春名 一人 院長の独自取材記事
はるな歯科クリニック
(福岡市早良区/室見駅)
最終更新日:2024/10/30

2023年12月1日に開院した「はるな歯科クリニック」。院長の春名一人先生は、訪問診療をメインに研鑽を積み、その知識や経験を生かすべく開院に至ったという。それと同時に、外来では、一般的な虫歯・歯周病の治療、小児歯科などにも力を入れている。院内はバリアフリー仕様になっていて、診療台の横まで車いすが入れるほど広い造りになっているところも特徴の一つ。白と木目を基調とした落ち着いた雰囲気の同院では、どんな患者も、ゆったりとリラックスして治療を受けられそうだ。「患者さんのお口の中の状態を数値化して、わかりやすく伝えるようにしています」と、優しい笑顔で語る春名院長に、開院の経緯や訪問診療、小児歯科などについて詳しく聞いた。
(取材日2024年9月6日)
クリニックに通えない人々もしっかりケアしたい
これまでのご経歴や開院するまでの経緯をお伺いします。

福岡歯科大学卒業後、いろいろな場所で研鑽を積んできました。最初に福岡歯科大学医科歯科総合病院の医局員になった時は、一般的な歯科治療をメインにしていたんですね。病院での任期が終わり、その後大学の先輩のつてで、訪問診療をメインに行うクリニックに勤めたんです。訪問診療に携わることになって初めて知ったのが、クリニックに通院できない患者さんが多くいるということでした。その時、「クリニックに通えない患者さんは今後も増えていくだろうな」と感じました。そこで、クリニックに通えない患者さんの受け皿はもっと多いほうがいいのではないかと思い、開院を決意しました。一人ひとりの患者さんにじっくり時間をかけて診療できるため、開院して本当に良かったです。
診療方針をお聞かせください。
当院では「説得ではなく納得の治療を」ということを診療方針に掲げています。具体的には、患者さんのお口の中の乾燥状態や噛む力などを機械で測って数値化するんですね。そうすることで、ご本人やご家族にわかりやすく伝わります。もちろん私たちにとっても、治療前と治療後の数値が明確になるとわかりやすいんです。仮に患者さんが歯科医師から「前回よりも良くなってますね」と言われても、実際わからないじゃないですか。口頭だけでは本当に良くなっているのか、どこがどう変わったのかが全然伝わらないんです。なので患者さんから信頼してもらうためにも、具体的な数値を示すことが大切です。また、数値が前回よりも良くなっていれば、患者さんも治療に対してモチベーションを維持できると思います。
成人の治療について伺います。

一般歯科は虫歯や歯周病治療、入れ歯の製作・調整などを行っています。成人の患者さんは、どの年代も満遍なく来られていますね。お子さんと一緒に来られる親御さんも多いですよ。当院のキッズスペースを利用し、お子さんをそばで遊ばせながら親御さんの治療ができます。ちなみに「他院で抜歯と言われたけれど本当にその必要があるのか」といった、セカンドオピニオンのような感覚で来られる方が多いと感じています。それは患者さんの「自分の歯を残したい」という気持ちの表れだと思うので、可能な限り抜かなくて済む方法を模索します。治療に入る前の会話はもちろん、患者さんが言葉にしていない心の声を読み取り、満足いく治療につなげることが非常に重要です。
子どもの頃からクリニックに慣れておくことが大切
親が子どもの歯を守るために気をつけなければならないことは何ですか?

