千賀 通晴 院長の独自取材記事
せんが内科・循環器クリニック
(桑名市/桑名駅)
最終更新日:2025/04/15

桑名駅から徒歩7分、2024年2月に開院した「せんが内科・循環器クリニック」は、循環器疾患を中心に、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、花粉症など、幅広い診療を行う地域のかかりつけ医だ。院長の千賀通晴先生は、大学病院や医療センターで20年にわたり循環器内科の医師として研鑽を積み、心疾患の中でも特に不整脈治療の豊富な経験を積み重ねてきたエキスパート。「地域の人が安心して相談できる場をつくりたい」との思いから、生まれ育った桑名の地で開業した。「患者さんの笑顔が見られるのが何よりのやりがいです」と語る千賀院長。優しい笑顔の奥にある、診療に対する熱い思いや今後の展望について話を聞いた。
(取材日2025年3月24日)
動悸や息切れ、循環器疾患を相談できる身近な存在
開業の経緯についてお聞かせください。

私はもともと三重大学医学部附属病院の循環器内科で、不整脈の治療を専門としていました。その後は、不整脈治療に注力する群馬県立心臓血管センターで2年間学び、技術を磨きました。そして、桑名東医療センター(現・桑名市総合医療センター)に戻り、循環器内科の医師として長年診療を続けてきたという流れです。実は、ここ桑名市は私の生まれ育った場所でもあり、地域医療に貢献したいという思いは常に持っていました。そんな中、以前この地にあった「平田循環器病院」が桑名市総合医療センターに統合されたことで、地元の方々から「身近に相談できる循環器のクリニックがほしい」という多くの声をお聞きしたのです。そこで、地域の皆さんが安心して相談できる場を提供すべく開業に至ったという経緯です。
地域の方もお喜びではないでしょうか?
もともとこの地域には、平田循環器病院に通院されていた患者さんが多くいらっしゃいましたので、「また近くに循環器のクリニックができて助かっている」と思っていただけていたらうれしいですね。患者さんがお帰りになる時にほっとしたような顔をされていると、本当に「ここで開業して良かった」と感じます。また、かつて桑名市総合医療センターで私が担当した患者さんも多く来院されており、中には四日市や鈴鹿など遠方から来てくださる方もいます。駅が近いこともあり、名古屋方面から通院される方も増えていますよ。特に不整脈の治療を専門的に行うような地域のクリニックは少ないため、ホームページなどを見てご来院されるケースも多いですね。
どのような診療を中心に行っていますか?

専門領域としては、不整脈を中心とした循環器内科の診療を行っています。具体的には、動悸や息切れ、胸の不快感など、不整脈に関わる症状の診断と治療です。循環器内科というのは幅広い分野ですので、不整脈以外にも、狭心症や心筋梗塞、足の血栓症や静脈瘤などの診療も行っております。併せて、地域のクリニックとして一般的な内科の診療にも幅広く対応していますよ。高血圧症や脂質異常症、糖尿病の管理で通院される患者さんも多く、必要に応じてインスリン注射や生活指導もしています。また、風邪や発熱、新型コロナウイルス感染症の疑いなどに対応する発熱の外来や、消化器系などちょっとした体調不良のご相談も受けつけています。さまざまな症状から見極めるのも、地域のかかりつけ医としての重要な役割ですね。
生活に直結する不整脈の治療。患者の笑顔を見届けたい
医師を志ざした理由、循環器内科を専門に選んだきっかけを教えてください。

