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鹿島 直之 院長の独自取材記事

町田まごころクリニック

(町田市/町田駅)

最終更新日:2019/08/28

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町田駅から徒歩8分。老人福祉施設の1階に「町田まごころクリニック」がある。ダークブラウンで統一された院内はゆったりとして、とても温かな雰囲気。2011年1月の開業からわずか9ヵ月で700人近い患者が来院。すでに地元になくてはならないクリニックとして、幅広い年齢層の患者から厚い信頼を寄せられている。「患者さんが楽になるためにあらゆる努力を惜しまない」という鹿島直之院長は、その言葉の端々から診療に対する熱い思いがみなぎる、とても誠実な印象を受ける。独特な診療スタイルを提案、常に患者に寄り添う気持ちを忘れずに診療にあたる。成城大学で非常勤講師も勤める鹿島院長に、日々の診療で感じる思いや大学での授業のこと、医師を目指した理由やリラックス方法などプライベートな話まで、たっぷりと語ってもらった。
(取材日2011年10月12日)

見るとホッとする言葉を書き留めたカードで心の安らぎを

こちらを開業されたのはいつですか?

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2011年1月です。それまで、今も週1回勤務させて頂いている町田市民病院で精神科の責任者を含め3年間勤務していたこともあり、診ていた患者さんを引き続き診療できるようにと、ここでの開業を決めました。このクリニックには、例えば社会的・経済的に不安定な方も大勢いらっしゃいます。そういった方々もゆったりとお迎えし、包んで差し上げられるような空間にしたいと思い、院内は落ち着いた温かい雰囲気を心掛けました。ここは僕のためではない、あくまでも患者さんのための場所。クリニック名の「まごころ」にも、そんな僕の思いを込めたつもりです。

どのような患者さんが多くいらっしゃるのでしょう?

お子さんからご高齢の方まで、本当に幅広い年齢層の患者さんがいらっしゃいます。町田市内にお住まいの方を中心に、近隣の相模原市や横浜市、遠い方だと山梨県から通院されている方もいらっしゃいますよ。症状として一番多いのは、やはりうつ病や、心理的ストレスによるうつ状態の適応障害。また、日本の認知症治療の草分け的存在である河野和彦先生提唱の「コウノメソッド」を実践していますから、認知症の治療目的で来院される方も多いですね。もともとお子さんの患者さんは多かったのですが、最近、一層増えてきているように思います。多くは注意欠陥多動性障害など、発達の問題を抱えていらっしゃる方です。近隣で、お子さんを診てくれるところが余りないですから、うちのクリニックに集まってこられるようです。お子さんの診療は、必ずお子さんと親御さん一緒に診療室に入っていただき、双方からお話を伺い、時に学校の先生とも連絡をとりますから、とてもエネルギーが必要。でも、安心された表情を拝見すると、大きなやりがいも感じます。開業から9ヵ月が過ぎた今、いらしてくださった患者さんは約700人。多くの方に信頼していただいていることをとても感謝していますし、引き続き信頼に応えるべく、精一杯、努力していきたいですね。

先生が行っていらっしゃる「カード」を使用した診療とはどのようなものですか?

