甲田 智 院長の独自取材記事
藤沢駅こう歯科 おとなとこどもの歯医者さん
(藤沢市/藤沢駅)
最終更新日:2025/08/21

藤沢駅から徒歩約4分、温かみのある内装が印象的な「藤沢駅こう歯科 おとなとこどもの歯医者さん」。甲田智院長は、やわらかく落ち着いた語り口で患者に寄り添う診療を心がけている。自身の子どもの誕生を機に小児歯科への思いが強まり、「小さい頃から歯科医院に通院することで自らの歯への意識を高めてほしい」と予防重視の診療を展開。妻がデザインしたタヌキのマスコットキャラクターの他、有名キャラクターなどが院内のあちこちに配され、歯科医院嫌いの子どもも笑顔になれる空間づくりに工夫を凝らす。CTやマイクロスコープを駆使した精密な治療で歯を保存し、再発防止にも注力。地域に根差し、患者の話をじっくり聞くことを大切にする甲田院長に、開業の経緯や診療への思いを聞いた。
(取材日2025年7月17日)
家族全員で通える地域に根差した歯科医院をめざす
子どもが生まれたことが開業のきっかけになったそうですね。

5、6年ほど開業を考えながらもなかなか踏みきれずにいたんですが、子どもが生まれて将来を考えるようになったのが大きなきっかけでした。子どもの選択肢を広げたいという思いと、自分自身ももっといろいろチャレンジしたいというタイミングが重なったのです。実際、子どもができたことで小児歯科への興味も湧いてきました。前職では大人の方への歯科治療がメインだったので、子どもの口腔ケアについて改めて勉強する必要性も感じましたし、仕事の方向性を少しシフトしたいという思いもありましたね。今思えば、子どもの誕生が私の歯科医師としての視野を広げてくれたんだと思います。
大学では根管治療を専門にされていたとお聞きしました。
鶴見大学を2008年に卒業後、そのまま大学の歯内療法科に残って約5年間、根管治療を中心に研鑽を積みました。歯内療法は歯を保存するための治療で、今でも私の診療の根幹になっています。私が医療の道に進んだのは、実は祖父の影響です。祖父が山梨で地域医療に従事する医師だったんです。小さい頃、年に数回遊びに行った時に見た祖父の姿は、地域のためにいろんな人が来て何かをしている、すごいなという印象を持っていました。大学を卒業後に患者さんの治療をするようになって、この仕事の素晴らしさを実感しました。困っている方が笑顔になる姿を見て「医療って本当に素晴らしい仕事だな」と。
藤沢で開業されたのはどのような理由からでしょうか?

妻の実家が藤沢で、妻自身も生まれてからずっと藤沢なんです。私は横浜市保土ケ谷の出身ですが、結婚して辻堂に住むようになってから、この地域の住みやすさを実感しました。開業場所を考えた時、自然とこの地域でやろうという気持ちになりました。患者さんと生活圏が近いため、プライベートで患者さんとお会いすることもあります。商業施設内にあるクリニックに勤務していた時も休みの日に患者さんに声をかけられることがありましたが、同じ生活空間を共有しているという感覚が好きなんです。今も家の周りで患者さんとよくお会いしますし、それが地域に根差した医療の醍醐味だと思っています。また、交通量の多い通りに面したこの場所なら、多くの方に気軽に来ていただけるだろうと考えました。
小児歯科と予防に力を入れ、患者の声に耳を傾ける診療
クリニック名の由来について教えてください。

