心房細動は脳梗塞の原因にも
動悸、息切れ、不整脈は早めに相談を
せんが内科・循環器クリニック
(桑名市/桑名駅)
最終更新日:2025/04/15


- 保険診療
階段を上がっただけで息切れがする、胸がドキドキする、倦怠感が続いている……。これらは不整脈が原因の可能性があるという。不整脈の一つに「心房細動(しんぼうさいどう)」という病気があり、健診で指摘される患者だけでも約80万人、実際には100万人を超えるともいわれている。さらに患者の半数は無症状とされ、潜在患者はさらに多い可能性がある誰にとっても身近な病気だ。「せんが内科・循環器クリニック」の千賀通晴院長によると、心房細動自体は直接命に関わることは少ないが、放置すると脳梗塞など重篤な疾患の原因になることがあるという。不整脈を得意とし、カテーテル手術の豊富な経験を生かして専門的な診断・治療を提供する循環器内科医の千賀院長に、心房細動の症状や受診の目安、検査について話を聞いた。
(取材日2025年3月24日)
目次
不整脈による動悸・息切れ・胸痛は心房細動の可能性。脳梗塞など重篤疾患に至る前に早期発見・早期治療を
- Q心房細動とはどのような病気ですか?
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A
▲不整脈の一つである心房細動
心房細動とは、不整脈の一つです。通常、心臓の脈は一定のリズムで打っているものですが、心房細動という不整脈になると、心房内で異常な電気信号が発生し、けいれんするように細かく震えることで、脈の間隔が非常に不規則になります。そのため、突然脈が速くなったり遅くなったりし、日常生活にも支障を来すこともあります。原因はさまざまですが、加齢が大きな要因の一つです。また、年齢に関係なく、ストレスや過労、飲酒、喫煙などの生活習慣に加えて、高血圧症や糖尿病といった生活習慣病が引き金になることがあります。また、狭心症や心筋症といった心疾患、甲状腺機能のホルモン異常などが背景にある場合もあります。
- Qどんな症状があると来院したほうがよいのでしょうか。
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A
▲自覚症状が少ない病気のため、定期的な健康診断が大切
自覚症状としては、動悸や息切れ、胸の苦しさを訴える方が多いですね。ただ、心房細動は自覚症状がない場合も多く、半数ほどの方は自覚がないまま過ごしており、健康診断などで偶然見つかるケースも多くあります。やはり動悸などの症状は主観的なものなので、自覚が難しいこともあります。例えば、ご自身で脈を測ってみて「脈が飛ぶ感じがする」「安静にしているのに脈が100を超えている」といったことに気づくこともあります。特に、脈が非常に速いと感じたら注意が必要です。最近では、スマートウォッチなどを使って不整脈をチェックする方も増えてきています。若い方でも、デバイスを活用して異常を発見し、相談にいらっしゃっています。
- Q放っておくとどのようなリスクがあるのでしょうか。
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A
▲放置せず早めに相談することが大切
心房細動自体が直接命に関わることは少ないものの、放置すると重大なリスクを伴います。特に、心臓内に血栓ができやすくなり、それが血流に乗って脳の血管を詰まらせ、脳梗塞を引き起こす可能性があります。また、心房細動が続くことで心臓の機能が低下し、心不全を発症することもあります。中には、心房細動に気づかないまま過ごし、半身まひなど脳梗塞の症状が突然現れるケースもあります。脳神経外科の医師から「脳梗塞で入院した患者さんに心房細動が見つかった」と相談を受けることも少なくありません。症状がないから安心ではなく、むしろ無症状の方ほど気づかないうちに重篤な状態に陥るリスクが高いため、早期の診断と治療が重要です。
- Q実際の治療はどのように行われるのですか?
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A
▲不整脈の治療を専門にしてきた院長
当院では、主に薬物療法を中心に行い、必要に応じて電気的除細動といって、電気ショックを用いて心臓のリズムを正常に戻すための治療を行っています。ただ、これらはあくまで対症療法のため、根治をめざすのは難しいこともあります。症状が重い場合や薬で十分な改善が認められない場合には、カテーテルアブレーションという手術を検討します。これは、カテーテルを使って心臓内の異常な電気信号を生み出している部分を焼灼し、不整脈の抑制を図る治療です。ただしカテーテル手術は、設備や技術が必要なため、当院では、専門の医療機関と連携を取っています。また、術後は、再発を防ぐため、投薬の調整をするなど経過観察が大切になってきます。
- Q検査は負担が少なく行えるとお伺いしました。
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A
▲検査中は通常どおりの生活を送ることが可能
心房細動が疑われる場合、まず心電図検査を行います。ただし、院内での短時間の測定では異常が見つからないこともあります。そこで、1週間ほど連続して心電図を記録できる「コードレス型の7日間ホルター心電図」を実施することがあります。24時間装着し、日常生活を送りながら異常を捉えることが可能で、防水仕様の機器ならシャワー浴や半身浴も可能ですので生活への負担は少ないと思います。さらに、症状が出た際に患者さん自身が記録するイベントレコーダーも活用しています。必要に応じて血液検査や心臓超音波検査も行い、患者さんの負担を減らしつつ、早期発見と適切な診断ができるように努めています。