本多 忠暁 院長の独自取材記事
ほんだ内科醫院 船橋三山
(船橋市/実籾駅)
最終更新日:2025/04/24

京成本線・実籾駅から徒歩17分の住宅地に、2024年に開院した「ほんだ内科醫院 船橋三山」。院長の本多忠暁(ほんだ・ただあき)先生は循環器が専門で、カテーテル治療に力を入れて研鑽を重ねた医師だ。西洋医学だけでなく東洋医学も専門的に学び、漢方についても造詣が深い。西洋医学と東洋医学の「いいとこ取り」をして、一人ひとりに合った治療を提供している。患者との対話を大切に、優しく寄り添う医療をめざす、優しく穏やかな語り口の本多院長に、診療への思いやクリニックの特徴、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2025年3月25日)
「人を癒やす医療がしたい」と医学の道へ
先生が医師を志したきっかけを聞かせてください。

父が医師で自宅で開業していたため、幼い頃から医療が身近にありました。幼稚園の「将来の夢」にも「お医者さん」と書いていたそうです。当時は医学のことはわかりませんでしたが、父が患者さんに真摯に向き合い、時には1時間以上も話し込んでいる姿が印象に残っています。その様子を見て、母や看護師さんが「また話し込んでる」とあきれたように笑っていましたね。さらに、高校時代に読んだアンドルー・ワイルの著作にも影響を受け、病気を治すだけでなく、人を癒やす医療に興味を持つようになりました。薬や手術で病気を治療するだけではなく、人を癒やす医療を提供したいと考え、医師を志しました。
そこから東洋医学を学ぶようになったのですか?
すぐに学び始めたわけではありません。東洋医学に興味はありましたが、大学ではまず西洋医学をしっかりと学ぶことにして、卒業後は循環器内科に進みました。救急医療のようなスピード感のある現場にも魅力を感じていましたし、当時登場したばかりのカテーテル治療にも強く惹かれました。管を1本入れるだけで心筋梗塞を治療できるという先端の治療に可能性を感じ、技術を習得したいと思いました。漢方を学ぼうと思ったのは、その数年後です。漢方薬を処方する先輩医師と出会う機会があり、実際に自分も服用してみたんです。その経験から、自分も漢方について学びたいという思いが強くなりました。
どのようにして漢方の知識を深められたのですか?

漢方を専門的に学びたいと思い始めた時期、ちょうど漢方薬を積極的に取り入れているクリニックが内科の医師を募集していました。これは良い機会だと思い応募し、詳しい先生のもとで経験を積み始めたのが最初です。院外での勉強会にも積極的に参加し、学べる機会があればどこへでも足を運びました。学んでいくうちに、魔法のように感じていた漢方にも明確な理論があることがわかり、薬のメカニズムをより深く理解できるようになりました。漢方薬は、たとえ同じ症状でも、体の強い人と弱い人、体質などによって処方する薬が変わります。そんな西洋医学とは異なる視点に魅力を感じ、どんどんのめり込んでいきました。特定の先生について一つの流派を学ぶのではなく、幅広い知識を身につけられたことは、結果的に良かったと思っています。
東洋医学と西洋医学の融合をめざして
クリニックの特徴について教えてください。

