磯崎 太一 院長の独自取材記事
えびな産婦人科
(海老名市/厚木駅)
最終更新日:2025/02/28

厚木駅から徒歩1分と通いやすい場所にある「えびな産婦人科」。磯崎太一院長が長らく医療に携わってきた海老名市において、安心・安全な出産ができるように体制を整えたいという強い思いから2024年4月に開院したクリニックだ。これまで多くの分娩に立ち会ってきた磯崎院長が、先進機器も活用しながら、地域に少ない分娩に対応する施設として「海老名で出産したい」というニーズに応えている。加えて、月経不順や更年期の悩みなど女性特有の不調も診療。患者と誠心誠意向き合い、母子の身体的・精神的な健康を支える充実したケアを提供する磯崎院長に、クリニックのこだわりや診療への思いについて聞いた。
(取材日2024年5月15日)
海老名地域で分娩できるクリニックとして開院
淡いピンクが使われた、かわいらしい院内ですね。

ありがとうございます。ホテルのような空間でありながら、患者さんが過ごしやすい雰囲気にしたいという思いで、設計士さんにデザインしていただきました。少しでもゆったりとした気持ちになっていただけたらうれしいです。大きな病院とは違うクリニックの良さを大切にしています。例えば、出産では食事を楽しみにされている患者さんも多くいらっしゃいます。そこで当クリニックは産婦人科での食事を専門にしている業者さんにお願いして、院内で作ってもらったものを提供しています。職員も同じ食事をいただいているのですが、おいしくて彩りもすてきなんですよ。
海老名地域には分娩できる医療機関が少ないと聞きました。開院の経緯を教えてください。
私は医師になって40年ほどたちますが、特に長く医療に携わってきたのが海老名市です。海老名駅はJR相模線と小田急線、相鉄本線が乗り入れ、最近は横浜方面のほか、東京都内まで直通で行ける路線も開通しました。都市部へのアクセスが良く、大きな商業施設もあることから新しいマンションがたくさん建ち、若い世代が増えています。分娩数が全国的に減る中、海老名市では増えているのもそうした理由からです。ただ現在、市内の分娩施設は限られており、市民の約75%が市外の医療施設で分娩している現状があるのです。分娩は突然起こるので、対応に時間がかかるほど危険を伴う可能性が高くなります。即応できる医療機関が地域になければ、母子ともに守ることが難しくなるのが産科の世界といえるでしょう。このため、長く働いてきたこの地域で安心して出産できる体制を整えたいという思いで開院を決意しました。
クリニックの診療内容を教えてください。

安全に配慮したお産を第一に考え、自然分娩に加え、麻酔科医師の協力も得て硬膜外麻酔による無痛分娩にも対応しています。長年にわたって多くの出産経験に携わってきたことは私の一番の誇りです。豊富な経験をここで生かしていきたいと思っています。また、出産に向けて不安を感じる方への産前ケアや、産後の疲れを癒やしたり、育児への心配事に関して助産師からアドバイスしたりする産後ケアの充実も注力している点です。そういったサポートを通して、「ここで産んで良かったな」と思ってもらえるようなクリニックをめざしています。さらに勤務医時代に、がんをはじめ多くの婦人科疾患の治療や手術も行ってたことから、月経不順や不正出血、更年期の症状など、女性の不調や悩みにも対応しております。お気軽にご相談ください。
先進機器による検査や産前・産後のサポートに注力
産科診療でこだわっているところはどんなことですか?