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メッセージカードに患者さんが見るとホッとする言葉を書き留めて手元にお持ちいただき、いつでも繰り返し見て声に出して読むことで、気分を楽に保つというものです。とてもシンプルですが、大きな効果があるのですよ。悩みを打ち明けるというのは心の傷口を開くのと同じこと。誰でも、その後に傷口を閉めてほしい、何かを言ってほしいと思っているはずなんです。それを、ただ話を聞きっぱなしにしていては、患者さんが元気になるわけがありません。ですから僕は、必ず傷口を閉めるために、話してくれた患者さんが安心していただける言葉をお伝えし、楽になって帰っていただくよう心がけています。その安心できる言葉ですが、例えば、「自分のペースでやればいい」とか、「私をよろこんでくれる人がいる」、「私は乗り越えてきた」といった言葉は、みなさんの多くが口にすればほっとする言葉です。お話しを伺った上で、そういった言葉一つ一つをクリニックに用意してある可愛らしいカード一枚一枚に書き留め、お持ち帰りいただき、日々読み返してもらうのです。最初の1枚目でカードの作り方を覚えてもらい、後は受診のたびに、その日の診察のお話の内容を基に、新しいカードの言葉を一緒に考えます。いわば、これは心の傷や不安を和らげ、勇気を与えてくれる「言葉の処方」なのです。それぞれお悩みやお話しは違いますから、対処の仕方もカードの言葉も違う。すべてオーダーメイドの治療です。実は、付き添っていらした家族の方にもカードをお渡ししているんですよ。ご家族の病気は自分の責任だと思い、ご自身を責めてしまう方も多く、みなさん心の傷を抱えていらっしゃる。「私が元気でいることが家族のため」「子どもには子どもの人生がある」といったカードをお渡しし、家族みなさんのフォローも心掛けています。もちろん、僕もいつも、自分が元気が出る言葉を書いたカードを持っています。例えば、「愛とゆるしに生きる」「感謝と喜びに生きる」とかね。やはり、自分ができないことを患者さんにお勧めしても仕方ないですからね。なんでも、まずは僕が自ら実践し、本当に役に立つと実感したことをお伝えする。それが基本だと思っています。

日々、今が人生で一番の充実した時と実感

先生はずっと医師をめざしていらしたのですか?

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本当はずっと哲学を勉強したいと思っていたのですが、親戚に歯科医師が多く、医療の道には親しみも感じていました。それで、高校に入る頃には、自然に医学部をめざすようになりましたね。その当時から、「医者になるなら精神科医に」と決めていました。好きだった哲学が何か役に立つのでは、と思ったからなのですが、実際に医師になってみると、それは全く役に立ちませんでしたね。一番大事なのは知識ではなく、患者さんの人生に寄り添い、患者さんのあり方を尊重すること。それを教えてくれたのは、医師になって5年目頃に出会った、濱田恭子先生という凄腕のカウンセラーでした。カウンセリングを教わる時には、先生を囲んで数人の実践形式で教わるですが、目の前で、患者役となった生徒が先生との会話でどんどん元気づけられていくのです。「言葉を大事にすれば、ここまで人を元気づけられるんだ」と強く実感しました。それからは、精神科の医師の道にも、一層、張り合いを持って取り組むようになりました。精神科医には治療において、薬以外にも、言葉という強力な武器があり、その武器は日々の修練で鍛えられることがはっきりわかったからです。また、自らが常に成長し、周囲が驚くほど変わり続けていかなければ、患者さんにも変わることをお勧めできません。精神科の医師としてもっとすばらしくなれないか、どうしたら治療をもっと良くできるのか、常に考え続けています。

ご自身はどのようにリラックスされているのでしょう?

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どんなに忙しくても、毎日1時間ほどは瞑想しています。やはり自分を無にする時間がなければ、私自身も疲れてしまい、まともな診療はできませんからね。僕自身が自分のメンタルヘルスに心掛け、健康を保ち、診療を楽しむことも、とても大事だと思っています。開業して、勤務医時代より仕事は何倍にもなりましたが、今、これまでの人生でなかったくらい、とても充実しています。優秀なスタッフに恵まれ、すばらしい患者さんにもいらしていただき、与えられた人生に感謝の気持ちでいっぱいです。この社会に何とか御恩返しをするように、これからも頑張っていきたいし、それが私の使命でもあると思いますね。

伝えたいメッセージは「あなたって素敵ですね」ということ

診療する上で一番心掛けていらっしゃるのはどのようなことですか?

