白濱 龍太郎 院長の独自取材記事
RESM新東京 スリープメディカルケアクリニック
(大田区/大森駅)
最終更新日:2023/12/15

大森駅近くに「RESM新東京 スリープメディカルケアクリニック」を開院した白濱龍太郎院長は、日本では睡眠が軽視されていることに危機感を覚え、睡眠医療に取り組んできた医師だ。2013年に新横浜に開院した「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルクリニック」に多くの患者が訪れ、近隣の病院やクリニックからの紹介も増え、睡眠医療の必要性を改めて実感して東京での開院を決意したという。大森を選んだのは、京浜工業地帯で働く人々の健康を睡眠という観点から支え、また、遠方から訪れる患者の利便性を考えてのことから。「睡眠障害が突然死につながることもある。睡眠の大切さをもっと知ってほしい」と講演や書籍の出版、企業と共同で行うプロジェクトなど、院外での活動にも積極的に取り組む白濱院長に話を聞いた。
(取材日2023年11月30日)
睡眠障害の専門的な診療を、身近なクリニックで提供
この地に開院された経緯を教えてください。

2013年に新横浜に開院した「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルクリニック」に近隣の方だけでなく、東京を含め遠方からも患者さんが来られるようになり、東京にも拠点が必要だと考えたのが、こちらを開院した大きな理由です。大森を選んだのは、京浜工業地帯の職業ドライバーをはじめ、この地域で働く方々に対して睡眠に関する医療を提供したいということと、また、遠方から来られる方も多いと予想されるので、新幹線や飛行機とのアクセスの良いところで開院したいと考えたのが理由です。
診療面にはどのような特徴がありますか。
睡眠に関する医療を提供する専門施設としての診療をコンセプトに、睡眠時無呼吸症候群とその周辺の生活習慣病、不眠症・過眠症、ナルコレプシーやレム睡眠時行動障害、むずむず脚症候群など睡眠障害に分類されるすべての疾患を対象としています。特に力を入れているのは、事故を誘発するとして社会問題にもなっている職業ドライバーの方の睡眠障害に対する診療です。また呼吸器内科、循環器内科の医師が在籍しており、お互いに横につながりを持つことで、診療の幅を広げて検査や治療を効率的に行っています。さらに東邦大学大森病院や、東京医科歯科大学病院の医師の診療日も設けて、連携体制も整えています。
どうして睡眠障害に取り組まれるようになったのですか。

睡眠障害は長く続けば脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす要因になるとも考えられ、うつなど精神的な病気にもつながる可能性があります。睡眠時無呼吸症候群などにひもづく突然死が何年後かに起きるという確率は、がんの死亡率とあまり変わらないという報告もあります。現代社会において、睡眠障害はとても重視するべき分野であるにもかかわらず、大学病院などでも専門的に診るところはまだ少ないことから、診療の拠点になるクリニックが必要だと考え、今に至ります。
企業とも連携し睡眠時無呼吸症候群の検査や治療に注力
睡眠時無呼吸症候群について教えてください。

重症の睡眠時無呼吸症候群の場合、エベレスト山頂に酸素ボンベなしで滞在するのと同程度まで、血中酸素量が低下します。毎晩そうした状況を繰り返せば血管や心臓に過度の負担がかかり、結果的に病気を引き起すことになりやすいのです。しかも日本人は欧米人に比べて顎が小さく奥まっている人が多い、鼻が高くない、首が短くて太い、などの条件から標準体重でも、この疾患になりやすいことがわかっています。また中年男性に多い印象がありますが、閉経後の女性は、体内の調節気管が変化して睡眠時無呼吸症候群になりやすいのです。そのほか現代の子どもは顎が小さくなる傾向にあるため、扁桃腺肥大と重なってリスクが高まります。つまり、体格や性別、年齢に関わらず、注意が必要な病気なのです。
診療の流れを教えてください。
まず、患者さんの悩みや症状をお聞きしてから、必要と思われる検査を行います。自宅で行える簡易検査としては、パルスオキシメーターという機器をつけて、血中の酸素濃度と脈拍数を取り、睡眠中の呼吸状態を調べるものがあります。入院しての検査としては、睡眠状態をより詳細に調べるための終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)、ナルコレプシーや日中の眠気を評価するための睡眠潜時反復検査(MSLT)があり、それらの検査結果をもとに、専門の医師が診断を行い、治療方針を決定します。これらの検査は保険診療です。また当院では、ホテルのような検査用個室を用意していますので、快適に受けていただけると思います。
診断後は、どのような治療を行うのですか。