痛みへの不安が特に強い方や、前回の出産時の痛みの記憶から恐怖感がある方に向けて、無痛分娩にも対応しています。ただ、出産時のリスクや合併症の可能性などデメリットもありますので、それぞれの方に合った分娩法を考え、選ぶことが大切です。近年は高齢出産が増えており、母体が高血圧症候群や妊娠糖尿病、前置胎盤などになる可能性が少なくありません。安全性を高めるために、まずはそうした状態に対応する管理や対策をしっかり行っています。また、検査体制も充実させ、何かあった場合に最善の対応を施せるようにと考えています。
検査にはどんな機器を活用しているのですか?
先進の4D超音波装置を導入しています。従来の機器に比べて、おなかの赤ちゃんの動く様子や表情の変化を、より鮮明に立体的に見ていただくことができるものです。親御さんの間で「どちらに似ているか」といった会話をしていることもありますね。そうして赤ちゃんの成長を見ていくとだんだんと愛着が湧き、お母さんには母性が芽生えるのではないでしょうか。母性は、長い間子どもを育てていく過程にも大きな影響を与える大切な要素だと考えています。
注力されている産前・産後ケアについても教えてください。
はい。妊娠中は体調管理、栄養指導、ストレッチなどの運動指導をはじめとする心身のケアを行うとともに、産後ケアも充実させています。特に産後の母体は、1週間程度、特に直後の2〜3日は大きなホルモンの変化にさらされます。そのため精神的に不安定になる方が多く、最悪のケースでは自ら命を絶ってしまう方もいるほどなのです。この数年は産後うつ病などに対する産後ケアの必要性も訴えられており、当クリニックでも力を入れているところです。例えば、寝られないお母さんのケアや母乳育児に関する指導や相談、心理的なサポートなど、それぞれの方のニーズに合わせたケアを提供いたします。産後ケアを行うにはスペースが限られているため、今後は必要に応じて近くのホテルを借りることも視野に入れています。
アロマトリートメントにも注目されているとか。

はい。もともと20年ほど前から取り入れており、当院でも専門家に協力してもらっています。精油の活用方法はさまざまです。例えば、つわりがつらい方にはレモンの精油をお勧めすることもあります。分娩時には専門家の協力の下、妊婦さんが分娩前に選択したブレンドオイルを使用しています。リラックスしてお産に臨んでもらえるといいですね。産後は精油を使った全身のケアを提供しているんですよ。ほかにも、不眠や婦人科の症状で悩んでいる方など、その時の患者さんの状態に合わせたアプローチとして取り入れられるのがアロマトリートメントだと考えています。リラクゼーションの一つとして、心身を健康な状態に導く手助けになればいいですね。
「おめでとう」と言える産婦人科に魅力を感じて
診療にあたり、心がけていることはありますか?

時間が許される限り、患者さんごとに診療時間をたっぷり取りたいと思っています。また、助産師さんや看護師さんを含め、チームで一体となり、患者さんの悩み事にそれぞれが対応していくことも大切にしています。最近の医療は新しい機械に頼る傾向がありますが、検査をしてもデータばかり見て、患者さんの顔を見ずに診療を行うシーンもあるようです。しかし、私はそのような仕事を真の医療だとは思いません。話を聞いて、向き合い、身体症状だけでなく全身的な精神的な要素を把握することが非常に重要ですし、それこそが真の医療だと考えています。技術や知識のアップデートを欠かさないのはもちろん、これまでに出会ってきた産婦人科の先輩たちの教えを胸に、研鑽を積んでいくことも心がけていることです。
ところで、そもそも院長が医師を志されたきっかけは何だったのでしょうか?
3歳の頃に池に落ちて救急車で運ばれた経験が大きいですね。たまたま近所の方が池に浮いている私を発見してくれましたが、あと30分遅かったら死んでしまっていたような状況だったと聞きました。急死に一生を得たことから、このことに感謝して医師になろうと考えたのが原点です。その後医学部に進み、在学時は外科へ進む道を考えていました。しかし外科系、内科系ともに診ることができ、患者さんに「おめでとう」と言える診療科ということに魅力を感じ、産婦人科の医師となることを志したのです。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

長く続けていけるようなクリニックにするために体制を整えてまいります。安心して子育てをしていくためには、行政による環境づくりや、周りの方々のお手伝い、声がけも大切ですから、当クリニックがその一端を担える存在でありたいですね。長年、産婦人科の医師として仕事をしてきましたが、生命の尊さは何物にも変え難いものです。これからも、一人でも多くの方の笑顔あふれる幸福な人生のサポートをしていきたいです。私にとって思い入れのあるこの海老名市において、地域に愛される産婦人科をめざして精進してまいりますので、よろしくお願いいたします。