クリニック名に「おとなとこどもの歯医者さん」と入れたのは、家族みんなで健康のために通ってもらえる歯科クリニックにしたかったからです。予防は子どもの頃から始めることが大切で、理想を言えば妊娠中からお母さんに通っていただき、生まれたら0歳から一緒に来ていただきたい。まだ治療はできませんが、歯科医院に慣れてもらったり、お口の癖などを見たりすることはできます。3歳までに歯科医院に連れていくと虫歯が少ないともいわれているんですよ。最近はお子さんの初診が増え、お母さんとお子さんも一緒に、というケースも増えてきました。お子さんの口の中を見て、「この子が20歳、60歳、70歳になった時にどういう生活を送るんだろう」と患者さんのお子さんの将来まで考えるようになりました。
歯を良好な状態で保つことに力を入れているのですね。
歯内療法科での経験から、歯を保存することの大切さは身に染みて理解しています。そのために3次元撮影ができるCTや、肉眼の何十倍も視野を拡大できるマイクロスコープなど、高度な機器を導入しました。これらを使うことで、より精密な診断と治療が可能になります。ただ、できるだけ削らないことも重要です。必要最小限の治療で済むよう、患者さんと相談しながら進めています。「今最小限で削ってもいいけれど、10年後にはもっと大きな治療が必要になるかもしれない」といった長期的な視点でお話しし、選択肢を提示するようにしています。何より大切なのは再発を防ぐこと。せっかく治療しても数年後にまた同じところが悪くなっては意味がありません。だからこそ精密な治療と、その後の予防ケアの両輪で患者さんの歯を守っていきたいと考えています。
診療で最も大切にしていることは何でしょうか?

できるだけ話をするというより聞くようにしています。歯科医師の常識を押しつけるのではなく、患者さんがどうなっていきたいか、どういう生活を送りたいかを聞き出すことが大切だと考えています。健康に生きたい方もいれば、審美的な面を大事にしたい方もいる。何を大事にされているのかを理解した上で、私たちができることを選択肢として提示し、一緒に考えていく。スタッフにも「なぜうちに来てくれたのか」を聞くように伝えています。歯科医院がいっぱいある中で、なぜうちを選んでくれたのか。その理由を大切にしたいんです。初診の患者さんは20代30代の若い方が多く、私の想定より若い世代が来てくださっています。きっとそれは、しっかり話を聞いて一緒に考えるというスタンスが伝わっているからかなと。伝えることの大切さは、クリニック全体で共有している価値観です。
チーム医療で支える予防歯科と患者の健康
スタッフの皆さんとの連携についてお聞かせください。

定期的に全員でのミーティングと個別の一対一のミーティングを設けています。採用面接の際は必ず私と妻、他の歯科衛生士とも話してもらい、一人で決めないようにしています。当院では妻も一緒に働いていて、彼女がデザインしたタヌキのマスコットキャラクターが院内のあちこちにいるんですよ(笑)。プルメリアの花をモチーフにした「ぷあくん」という名前なんです。「笑顔になれる場所で夢がかなう場所」というクリニックの理念のもとスタッフたちと力を合わせて日々診療に取り組んでいます。
今後の展望についてお伺いします。
今後はもっと予防にシフトしていきたいと思っています。来年あたりには栄養解析やアドバイスができるような体制を整えたいと考えています。糖尿病と歯周病の関連性も明らかになっている通り、口腔の乱れから始まる病気もあります。私は口が崩れて体が崩れるという流れを、予防的にサポートできることがあるはずだと考えています。健康な方でも、より良くなれる、維持できるために何かできることを増やしていきたい。子どもの栄養を中心に、口腔から全身の健康へアプローチしていく。そのためにも、今は勉強中ですが、しっかりと知識をアップデートしていきたいと思っています。クリニックとしても、誰でも来やすいハードルの低い場所であり続けたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

毎日笑顔で笑って過ごせることに勝るものはないと思っています。そのためには自分の健康が大切。私も人間ドックを欠かさず受けていますが、忙しい中でも一度自分の健康状態を確かめることは大切です。口の中にフォーカスはしますが、そこから体全体の健康につながることも多い。予防のスタート地点で、ある程度サポートできることがあると思っています。何か困ったことや気になる症状があれば、まだ余裕がある時にかかりつけのクリニックを見つけておくといいですよ。時間を過ぎても真摯に患者さんの治療に対応する、それが私たちの姿勢です。お子さんも大人の方も、家族みんなで通えるクリニックとして、皆さんの笑顔のお手伝いができればと思っています。