新田 継三 院長の独自取材記事
有井にった歯科医院
(大和高田市/大和高田駅)
最終更新日:2024/03/05

近鉄大阪線大和高田駅より程近い場所にある「有井にった歯科医院」。静かな住宅街の一角に溶け込むように立つ同院は、1998年に新田継三院長が開業した。以来四半世紀以上にわたり地域の歯科診療を支えてきた。新田院長自身が幼少期に歯科で怖い思いをした経験から、患者に自分と同じ思いをさせないことをモットーに診療にあたる。患者の気持ちに寄り添うことを何よりも大切にし、「患者さんの言葉に表われない気持ちのサインを見逃さないようにしています」と穏やかな口調で話す。歯を抜くことは体の一部を取ることと同じだと、極力患者自身の歯を残せるような治療ができるよう努める新田院長の眼差しは、温かく誠実さにあふれている。そんな新田院長に、歯科医師をめざしたきっかけや、診療時の心がけ、休日の過ごし方など、多くの話を聞いた。
(取材日2024年1月23日)
怖い思いをさせない、患者目線に立った治療をめざす
新田院長が歯科医師になったきっかけを教えてください。

小さい頃にアセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)という病気にかかったことがあり、両親から「その時にいろんな人に助けてもらったんだよ」と教えてもらいました。その話を聞いて、今度は私が人の助けになるようなお手伝いがしたいと思い、医療の道に進むことを志望しました。その中でも歯科医師を志したのには理由があります。私が小学生の時、虫歯の治療で通っていた歯科医院の先生がとても怖かったんです。当時は子どもの虫歯が多い時代でしたので、歯科医院はどこも大混雑でした。多くの患者さんに対応するには致し方なかったのだと今なら理解できます。しかし幼い自分は到底その考えには至らず、ただただ怖かったのが心に強く残っていまして……。だから私は、患者さんに怖い思いをさせない、優しい歯科医師になりたいと思ったことが、この道を歩み始めたきっかけなんです。
幼い頃の経験もあって、患者さんに寄り添った診療を大切にされているんですね。
そうですね。できる限り患者さんの希望に応えられるようにということを大切にしています。ただし、どんなに私が力を尽くしても、かなえられないこともあります。例えば歯槽膿漏でぐらついている歯の場合です。患部をエックス線で映すと、骨がない状態のことが往々にしてあります。そういった歯は残したいという希望に沿うことが難しいので、そのことを丁寧に説明をさせていただきます。そういったケースでない限りは、患者さんにとって大事な歯ですので、一本でも多く残してあげたいという気持ちで、一人ひとりの診療にあたっています。
この地域で開業されたのは、どういったご縁があったのですか?

親が奈良県に土地を持っていまして、家族でこちらに移ることになり、そこからのご縁です。もともとは何も知らない土地だったんですが、こうして接点ができたことをうれしく思います。引っ越してくる前に住んでいた場所は大阪市に近い大阪府松原市で、ベッドタウンでサラリーマンが多く、住宅が密集した場所でした。大和高田市は自然にあふれていて、開放感があって静かですし、住みやすいと感じます。当院に通ってくださっている患者さんは高齢の方が多いのですが、土地柄もあるのか、穏やかで本当に良い方ばかりです。
時代のニーズに合わせ、地域とともに歩いていきたい
開業されてから26年という歴史あるクリニックですが、今までの間に変化はありましたか?

