山口 泰成 院長、鈴木 啓介 さんの独自取材記事
やまぐちメンタルクリニック奈良真美ヶ丘
(北葛城郡広陵町/五位堂駅)
最終更新日:2024/10/15

五位堂駅を最寄りとする「やまぐちメンタルクリニック奈良真美ヶ丘」。大学病院などの精神科で研鑽を積んだ山口泰成院長が、より地域に密着して心の不調に悩む人を支えるため2024年5月に開業した。信頼する精神保健福祉士である鈴木啓介さんとともに、相談体制を充実化。あらゆる精神の問題や疾患に、地域の医療・介護福祉・教育と連携しながら対応している。同院の特色や診療方針、予約体制、薬についての考え方など、山口院長と精神保健福祉士の鈴木さんに幅広く話を聞いた。
(取材日2024年9月26日/情報更新日2024年10月11日)
患者の社会生活を支援するために開業を決意
クリニックの特色を教えてください。

【山口院長】当院は来院される患者さん一人ひとりの人生が豊かになるようにサポートすることを大切にしています。なので、まずはしっかりと診察をして見立てを立てます。必要であれば、地域の医療・介護福祉・教育など関係機関と密に連携を取りながら、その方に適した支援が受けられるようにします。患者さんの生活をしっかりと診て支えていくことを重要視しています。患者さんにとって何が必要か、それに対し何ができるかを精神保健福祉士らスタッフとともに考えながら取り組み、成長してきました。これからも私たち自身が「できる・できない」を線引きせず、患者さんお一人お一人に真摯に対応していくクリニックでありたいと考えます。
これまでのご経歴、開業への想いを教えてください。
【山口院長】奈良県立医科大学や和歌山県立医科大学、垂水病院などで精神科医療に携わり、一時は研究にも従事しました。開業に至ったのは、特に私がやりがいを感じられる臨床で生きていきたいと思ったからです。また子どもの誕生を機に、私自身が「これをやってきた」と自信を持って子どもに言えるものと考えた時に地域医療という選択肢が出てきたんです。そこで一番初めに思い浮かんだのが、奈良県立医科大学時代にともに働き、患者さんに熱心に関わってくれていた精神保健福祉士の鈴木さんの存在でした。
【鈴木さん】院長にお声がけいただいてから現在に至るまで、院長の考えや発言には一切のぶれがありません。私も患者さんの地域での生活を支援することが重要だと考えており、より地域に近いクリニックでその役割を果たすためには「院長となら実現していけるのではないか」と思えたのも入職の決め手になりました。
お互いに尊敬し合っていらっしゃるのですね。

【山口院長】人の心をつかんで内面にまでグッと入り込み、患者さんの悩みを深くから引き出しているところは特に尊敬しています。患者さんの個性を見極めて、それぞれ対応や言葉遣いを工夫されているのはいつもさすがだなと思っています。さまざまな機関とのやりとりにもその能力が生きていますし、非常に幅広い人脈を持っているところは、良い意味で「人たらし」でありがたい存在です。
【鈴木さん】院長は心から患者さんの生活をよく考えてくれる先生です。これは出会った当初から変わらないところで、本当にすてきだなといつも感じています。また病気の治療や生活の維持のためには、患者さんにとって耳の痛いことも言わないといけない場面もあるのですが、そのときは院長がしっかりと、率先して伝えてくれるんです。きちんと先に線を引いてくださる院長と一緒に仕事ができるのはとても恵まれていることです。
精神保健福祉士とともに「患者本位」で支えていく
診療、相談の際に心がけていることは何ですか?

【山口院長】病気によりどのように生活に困っているのかを把握し、その方の人生が良くなるにはどのようにしていくか、その方が安心して自立した生活を送れるようにどう支えるか、どのような環境をどう提供するかを考えていくことがとても大事にしています。この先も開業当初の地域医療への想いを忘れずに、その軸がぶれないようにやっていきたいと思います。
【鈴木さん】医師でない私は「コミュニケーション」を大事にしています。患者さんやそのご家族に心を開いていただけるように、その方に合わせて話し方や接する態度を調整しながら、「この人になら話してもいいかな」と思っていただけるように努めています。
心療内科・精神科では診察室での診療時間についてたびたび話題になります。先生の考え方はいかがですか?
【山口院長】限られた時間の中で、より多くの方により良いものを提供したいと考えています。なので、一人ひとりの診察時間が短くなってしまうこともある現状がもどかしい気持ちです。その現状を少しでも解決するため、院内でも医師と多職種が連携しています。複雑な問題を抱えている方は診察室だけでは完結しないことも多いため、関係機関などと当院が連携を図ることで患者さんがより良い選択肢や人生をサポートする体制を整えていくことが必要だと考えています。
薬物治療についての考え方もお聞かせください。

【山口院長】医療機関としてやるべきことは、正確な診断に努め、一般的な診療ガイドラインにのっとって最もスタンダードな治療を提供することだと思っています。しかし、お薬に抵抗感があるという方には、メリット・デメリット含めて丁寧にご説明してから治療方針を決めていきます。特殊なことを初めから選択するべきではないというのが診療方針です。お薬を減らす「減薬」のご希望も含め、その方の価値観に寄り添い、話し合いながら治療を提供していきます。
患者と関係機関をつなぐ「ハブ」のような場所に
児童精神科にも対応していますか?

【山口院長】はい。小学生以上のお子さんを対象に診療をしています。特に児童精神科は奈良県では受け入れている医療機関が少ないため、困っている方が多い状況です。そのため、まずはできる限り受け入れたいと考えています。成人であろうと子どもであろうと、「困っている人にきちんと対応をする」という姿勢を忘れずに診療したいと思っています。
【鈴木さん】私の業務領域でも、児童だから何かが変わるということはありませんが、お子さんへの話し方、保護者の方への対応、子と親の考えの相違などは意識しながら取り組んでいます。
心療内科・精神科は予約が取りづらい傾向にあると聞きます。
【山口院長】当院でも受診をご希望されているにもかかわらず、お待ちいただいている方が多いのが現状です。しかし今困っている方になるべく早く対応したいという思いがあるため、2024年10月時点では2週間先までの予約を受けつけています。何ヵ月も先まで予約でいっぱいにしてしまうと、今本当に必要な人に医療が行き届かなくなるからです。予約枠が埋まった場合、また1週間後の土曜・午前9時から電話予約を開始し、つながった順番に空きのある枠をご案内しています。ただ心が苦しい時に、つながるかどうかわからない電話をかけ続けるのもご負担になると思いますので、今後はネット予約システムの導入を検討しています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

【鈴木さん】疾患によって日常生活でのお困り事は変わってくると思います。だからこそ、その方の生活面をいかに豊かにしてくかを一緒に考えていきたいと思っています。関係機関と信頼を積み重ね、多機能な支援ができる仕組みの構築や、当院がそのハブになれるように努めていきます。
【山口院長】精神疾患に対して、まずは薬などの治療で症状の改善を図ることが重要です。その上で一定の生活のしづらさが残る場合にもサポートができる医院でありたいと思っています。精神疾患を抱えていても一般社会で自立して安心できる環境を整えていくためにはさまざまな関係機関と連携することが必要不可欠です。当院が患者さんと地域の関係機関をつなぐハブになれるよう高い意識を持って発展させていければと考えています。心の問題でお困りであれば、お気軽にご相談ください。