高田 忠幸 院長の独自取材記事
たかた内科医院
(観音寺市/観音寺駅)
最終更新日:2024/06/25

2024年5月、観音寺市坂本町に開院した「たかた内科医院」は、JR予讃線・観音寺駅から車で約5分。なだらかな曲線を描く大きな屋根が、まるで患者を包み込むかのように軒先を伸ばしている。入り口の緩やかなスロープを上り、ガラス張りのドアを抜けた先に広がるのは、自然素材の温もりにあふれた空間だ。穏やかな笑顔が印象的な高田忠幸院長は、総合内科・脳神経内科の豊富な臨床経験を生かし、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの神経難病を含めた、幅広い内科疾患の診療に対応。クレジットカード・モバイル決済やウェブ予約を導入することで、患者目線のクリニックづくりにも取り組んでいる。「地域の需要に応えることが、私の使命」と決意を持って語る高田院長に、脳神経内科の診療やクリニックのモットーなどをじっくりと聞いた。
(取材日2024年5月15日)
脳神経内科の専門性を生かし故郷で開業
ご開業おめでとうございます。とてもすてきなクリニックですね。

京都にある外資系コーヒーチェーンのようなイメージで、デザインや設計・監理は中学の同級生だった設計士に任せました。コンセプトは「インクルーシブデザイン」。高齢者や障害者といった制約のある人々を、包括的に受け入れるデザインとなっています。歩行障害をきたしている方でも快適に受診できるようにと、院内の移動距離は最小限に抑えたそうです。多目的トイレは、車いすの方の自立排泄を助けるデザインを独自に考案しています。神経変性疾患は問診が長くなりがちですが、自然素材の風合いを生かした待合では、庭の景色を見ながらゆったりと過ごせるのではないでしょうか。軒を長くした玄関ポーチはどんな天候にも対応し、ストレッチャーが通れる幅も確保しています。クリニックのロゴマークは、白衣を着た「ねずみの先生」ですね。私自身もねずみ年ですので、昔から世界中で親しまれているねずみのように、皆さんの身近な存在になれたらと考えています。
開業にあたって、この場所を選ばれた理由はありますか?
故郷への恩返しの気持ちもあり、当初から生まれ育った地元での開業を考えていました。この場所はカラオケ店の跡地なのですが、今からおよそ20年前に高校の同窓会で訪れ、妻と再会した思い出の場所でもあります。ちょうど他の土地に決めかけていたタイミングで、ここが売りに出されたと知った時には運命を感じましたね。
こちらでは脳神経内科を標榜されていますが、これはどのような診療科なのでしょうか。

もともとは神経内科と呼ばれていた診療科で、2017年に脳神経内科と名称が変更されました。脳神経内科の医師が不足している香川県では、脳卒中やてんかんの患者さんは救急科や脳神経外科に搬送されることが多いのですが、関東圏や関西圏などではまず脳神経内科を含めた救急科や脳卒中科で診断し、手術が必要であれば脳神経外科に相談するという流れになります。脳や脊髄、神経、筋肉はすべて脳神経内科の診療範囲です。頭痛や物忘れ、震え、しびれ、歩行障害などの症状があれば、一度ご相談いただけたらと思います。当院はまだ開業したばかりですが、現状、ご相談が多いのは風邪や片頭痛、物忘れなどです。片頭痛に関しては、発作の発症抑制が期待できるCGRP関連抗体薬の皮下注射も行っていますので、お悩みの方はお声がけください。
神経変性疾患の病理画像診断に強み
先生が医師をめざしたきっかけや、脳神経内科を専攻された理由は?

