者の生活背景も受け止め一人ひとりに合った診療を
医師を志したきっかけ、消化器内科を選ばれた理由を教えてください。

一つは医師であった父の影響があると思います。父は僕の前職の鹿児島県民総合保健センターで健診事業を担当する医師でした。目の前の患者さんの健康を守ることも大事ですが、父はどちらかというと、鹿児島県全体の健康を守ることに注力していました。そういう姿を見ながら、自分もいろいろな患者さんを診ることができて、鹿児島県の皆さんの健康をお手伝いできればという思いを抱きました。目の前に困っている人、苦しんでいる人がいたら、まず手を差し伸べなさいという父の教えから、そういう医師をめざしたということになるかもしれません。消化器内科を専門に選んだ理由は、胃や腸の不調が、気持ちにも影響すると自分自身が感じていたからです。今は、脳と腸はたいへん密接な関係を持っていることが明らかになってきました。そういったところに興味があったことから消化器内科を選びました。
今後の展望についてお聞かせください。
医療の教育に携わった経験から実感するのは、次の時代をつくるのは若い先生方だということです。これはまだ構想の段階ですが、大規模病院の若手医師の皆さんに、大規模病院を受診する前の素の状態の患者さんはどういう感じなのか、どのように診療するのかを見てほしいと思っています。大規模病院ではない町の診療所の医療も見て勉強してほしいのです。将来的には、当院を若手医師や医学生が学習する場にしていきたい。これは僕の医師としての最終目標で、次世代につながる医療の一つだと思っています。また、人の命はお金には代えられませんが、医療の現場では進行してしまったがんの治療にたいへんお金がかかります。早期に見つかればそれが何十分の1の治療費で済みますから、やはり病気の早期発見、早期治療は重要です。日本の医療経済的にも大事なことですから「病気を予防する」ということが、これからの医療の大きな課題だと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

悩んでいる方、苦しんでいる方がいらっしゃったら、まずは僕のところに来て、なんでもいいから相談してください。皆さんの悩みや苦しみをしっかりと自分の中で受け止めて、患者さんと話をしながら一緒に方向性や治療方針を決めていきたいと思います。僕自身もそうですが、笑顔でいることによって人は元気になれる部分があると思います。医学的ではないかもしれませんが、患者さんに「先生がそう言うのなら良かった」と言って笑っていただけること、それが当院の目標でもあります。