症状や進行度に合わせて、マウスピースを使った治療やCPAPという治療を行います。重い睡眠時無呼吸症候群と診断された方でもでCPAPで改善がめざせます。CPAPは一度つけたら使い続けないといけないと思われて、装着をためらう方もいらっしゃいますが、早く外せるよう睡眠時無呼吸症候群の原因にアプローチすることが大事です。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病とも関わりが深いことがわかっていますので、当院では食事や運動など生活習慣を改善するための方法をご提案するなど、患者さん一人ひとりに合わせたサポートを行っています。
企業との連携にも力を入れていると聞きました。
そうです。睡眠時無呼吸症候群は、眠気のために仕事の能率低下や、交通事故・産業事故を誘発する恐れのある病気ですから、企業にとっても従業員の健康管理として重要な問題となります。そこで当院では企業と連携して、職業ドライバーの方に向けた、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査にも対応しています。また、ビジネスホテルと連携して、宿泊者に睡眠検査機器を貸し出し、それをつけて眠ってもらい、その結果を解析しフィードバックするプロジェクトを行っています。いびきや睡眠時無呼吸症候群が気になっていても、受診するほどではないという方に、出張でホテルに泊まるついでに気軽に受けていただければと思っています。
命と結びつく睡眠の重要性を啓発するため多角的に活動
診療以外にもさまざまな活動をされているようですね。

しっかりとした根拠に基づく情報発信をすることで、睡眠の大切さを一般の方たちにもっと知ってほしいと考えて、睡眠に関わる事業や、睡眠時無呼吸症候群を中心とする健康管理につながる事業を進めています。また、睡眠障害に伴う事故の防止にも取り組み、講演活動や書籍の執筆、省庁が関係するような会議にも参加しています。また企業との共同プロジェクトとして、IT企業と連携した睡眠ツール、睡眠の質を上げるための食品や衣類、寝具などの開発にも関わっています。
今後に向けて、どのような展望がありますか。
睡眠時無呼吸症候群は、さまざまな他の疾患や突然死につながる恐れもある病気ですので、それを未然に防ぐためにも、睡眠についての社会的な意識を高めていきたいと考えています。専門的な分野ですから、近隣の病院やクリニックの先生方にも気軽に患者さんをご紹介いただいて、当院の検査や治療をうまく活用していただきたいですね。特に生活習慣病を多く診療されている地域のクリニックとは、患者さんのメリットを考えた診診連携を積極的に展開したいと考えています。横浜院との連携体制も整備し、医師や臨床検査技師の交流も含めて連携していく予定です。また、遠隔診療の行いやすい領域でもあるので、オンライン診療も積極的に導入し、オンライン診療と入院検査を組み合わせて、多忙な方にも取り組みやすい診療体制を整えて、早期発見、早期治療を実現したいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

日本での睡眠に関する医療は、とても重要であるのに遅れている分野です。睡眠は人間にとってスマートフォンの充電のようなもので、睡眠不足とは充電されていない状態です。睡眠は決して無駄な時間ではありません。「なんだか体調が優れない」と感じた時は、ぜひ生活の基本である睡眠について見直してください。私は、職業ドライバーなど睡眠の問題が注目されがちな方だけでなく、睡眠時無呼吸症候群でパフォーマンスや代謝が落ちている一般の方、睡眠不足の方々を救いたい、お役に立ちたいと考えています。特に、日本女性は仕事や育児、介護などによる睡眠不足が指摘されています。閉経後は、ホルモンが変化して、睡眠時無呼吸症候群のリスクがさらに高まります。生理周期で過剰な眠気を覚える方や、不眠症も含めて、睡眠についての悩みや症状はぜひ相談してください。