開業の地に船橋市を選んだのは、妻の実家が近かったことが大きな理由です。ここは古くからの住宅もあれば、高校や大学も近く、10代から90代まで、老若男女幅広い人たちが暮らしている土地です。特に若い女性の患者さんなど、漢方薬への認識や期待値が高く、関心を持って相談に来られる方も少なくありません。ただ、当院では漢方薬だけでなく西洋医学の薬も併用し、患者さんの体質や症状に合わせた治療を提供するというスタイルです。「どちらかが合わなければ無理に続ける必要はない」とお伝えしながら、一人ひとりに合った治療法を提案しているんですよ。
どんなご相談が多いのですか?
本当にさまざまな患者さんがいらっしゃいます。高血圧症や糖尿病などの生活習慣病、健康診断で異常を指摘された方や、腹痛や風邪、花粉症、改善が難しい慢性の副鼻腔炎、さらには不安やほてりなどの不定愁訴など、幅広いお悩みをお聞きします。しかし、例えば「おなかが痛い」と訴えていても、必ずしも消化器に原因があるとは限りません。患者さんが訴える症状だけでなく、ストレスや家族関係、学校・社会生活など、背景にある要因を探りながら診察を進め、患者さん自身が気づいていない根本原因を見つけることが大切です。また、一見関連がなさそうな複数の症状も、漢方の視点で考えるとつながりが見えてくることがあり、診療をしていてとても興味深く感じます。
西洋医学に東洋医学を取り入れるメリットについてお聞かせください。

西洋医学は直接働きかけるような治療が可能ですが、それでもすべての患者さんに有用性が見込めるわけではありません。特に慢性疾患や原因がはっきりしない症状には、西洋医学だけでは対応しきれないことも多くあります。その隙間に東洋医学を取り入れることは、大きなメリットにつながると私は考えています。西洋医学で「しばらく経過観察を」と言われた場合でも、漢方薬で症状の軽減が望めることも少なくありません。また、東洋医学には「未病」という考え方があり、症状が深刻化する前に治療することで、大きな病気を未然に防ぐことが期待できます。このように、西洋医学が必要になる前段階や、西洋医学での治療に難渋するケース、治療しても効果が得られないケースなどに、東洋医学を活用していけたらと考えています。
どんな些細な悩みや不調にも寄り添いたい
先生が診療の際に大切にしていることは?

患者さんの訴えを否定せず、安心して話してもらうことです。例えば「頭が痛い」と訴える患者さんに対し「頭痛ではなく首の凝りでは?」と感じたとしても、決めつけず「どのように痛みますか?」「肩凝りはありますか?」と丁寧に質問しながら診察を進めます。また、情報を一つ取りこぼすだけで、治療がうまく進められないこともあります。例えば、同じ症状でも便秘があるかないかで処方する漢方薬は変わりますが、患者さんが恥ずかしさから「便通異常はない」と答えれば、それだけで適切な治療を逃してしまうのです。禁煙や減量など、生活指導が必要なケースは時に厳しさも求められますが、患者さんが萎縮してしまっては本当に必要な情報を引き出せません。患者さんと信頼関係を築き、なんでも話せる環境をつくることが大切だと考えています。
今後の展望をお聞かせください。
医師として四半世紀、患者さんから多くのことを学ばせていただきました。今後も現場での実践を大切にしながら、患者さんの声に耳を傾け、より良い治療を提供していきたいと考えています。東洋医学の古典は一生かかっても読みきれないほど探求しがいのあるものですが、学びを続け、現代医療に生かせる知識を求め続けたいと思います。急性期の治療は西洋医学が適していて、その検査機器や治療法の発展は目を見張るものがあります。新しい治療を取り入れつつ、1000年前の生薬の知識も大事にしていく――。西洋医学と東洋医学の垣根をなくし、患者さんにとってより良い医療を提供し、それを後世に残していくことが私の目標です。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

医師として初期研修から、循環器疾患をはじめ生活習慣病や慢性疾患、終末期医療、さらには予防医学にも携わってきました。その中で、西洋医学の限界も感じ、解決策を求めて東洋医学を学びました。漢方薬は「長く飲まないと」と思われがちですが、数分で有用性が発揮されるものもあり、私自身もさまざまな経験をしています。漢方薬や東洋医学を難しく考えず、西洋医学では「取るに足らない」「治らない」といわれる症状を、ぜひ気軽にご相談ください。風邪で受診したついでに「最近足先が冷える」「髪が薄くなってきた」など、ちょっとした不調や悩みを話していただくのも大歓迎です。地域の皆さん一人ひとりのお悩みに向き合い、できる限りのサポートをしていきたいと考えています。