幼い頃に川崎病に罹患したことで、人体の構造や病気のメカニズムに関心を抱くようになりました。当時はまだ3歳でしたが、今でも入院中の記憶や点滴を受けた記憶があり、物心ついた時には、人体の神秘に迫る医師という職業を意識していたと思います。2011年に香川大学医学部を卒業した後は救急科に進むつもりでしたが、研修医として勤めた三豊総合病院には内科の医師が多く、地域的な需要を実感し内科に進みました。その中でも脳神経内科を専門に選んだ理由は、対話と診察とで診断のヒントを拾い上げながら、推理感覚で診療を進めるところに興味をそそられたからです。内科として、投薬調整などを続けながら長期的に患者さんとお付き合いができるところも魅力だと感じています。
東京で、神経難病の研究に取り組まれた時期もあると伺いました。
大学院時代には東京都健康長寿医療センターの研究所へ国内留学し、神経難病の病理解剖と病理診断に従事していました。神経難病によって、お亡くなりになった方の脳を解剖する。脳組織の半分は病気の診断に使用した上で、残る半分についてはさまざまな検査を進め、その結果を資料として世界中の研究者に提供する。その繰り返しでした。脳を見ることに明け暮れていた研究員生活のおかげで、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症をはじめとした神経変性疾患の画像診断には自信を持っています。特に、パーキンソン病は関連疾患が無数にありますから、CTやMRIなどの撮影画像を元に疾患の特定をめざすことが重要です。私は疾患が特定された後は、常に病理組織の変化も意識して患者さんにご説明するようにしています。
開業はいつ頃から意識されたのですか?

2022年の4月頃からです。当時は香川大学の脳神経内科で外来診療にあたりながら、みとよ市民病院の診療支援も行っており、さらに非常勤としてほぼ毎日、県内の総合病院に赴いては脳神経内科専門の外来を担当していました。「これだけ毎日、外来診療をしているのなら、開業医と変わらないのではないか」と思い至って、40歳の節目を機に開業したかたちです。三豊市の三豊総合病院、丸亀市の香川労災病院、坂出市の回生病院と各病院で構築した医師間ネットワークは、一次医療を担う立場となった現在の診療にも大いに役立っています。私がハブとなり架け橋となって、困っている患者さんと専門性を持った医師とを結びつけていきたいです。
先進の医療を生活圏内で実現
こちらでは、検査の機器設備にもこだわられていますね。

より的確な診断につなげるために、当院では16列CTや筋電計などの専門的な検査機器を導入しました。AI機能を搭載したCTは自動で高精細な断層写真が撮影できますし、西讃地域で即日、CT検査ができるクリニックはそう多くはありません。筋電計を用いて電気的な刺激を与え、神経や筋肉の異常を調べる「神経生理検査」の実施機関も、香川県内では数が限られています。私は大学でこの検査を専門的に学んできましたので、手足のしびれがある方や、ギラン・バレー症候群のような難病の可能性がある方には積極的にご提案したいと思っています。検査機器については一般的なものも一通り用意していますから、特定健康診査・特定保健指導にももちろん対応可能です。
クリニックのモットーを教えてください。
「患者さんの需要に合わせた医療」をモットーとして、求められる医療には柔軟に対応します。例えばパーキンソン病は比較的患者数が多い疾患ですが、診療日が決まっている総合病院の専門の外来では、相談したい時にできないことも多いでしょう。調子が悪ければ、毎日でも外来で相談できる点はクリニックのメリットと言えます。またパーキンソン病に限らず、運動障害をもたらす病気が原因で生活に困っている患者さんは少なくありません。そういった方には、対象となる社会保障制度やサービスをご提案して、生活を支援することも医師の重要な役割だと考えています。患者さんと接する上で心がけているのは、徹底的に、そして注意深くお話を聞くことです。中には会話が困難な方もいらっしゃいますが、その場合は前回の受診時と比べた症状の変化から話を引き出し、展開していきます。ポイントを押さえながらお話を聞くのは、私の得意分野です。
最後に今後の目標と、読者へのメッセージをお願いします。

今後も、求められることを提供し続けるクリニックをめざします。オンライン上の勉強会では専門外となる分野も学び、自身のアップデートを継続しながら、より患者さんの利便性が高いクリニックづくりに取り組みます。具体的には、オンライン資格確認や電子処方箋、事前登録制のネット決済システムなどの導入を検討中です。当院は地域の皆さんの生活圏内で、先進の医療の実現に努めます。診療科目がわからない症状をお持ちの患者さんも、難病を抱えた患者さんも、どうぞ気軽にご相談ください。脳神経内科は、あなたの道案内役です。一緒に悩み、一緒に問題の解決策を探しにいきましょう。