内山 直樹 院長の独自取材記事
サークルクリニック茅ヶ崎
(茅ヶ崎市/茅ケ崎駅)
最終更新日:2025/02/12

「サークルクリニック茅ヶ崎」は茅ケ崎駅からバスで約10分、市立病院(茅ケ崎市)停留所で下車。院長の内山直樹先生は、患者の意思や価値観を尊重するため、対話によるコミュニケーションを大切にし、個々の患者に合わせた柔軟な診療スタイルを持ち味としている。「医学的な知見を持ちながら、医療の選択肢を一緒に考えていく姿勢を大切にしています」と語り、病気だけにとらわれず、生活環境や社会的な状況といった背景を考慮した診療に努めている。複数の病院に通院している人の負担を減らすため、内科全般を幅広く対応する内山院長に、同院の特徴や患者への向き合い方などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2025年1月20日)
患者の生活全体を把握し、個々に合った医療を提供
まずは、医師をめざされたきっかけを教えてください。

一番大きいのは、父が医師だったことですね。父は訪問診療をしていて、家でも電話を受けたり、診療をしたりする姿をよく見ていました。それが当たり前の光景だったので、医師という職業が自然と身近に感じられたんです。それから、母方の祖父も曽祖父も医師だったので、周りに医療に携わる人が多かったのも影響していると思います。学生時代、交通事故現場に遭遇したことがあって、父がけが人を助ける姿を目の当たりにしました。その時「これは普通の人にはできないことだ」と思ったんです。自分も同じように人の役に立てる仕事をしてみたいなと感じました。
さまざまなご研鑽を積まれた中で、特に今に生かされていることはありますか?
特に今の仕事に生きているのは、東京医療センターの総合内科での経験です。総合内科は全身を診る専門家なのですが、救急の外来も含めて、基本的にはまず総合内科の医師が患者さんを診て、それから必要に応じてほかの科と連携し診療を行うというスタイルでした。その経験を通して、一つの臓器や病気だけを診るのではなく、その患者さんの生活全体を良くするために医療を行う、という考え方が自然と身につきました。また、患者さんが退院した後の生活や家族との関係にも目を向ける重要性も学びました。これらの視点は現在のベースとなっていて、単に病気を治療するだけでなく、患者さん一人ひとりの生活全体を見据えた医療を提供する姿勢につながっています。
訪問診療もされているそうですね。

はい、通院が難しくなった方には自宅で医療が受けられるように、訪問診療の体制を整えています。訪問診療では、これまでの経緯を踏まえた上で、生活環境や状況に合わせた柔軟な医療が可能です。病院に勤務していた時、どうしても自分のできることが限られていると感じていました。外来診療以外にも別の手段で患者さんや地域の医療の役に立ちたいという思いがあったので、その一環として訪問診療も行っています。そして今、この町で育った自分だからこそ、地域をつなぐハブのような存在として、何かできるのではないかとも考えています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機に医療への関心が高まったこともあり、将来的には小学校で国語や算数のように医療の授業を設けたりするのも良いかもしれません。もっと医療への理解を深める環境をつくっていきたいですね。
町に寄り添う、ちょうどいい医療
地域にとってどんな存在でありたいとお考えですか?

町に足りないものを補える存在でありたいと考えています。クリニック名のサークルの「C」は、茅ヶ崎の「C」でもあります。この町の医療で足りない部分を補っていきたいという意味も込めています。総合内科診療はあまり知られていないかもしれませんが、まず相談できる場所として、困ったときに「取りあえずここに相談してみよう」と思ってもらえるようなクリニックでありたいと考えています。それでいて、必要な場合は大きな病院に紹介したり、当院で対応できる場合は近隣の医療機関と連携しフォローしています。患者さんの状況に合わせて柔軟に対応することを心がけています。また、患者さんによって必要な医療のかたちはそれぞれです。一人ひとりに合った健康な「〇」を一緒に見つけて支えていくことが大切だと思っています。
なるほど。地域に足りない部分を補うことを軸にされているのですね。
そうですね。実際、新型コロナウイルスの感染拡大で茅ヶ崎に戻った時、心療内科の予約が全然取れず、困っている方が多かったんです。私自身は心療内科の専門家ではないんですが、それでも、まず相談できる場所として少しでも医療不足を補えればと思い、できる範囲で対応してきました。地域にもっと身近な医療を提供し、地域の方々の健康を支える存在であり続けたいと思っています。
診療方針を教えてください。

私のベースは総合内科診療なので、目の前の症状だけを見るのではなく、その人全体を診ることを大事にしています。例えば、咳で受診された場合でも、咳だけではなく、その方の生活や家族関係や、どのような環境で過ごしているのか、といった全体像を把握しながら診療を進めるようにしています。そして、医学的に正確な情報をきちんとお伝えするのは当たり前なんですが、治療法を強制することはありません。「こうしなさい」とか「なんでちゃんと薬を飲まなかったんだ」と言うこともありません。もし、決めた治療法でうまくいかない場合でも、柔軟に見直して、患者さんと一緒に次の方向性を探していくことが大事だと考えています。また、私一人だけでは気づけないこともあるので、患者さんの来院時の歩き方や会計時の様子の変化などを必要に応じてスタッフと共有し、患者さんの状態を把握するように心がけています。
総合的な診療を通して患者の価値観や人生観に寄り添う
患者さんの全体像を把握するということを重視されているのですね。

病気だけを見て治療をしても、本質的な問題が解決しないことが多いと気づいたんです。SDH(社会的健康の決定要因)という考え方がありますが、生活環境や社会的状況が健康に与える影響は大きく、例えば糖尿病の方に血糖値を下げる治療を行っても、生活環境に課題があれば根本的な改善にはつながりません。仕事が忙しくコンビニ食が中心のままだと、血糖値のコントロールを図る薬だけでは不十分です。こうした背景を見逃し、結果的に治療がうまくいかないケースも少なくありません。また、家族構成が方針に与える影響も大きいです。例えば、独居の方と家族と暮らしている方では医療的アプローチが異なります。こうした考え方のもと、医学的な観点はもちろん大事ですが、その人がどういう人生を送りたいかを共有するようにしています。一人ひとりに必要な医療は違うので、それぞれの価値観や人生観に寄り添い、その上で最適な選択を一緒に考えていきます。
患者さんとの関係性を築く上で大切にしていることは何ですか?
まず大切にしているのは話をしっかり聞くことです。患者さんの背景も含めて受け止めるようにし、診察室では医師と患者の関係が一方的にならないように配慮しています。診療では、どうしても医師が優位な立場になりがちです。そのため、患者さんが本当に伝えたいことや心の内を安心して話せないこともあると思います。当院では、患者さんとの関係が無意識のうちに不均衡にならないよう、フラットな関係を築くことを心がけています。リラックスしてお話しできるよう診察室も広めに確保するなど、医療者が優位になりすぎない、患者さんが安心して話せる空間づくりも心がけています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院では、医学的な知見を持ちながら、一緒に治療の選択肢を考えていく姿勢を大切にしています。総合内科診療をベースとするクリニックの特性を生かして、循環器、腎臓、呼吸器といった複数の通院先を一つに集約したいという方にもぜひご相談いただけたらと思います。通院が複数になることで処方される薬が多くなり、飲み合わせに注意が必要になることも少なくありません。そういった負担を軽減するために、内科全般のさまざまなご相談に対応しています。また、「今の治療が本当に自分に合っているのか」「ほかの選択肢はないか」と感じている方も、ぜひお気軽にご相談ください。