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例えば、患者さんに何かを伝えたいと思った時、適切な話しの内容やタイミング、言い方、患者さんとの信頼関係、それらの条件がすべてそろって初めて、こちらの思いが通じます。その1つでも間違えれば、どんなアドバイスをしても何の役にも立ちません。ですから、何よりもまず患者さんを十分に観察し、注意深く接することで、話がわかってくれる人だと信頼していただくことが大切。患者さんのすべての言葉のなかに「私をわかってほしい」というヒントが隠れていますから、それらを決して聞き逃すことのないようお言葉一つ一つに集中し、しっかりした信頼関係を築くよう心掛けています。その関係の上にこちらが伝えたいことを分かってもらえる可能性が生まれるのです。僕は医師になって5年目頃からいつも外来がある時には昼食を摂らないのですが、それは、いらしていただいた患者さんと真剣にひとことひとこと向き合うほうが昼食よりよっぽど大事だと思うようになったからです。それこそ、1分1秒も貴重だし、無駄にしないでお話したい。また、常に患者さんに尊敬の気持ちを持ち、むしろ何かを教えていただくスタンスで接していますが、それが精神医療の基本だと思っています。「あなたって素敵ですね」。シンプルですが、そのたった1つのメッセージこそ、精神科医が患者さんにいつも伝えなければいけないこと。それが伝われば、患者さんは絶対によくなると信じているし、実際によくなります。

大学で講師もされていらっしゃるのですね。

はい。毎週1日、成城大学で非常勤講師として精神医学の知識とカウンセリングについての2講座を教えています。毎年、とても大勢の学生が講義を受けに来てくれます。僕は、診療と教育は切り離せないものであり、教育することも、僕に与えられた大事な使命の1つだと思っています。日々の診療を続けながら講義の準備をするのは、正直、とても大変ですが、僕も楽しみながら、少しでも学生たちが「講義に参加したい」と思ってくれるような授業をめざして頑張っているつもりです。「来てよかった。元気が出た」と思ってもらうのは、患者さんも学生も同じですからね。いろいろな質問にもきちんと答え、100通以上も届く学生からのメールにも、可能な限り返信しています。学生たちはメンタルヘルスの知識が圧倒的に不足していますから、病気をこじらせる前に、少しでも役に立てればいいなあと願っています。教育を通して学んだのは、学生たちが知りたいことは知識に加え、僕の生き方だということ。ですから、自分はこの社会で何をしたら貢献できるのかを常に考え、そこに向かって行動していくことの大切さと喜びを、僕の生き方をもって学生たちに示したいなと思っています。

心の健康を守りつつ、明るく快適な生活を送っていくために、読者にメッセージをお願いします。

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大切なことは、難しいことですが、人を批判しないこと。どんな人とも仲良くすること。インディアンのことわざに、「その人と同じ靴を2ヵ月間履かなければ、その人を批判してはいけない」というのがありますが、そのぐらい他人のことはわからないもの。行動の裏には必ずその人なりの理由があるということを理解し、どんな時にも人を批判しないことが大切だと思いますね。そして、ぜひ、リラクゼーションの時間も持っていただきたいです。やはり、無になり、あらゆることから開放される時間はとても重要。患者さんにもリラクゼーションの大切さをお話し、カード療法も行い、なるべく最小限の薬にするよう心掛けていますから、ここにいらして薬が減ったという方はとても多いです。ただ薬で症状を抑えるだけの治療ではなく、まず患者さんを元気付けるという治療を、スタンダードにしていきたいとも思っています。今後、もし自分に時間や余裕ができてきたら、ぜひデイケアをやりたいですね。あとは、分院を作り僕の思いをきちんと理解し、継いでくれる精神科医を育て、日本のあちこちで僕のスタイルと同じ診療を受けられるようにできたらいいなあと思います。とにかく、患者さんには「あきらめないで」と伝えたい。患者さんはあきらめても、僕はあきらめません(笑)。患者さんが楽になるためであれば、あらゆる努力をする覚悟でいますから、ぜひ、気軽にいらしていただきたいですね。

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