親御さんだけでお子さんの歯を完璧に守ることは難しいと思うんですね。なのでお子さんが小さいうちからクリニックに通わせ、慣らしておくことが重要です。そのためには、虫歯になってから連れて行くのではなく、定期的に口の中を見せに行くことを習慣づけてほしいですね。治療のためだけに通っていると、どうしても「クリニックは怖いところ」というイメージがついてしまいます。なので、最初は遊びに行くような感覚でもいいです。定期的に来てもらうとブラッシング指導もできますから。お口のトラブルが何もない状態でクリニックに行って、何も異常がなく帰ることがお子さんの歯を守ることにつながるんです。また、おうちでできる範囲でお子さんの口腔ケアをしていただきたいですね。
きれいな永久歯が生えてくるようにするにはどうすればいいのでしょう。
定期検診が特に大切です。子どもの頃に虫歯が大きくなってしまうと、最悪の場合歯の形が変わってしまうことも。そうなると歯並びにも影響するんですね。さらに、お口の中がきれいに保たれていないと、永久歯が生えてきた時に菌に侵されて、せっかくの歯がいきなりボロボロになってしまうことも考えられます。そのような事態にならないよう、永久歯が生える前から虫歯にならないような口腔環境にする必要があります。つまり、クリニックに定期的に来ていただき、お口の中を良い状態に保つことをめざすんです。乳歯はいずれ生え替わるから、虫歯になってもいいということではありません。とはいえ、お子さんが虫歯になっても親御さんはご自身を責めないでくださいね。きちんとケアをすれば大丈夫ですので、すぐに歯科医師に見せてください。
先生は父親の目線で患者さんの気持ちに寄り添っていらっしゃいますね。

そうですね。私にも小学校1年生と4年生の娘がいますから、お子さんを持つ親御さんの気持ちがわかります。子どもが虫歯にならないように、「親と同じ食器で食べさせないように」とか「食べ物をフーフーしないように」ということを聞いたことがあると思います。実際そうなんですが、あまりそのことばかりにとらわれると、親御さんがお子さんに接する時にストレスになると思うんですね。私はそのほうが良くないと思っているので、それよりも普段からお子さんの歯磨きをしっかりしてあげてほしいです。また、お子さんには「虫歯になったら歯医者さんで痛い思いするよ」というようなことは言わないようにしてほしいです。子どもにはその記憶が刷り込まれますから、どうしてもクリニックが嫌な場所になってしまいます。
患者の悩みをなんでも聞いて一緒に解決の道を見つける
どのような患者さんに来院してもらいたいですか?

歯科医師に、ご自身の要望を伝えるのが申し訳ないと思っている方ほど来ていただきたいです。「先生にこう言われたからそのまま受け入れた」という患者さんは結構多いんですね。本当はもっと言いたいことがあるのに、言えないと患者さんは納得いかないと思うんです。なので、言いたいことがたくさんあって、注文を多くしたいという患者さんはぜひ当院にいらしてください。じっくり時間をかけて話し合い、お口の悩みを解決していきましょう。話し合った上で、患者さんに納得してもらえれば私もうれしいです。
訪問診療にも対応されていますね。
はい、毎週金曜が訪問診療の日です。しっかり会話して治療方針を決めるため、一人ひとりに時間がかかりますが、患者さんと介助の方に納得してもらうために丁寧な対応を心がけています。ちなみに当院の特徴は、外来と同じような器具を持ち出し、訪問診療でもほとんどの治療に対応できるところです。訪問する患者さんは、虫歯の治療よりも入れ歯の調整や歯周病の治療を希望される場合が多く、しっかり物が食べられるお口の環境づくりをめざしています。あとは、誤嚥性肺炎予防のための処置や口腔機能の訓練も可能です。訪問時には、介助するご家族や施設のスタッフさんにも少しずつ口腔内ケアの方法をお伝えします。最終的に、歯科医師は特別な治療が必要な場合に対応し、それ以外の日常的なケアは介助する方たちができるようになるのが理想。もちろん、介助する方に一気に負担がかからないように配慮しながら、みんなで患者さんのお口の健康を守りたいですね。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

現状、患者さんへの説明は動画やイラストを使ってわかりやすくしていますが、今後は日常的に患者さんと接する際大切にしている「会話」にさらに注力したいですね。患者さんがなんでも言える雰囲気をつくった上で、当院が提供できる治療の中からベストな選択を提示していきたいです。また、「どうせ治らないだろう」などと諦めている人が来院しやすいクリニックでありたいです。いきなりのつらい治療ではなく、まずはお話からスタートします。歯が1本でも治ると気持ちが変わるものです。物がおいしく食べられたり笑顔で会話できたり、楽しみも増えます。そんな患者さんを一人でも増やしていきたいので、ぜひ一度お話ししましょう。