形成外科と皮膚科どっちを受診すべき?
粉瘤は悪化前の処置が肝心
やまずみ形成外科・皮ふクリニック
(福岡市東区/千早駅)
最終更新日:2025/01/09
- 保険診療
アテローム(アテローマ)とも呼ばれる皮膚の良性腫瘍の一つである粉瘤(ふんりゅう)。皮下に嚢腫と呼ばれる袋状のしこりができ、その中に古い角質がたまった状態を粉瘤といい、「放置していても自然と治ることはありません」と、「やまずみ形成外科・皮ふクリニック」の山住賢司院長は話す。「しこりがある」「押すと臭いものが出てくる」といった気づきが受診のきっかけになるケースが多いそうだが、いざ診てもらおうとなった時、どの診療科を受診すべきか悩む人も多いのではないだろうか。形成外科と皮膚科の両側面からさまざまな症状と対峙する肌のスペシャリストである山住院長は「悪化前の処置であれば比較的短い期間での治癒が見込めます」と、早期受診を呼びかける。そこで今回、専門家である山住院長に粉瘤について一歩踏み込んだ話を聞いた。
(取材日2024年11月29日)
目次
粉瘤は、皮膚の炎症や腫れの有無、しこりの大きさなど、症状によって受診先を判断し、早めの処置を
- Q粉瘤とおできの違いについて教えてください。
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A
粉瘤は、皮膚の中に袋ができて、その中に古い角質や皮脂がたまって大きなしこり、つまり嚢腫となります。20代から50代に多く、顔や首、背中、お尻などにできやすい病気ですが、全身のどこにでもできます。悪臭がしたり、袋が破れて炎症を起こし、赤みや腫れ、痛みが出てくることがあります。一方、おできは、「せつ」と呼ばれる毛穴(毛包)に生じた細菌感染症です。顔やうなじ、お尻などにできやすく、毛穴の炎症が悪化して硬くなり、赤み、痛み、熱感が出ます。膿がたまった後、潰れて排膿すると改善します。周囲の毛穴に炎症が拡大すると、炎症を起こした粉瘤との区別が難しくなることもありますが、原因や経過が異なります。
- Q粉瘤は、放置したり自分で押したりしてはいけませんか?
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A
残念ながら、粉瘤は放置しても自然に治る病気ではありません。初期は自覚症状がなく、炎症を起こして赤く腫れたり、痛みが出たのをきっかけに医療機関を受診される方もいらっしゃいます。その場合、通常の処置が行えず、皮膚を切開して袋の中身を除去する必要があります。一方、痛みがないからと大きくなるまで放置してしまうと、通常の処置よりも大がかりになりますので、大きな傷痕を残すことになります。炎症を起こしたり、大きくなりすぎないうちに早めの受診を心がけてください。
- Q粉瘤の場合、形成外科と皮膚科、どちらを受診すべきでしょうか?
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A
粉瘤の治療は、炎症の程度によって対応が異なります。炎症が強い場合には、膿を排出するために皮膚切開を行い、炎症を抑えるための処置が優先されます。一方で、炎症が軽度の場合や痛みがほとんどない場合、薬物療法が選択されることもあります。炎症が完全に治った後、根本的な治療として粉瘤全体を摘出することが推奨されます。この場合、美容面や再発防止を考慮した治療が可能な形成外科が適しています。症状に応じて皮膚科や形成外科を選択し、適切な診療を受けることが大切です。
- Q具体的な治療内容について教えてください。
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A
粉瘤の治療方法は、局所麻酔で行う日帰り手術が一般的です。炎症がない場合、15〜30分程度で粉瘤を包む袋ごと摘出します。この方法は保険適用となり、費用負担も軽減されます。形成外科では、特に顔や首などの目立つ部位に対して、美容的観点を重視した縫合方法やデザインで傷痕が目立ちにくい仕上がりをめざします。また、炎症が強い場合にはまず「ドレナージ」と呼ばれる膿を排出するための皮膚切開を行い、炎症が治まった後に改めて根治目的の摘出手術を行います。術前に治療内容を丁寧に説明し、患者さんの不安を軽減することを大切にしています。粉瘤は適切な治療を行えば再発を防ぎやすくなります。
- Q術後の過ごし方についても教えていただけますか。
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A
手術後の注意点ですが、手術当日は患部を濡らさないようにして、シャワーは翌日から医師の指示に従って行っていただきます。手術翌日に再診していただき、止血や患部の状態を確認します。その後、1週間程度で抜糸となります。傷口を触ったり、ガーゼやテープを自己判断で外すことも避けていただきます。また、湯船に漬かる、サウナに入る、激しい運動や重いものを持つ行為は、患部に負担をかけるため控えていただきます。清潔な環境を保つことも大切です。万が一、強い痛みや腫れ、出血など異常を感じた場合は、早めに再診していただきます。