もともと父が消化器外科の医師だったことの影響が大きいと思います。父は総合病院で勤務医として働いていましたが、多忙で家にほとんどいませんでした。その姿を見て医師の道の大変さを感じつつも、「人の役に立てる仕事をしたい」という思いから医学の道を選びました。学生時代は父と同じ外科系を志していましたが、実習を通して循環器内科は、外科的な要素も多い中、内科として全身を診ることができることを知りました。また、急性期の対応から慢性期の管理まで幅広く携われる点にも惹かれましたね。さらに、当時はカテーテル治療の技術が目覚ましく進化していた時期でもありました。まさに日進月歩で技術が向上し、患者さんの治療に生かしていく場面を目の当たりにしたことが決め手となりました。
そこからさらに不整脈を専門とされたきっかけは何だったのでしょうか?
最初は心筋梗塞や狭心症などの疾患に対するカテーテル治療を中心に学び、若手の頃はとにかく多くの症例を経験し、技術を磨く日々でした。そんな中、大学院に進学するタイミングで素晴らしい先生方との出会いがあり、指導を受けるうちに不整脈治療への興味が強くなっていきました。ちょうどその頃、2000年代初頭には「カテーテルアブレーション」という不整脈の治療法が注目され始めた時期だったのです。特に心房細動に対する治療が大きく発展し、国内でも急速に広まっていきましたね。カテーテルを使った治療で患者さんの不整脈の改善を図り、生活の質を向上させることが見込めるのは非常に画期的だと思いましたし、私自身、新しい技術に挑戦したいという希望も強かったです。その結果、自然と不整脈治療の道へ進み、大学院では不整脈治療の研究をしながら、臨床でもカテーテルアブレーションの技術を磨いてまいりました。
多くの治療に携わってこられた中で、印象に残るエピソードがあればお聞かせください。

以前の勤務先で私が手術を担当した患者さんの中には、現在も様子を見守らせていただいている方が多くいらっしゃいます。カテーテルアブレーションを受けた方は再発のリスクがゼロではありません。その方々と長期的な関係性を築く中で、笑顔で通院を続けてくださることはやりがいを感じられる瞬間ですね。特に不整脈の治療は生活の質に直結します。間近で見守れるのは本当にうれしいことです。
専門的かつ幅広く、地域に信頼される医院をめざして
どのような思いで日々の診療にあたられていますか?

患者さんが安心して相談できる存在でありたいと思っています。自分自身も通いたい、家族も診てもらいたいと思えるような、信頼していただける診療を心がけています。また、専門は循環器内科や不整脈治療ですが、研修医時代の教授から「循環器内科の医師であっても、まずは一般内科の医師として全身を診られるように」と教わりました。その言葉は今でも大切にしています。もちろん必要に応じて専門機関に連携することも大切ですが、かかりつけ医として「これは診られない」と簡単に線引きせず、できる限り対応できるように努めています。
先生ご自身も、桑名市総合医療センターで手術を担当されているとお聞きしました。
はい。この地域では、不整脈を専門に治療できる施設が多くないため、現在も週に1回、桑名市総合医療センターでカテーテル手術を担当しています。患者さんにとって、身近なクリニックと総合病院の両方で継続的に診てもらえることは大きな安心材料になるかと思います。もし手術が必要な場合でも、私がそのまま執刀することで、患者さんの負担や不安を少しでも軽減できればと考えています。医療センターで対応困難な患者さんに対しては、周辺の信頼できる総合病院をご紹介させていただいております。医療センターの先生方とも緊密に連携を取りながら診療を行い、必要に応じて患者さんを紹介し合うなど、病診連携を通じて地域医療の質を高めていきたいと思います。
今後のご展望をお聞かせください。

将来的には、運動負荷試験で使用しているリハビリテーション室で心臓リハビリを提供したいと考えています。特に心不全の患者さんにとって、運動療法は非常に重要です。しかし、心臓の病気を抱える方の中には、「どの程度運動して良いのか」「無理をして不整脈が起きたらどうしよう」と不安を感じる方も少なくありません。そのため、現在心臓リハビリを提供しているのは主に総合病院や専門施設ですが、将来的に地域の身近な存在である当院でも応じられればと構想しています。また、妻が小児科の医師ということもあり、子どもの手が少し離れたら診療体制の強化も視野に入れています。専門的かつ幅広い診療を通じて、地域の皆さんに「困ったら相談してみよう」と思っていただける存在をめざしていきたいです。