お子さんに多く来院いただいた時期があり、その時に院内にキッズルームを設置しました。近年はご高齢の方の来院が多くなってきたこともあって、3年ほど前に手すりも備えつけました。当院は院内に段差のある場所があるので、患者さんの上り下りの利便性や安全性の向上のために、手が届きやすい位置に設置しました。当院も、その時その時の時代や、地域を取り巻く状況や患者さんのニーズに合わせて変化させながら、地域にしっかりと根づき、地域の皆さんに密着した医療を提供することに努めてきました。地域とともに、一緒に歩かせていただいているような気持ちで今までもこれからも治療や予防にまい進していきたいと思っています。
勤務医時代は、どのような研鑽を積まれたのでしょうか。
開業までに3つの歯科医院に勤務して、歯科医師としての研鑽を積みました。最初に勤務した歯科医院にいた時は、大学を卒業したてということもあって、基本的な治療をきちんと行えるよう技術を習得するのに必死でした。次に勤務した歯科医院は多くの患者さんが来院するクリニックでした。たくさんの患者さんたちへ、いかに精密かつスピード感を大切にした対応ができるかを学ばせていただきました。開業前、最後に勤めた歯科医院では、院長の技術にいつも圧倒されていましたね。技術だけではなく患者さんとのコミュニケーションも適切な院長のもとで、歯科医師と患者さんというよりも、人と人としての対話の大切さも習得しました。私もそんな院長のようになりたいと思いながら、歯科医師としての学びを深めてきました。患者さんに寄り添うことを大切にするという今の私のポリシーは、そんな院長の姿勢に大きく影響を受けているんです。
診療時は、どういったことを心がけているのでしょうか。

「小さい頃に怖い思いをしたから、歯医者さんに通いたくない」と話してくださる患者さんは、非常に多いんです。私もそうだったように、怖いと感じたことは頭の中に記憶として強く残ってしまいます。そういった方が歯科医院に足を運ぶのは、ものすごく勇気のいることでしょう。その勇気に感謝の気持ちを抱きながら、診療にあたっています。また、言葉には表れない気持ちのサインを見逃さないようにしています。例えば治療中、言葉では大丈夫とおっしゃっていても、足や手が小刻みに動いていると、何か痛みや気になることがあるかもしれないと、気を配るようにしています。近頃はご家族の介護で忙しく、歯科医院に通うことができない方が増えてきたように感じています。そういった患者さんの状況も配慮して、治療を短期間で終えられる環境を整えるように努めています。
培った技術を次の世代につなげ、歯科診療に還元したい
今後の展望を教えてください。

1998年に開業して26年がたちました。これまでの間大きな事故やけがもなく診療を行うことができて、本当にありがたいと感じています。これからも安全に配慮して、患者さんのお口の健康をサポートするだけではなく、私自身も健康に気をつけながら歯科医師としての務めを全うしたいと、心から思っています。私ももう60歳になることもあり、体力面でもあとどれくらい仕事を続けられるかはわかりません。そのため、後進を育てていきたいとも思っています。歯科医師は、大学を卒業して、国家試験に合格してからが本当のスタートです。日進月歩で新しい技術や研究が発表されていますので、学び続ける努力も必要です。やる気のある若い方に知識や技術を託して、より良い歯科医療業界となるよう導いていってほしいですね。
ところで、お忙しいと思いますが、新田院長の休日の過ごし方やリフレッシュ方法はありますか?
日常と違う場所に行くことが気分転換になるので、ドライブが好きです。電車やバスではなくて、自動車の運転がリフレッシュにいいんです。公共交通機関だと時間を気にする必要がありますが、自動車はガソリンさえ入っていれば、時間に縛られず自分の行きたい場所に行けますから。家族と一緒に年に1回旅行をするんです。行きたい場所を決めるのはもっぱら妻や子どもで、私は連れていくのが役目ですが、運転をして、温泉に入って、日常を離れて過ごす。それが息抜きになっていますね。
地域の患者さんに向けてメッセージをお願いします。

歯科医院は歯が痛くなってから行く所と考えている方が多いと思いますが、痛みがある時にはすでに症状が進行していることも多いものです。忙しい合間を縫って歯科医院へ向かうのは大変だと思いますが、歯が痛くなる前にお越しいただくことをお勧めしています。当院では定期検診も行っていますので、ぜひ口の中の健康のために活用してください。歯は体の一部ですから、歯を失うのは指を失うのと同じことだと思いますし、ご自身の歯を失うことが怖いと感じる患者さんの気持ちは痛いほどわかります。どうしてもできない場合もありますが、最後まで可能な範囲で、患者さんの歯を残せるよう努力しています。コンビニのような気軽さで、電話をいただいたらすぐに対応できる歯科医院をめざしています。気になる症状がありましたら、些細なことでもぜひ気軽に相談してください。