佐々木 憲二 院長の独自取材記事
ささき内科クリニック
(松山市/土居田駅)
最終更新日:2023/12/21

松山市空港通沿いにある「ささき内科クリニック」は、2023年9月1日に開院した。院長を務める佐々木憲二先生は、「つなぐ医療」をテーマに、人を診る医療で患者とのつながりを深め、信頼関係を築くことを大切にしている。10年にわたる離島医療の経験を生かし、内科的症状だけでなく腰痛、膝痛、ケガ、やけど、皮膚症状、アレルギー症状などに幅広く対応。地域の人々にとっての医療の窓口であるべきとの考えから、土日祝日も21時まで診療している。「ちょっと困ったとき、気軽に来られるクリニックを」と、優しさあふれる佐々木先生に、総合的な診療を行うクリニックとしての思い、医師としての初心などについてたっぷりと話を聞いた。
(取材日2023年8月17日)
夜間・土日祝日も対応。総合的な診療を行うクリニック
まず、医師になられてからのこれまでの経歴を教えていただけますか?

私は愛知県出身なのですが、愛媛大学入学を機に愛媛にやってきまして、医学部を卒業後、愛媛大学医学部附属病院第一内科に入局しました。その後、住友別子病院内科、宇和島病院内科、愛媛県立中央病院総合診療科、大洲記念病院内科に勤務し、県内の東・中・南予すべてのエリアの患者さんを診てきました。それから、何か新たな経験を積みたいと考えていた矢先、松山沖に浮かぶ中島で離島医療をやってみないかとのお誘いをいただき、なかじま中央病院内科に勤務しました。中島では10年ほど診療に携わりましたが、その東隣に位置する睦月島の診療所所長も兼務していましたので、当時は島を船で駆け巡っていました。
総合的な診療を行うクリニックとして開業しようと思われたのはなぜでしょうか。
愛媛県立中央病院時代に総合診療科で何でも屋さんの素地を形成できたというのはありますね。へき地医療に携わっている先生たちと一緒に仕事をしていましたので、そこで可能な限り幅広く診るための能力が身につきました。その後、離島医療を経験したことでより「どんな症状の患者さんにもお力になりたい」という思いが強くなり、自分が身につけてきたことを広く還元したいということで開業を決めました。人間の体ってすべてがつながっているので、痛みが出ている場所だけ治療したらいいというわけではないんですね。肩凝りだと思っていたら他の臓器に疾患があるということもありますから、局所だけでなく、総合的に患者さんを診ることを大切にしていきたいと考えています。
夜の9時まで、また土日祝日も診療されているクリニックはなかなかないと思います。

これまで培ってきた知識や技術を還元するのに、より広く、さまざまな年代の方々のニーズを満たせるようにと考えてのことです。夜間救急に行くほどではないけれど、ちょっと痛いなとか、不安だなというとき、クリニックが夜まで開いていたら仕事の帰りにもかかりやすいのではないかと思ったんです。また、普段お仕事や家事を頑張られている方が、ちょっと体調が悪いから次の休みに診てもらおうかなというときにも対応できるように、土日祝日も診療日としました。「あともう少し長く開いていたらなあ」という患者さんの思いにお応えできていたらうれしいです。またスタッフも、より受診しやすいクリニックをめざす上で、夜間や土日診療の大切さを理解してくれているんだろうと思いますので、本当にありがたいです。
「つなぐ」をテーマに、人を診る医療に注力
クリニックのコンセプトを教えてください。

「つなぐ医療」ですね。患者さんとのつながりもそうですし、見逃してはいけない症状に気づき、適切な医療につなげるということもそう。当院は医療のゲートキーパー的存在として診療していますから、さまざまな症状の患者さんが来られます。診察を行った上で、重篤な症状の場合や基幹病院に紹介する必要がある場合は、責任を持ってつなぎますという思いも含め、「つなぐ」という言葉をキーワードにしています。例えば、倦怠感は、呼吸器の病気や循環器の病気、また、おなかの調子が悪い場合、それからストレスがかかっている場合にも共通して現れる症状です。ですからどこが原因なのかをまずは受診していただいて、一緒に突き止めていく。患者さんとはそんな関係性を築いていきたいと考えています。
検査機器もかなり充実していますね。
当院では、携帯型心電計を身に着け、日常生活中の心電図を長期間にわたり記録することで不整脈などを解析するホルター心電図や、AI補助システムを活用した先進的なエックス線検査、エコー検査、心電図検査、骨密度測定など、さまざまな症状・疾患に対応した検査機器をそろえています。例えば、心疾患など重大な病気の疑いがある患者さんが来られた場合、当院でホルター心電図の検査ができれば、他院へ紹介する必要があるかないかの見極めができます。患者さんの正しい診療情報を専門の先生に提供するため、また患者さんの現状を数値としてお見せすることで、治療のモチベーションアップにつなげるためにも検査は重視しています。
診療において大切にしていることを教えてください。

医療は、患者さんご本人だけでなくご家族、さらには社会的な背景なども踏まえた上で存在するものだと考えています。その方を取り巻く環境や経済的な事情もあるわけですから、ただ医療を提供すればいいというものではありません。それこそ5円、10円に命を削って生きておられる方もいます。以前、治療を終えた患者さんから「先生ありがとな」と、くしゃくしゃの千円札とともにお礼を言っていただいたことがありました。大切なお金を支払ってということですから、それだけ重い仕事をしているんだなと、その方に気づかせてもらいました。病気の背景には患者さんの人生があり、私たち医師の仕事は、望む望まざるに関わらず、人の人生に介入していくことが多いですから、やはり病気だけを診るのではなく人を診るというのが私の信条です。
初心を忘れることなく、人を思う気持ちを大切に
先生は、本当に患者さん目線に立っていらっしゃいますね。

医師になったときは、みんな一緒だと思うんですよ。みんな誰かを助けたいだとか、そんな動機で医師を志しているんじゃないかと。いつの間にかそれを忘れてしまって……ということもあるかもしれませんが、もともとはみんなそうだったはずなんですよ。だから決して特別なことをしているわけではなくて、患者さんのことを考えたら当たり前のことではあるんです。いわゆる初心ですね、医師になった時のことをそのまま続けているだけなんです。
そんな先生が医師を志したきっかけも気になります。
小学2年生の時に、アルベルト・シュヴァイツァー博士の伝記を読んで、僕はこうなるんだと思ったんです。それまでお医者さんになりたいと思ったことはなかったんですが、伝記を読んだとき、自然と僕はこういう仕事をするんだなって思いました。その後は成長するにつれ、ミュージシャンになりたいとか、いろんな夢を思い描いた時期もありましたが、気づいたらその時の気持ちのまま、何も変わっていなかったですね。たまたま手に取ったシュヴァイツァー博士の伝記がきっかけですから、本当に人生とは不思議なものです。
では最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

地域の皆さんに便利に利用していただくことができればいいなと考えています。一番は、地域の方々に貢献できるように、そして皆さんに頼りにしていただけるようなクリニックをめざしていきたいですね。当院はまだ始まったばかり。これからこの地域に根差し、成長していけたらと思っています。最後に、メッセージとしては、些細なことでも本当に気軽に来ていただけたらということ、これに尽きます。原因のわからない疲れや倦怠感など「こんなことで行っていいのかな」と思わず、ちょっとでも不安を感じたら、とりあえず来ていただきたいですね。それで何か病気が見つかったらすぐに治療に入ることができますし、何もなかったら「よかったね」と安心できますから。そんなふうに、街のクリニックとして、皆さんの健康づくりのお役に立てたらうれしいです。