濱口 直彦 院長、濱口 美香 副院長の独自取材記事
はまぐち呼吸器・内科クリニック
(松山市/鷹ノ子駅)
最終更新日:2025/11/14
2023年8月、松山市鷹子町に開院した「はまぐち呼吸器・内科クリニック」。呼吸器内科専門の濱口直彦院長と循環器内科専門の濱口美香副院長が夫婦で運営している。呼吸器と循環器、2つの専門領域を柱に、喘息やCOPD、息切れ、動悸など多様な症状に対応。院内にはCTや呼吸機能検査装置を備え、適切な診断と丁寧な説明で、患者とともに治療を進めることを重視している。感染症対策や動線設計にも工夫を凝らし、安心して受診できる空間づくりにも余念がない。さらに、急性疾患から慢性疾患、生活習慣病まで幅広く診ることで、日常の健康管理から専門性を要する治療までを一貫してサポート。基幹病院での経験を生かし、基幹病院とかかりつけクリニックの間の存在をめざす2人に、診療の特徴や今後の展望などを聞いた。
(取材日2025年10月14日)
地域と専門医療の橋渡し役を担う
開院のきっかけを教えてください。

【直彦院長】基幹病院で呼吸器内科の診療を続ける中で、「地域に患者さんを返したいのに、受け皿がない」と、感じることが多くありました。退院後も安心して通える場所をつくりたいという思いから、当院を開きました。基幹病院の延長線上で、外来の継続治療やフォローアップを行える体制を整えています。地域の医療機関と連携し、必要に応じて紹介・逆紹介をスムーズに行う橋渡し役のような立ち位置を意識しています。
【美香副院長】循環器内科を担当する立場からも、呼吸と心臓は密接に関わっています。「息が苦しい」と訴える方の中には、呼吸器ではなく心臓が原因の方もいます。その両面を一度に診られる環境をつくることが、患者さんにとって大きな安心につながると思いました。
ロゴマークや院内設計で工夫された点はありますか?
【美香副院長】ロゴマークは「はまぐち」の頭文字である「h」をモチーフに、鳥が羽を休める姿をイメージしました。安心して立ち寄れる空間を象徴するデザインです。清潔感だけでなく、患者さんが「ここに来ると少しほっとする」と思える雰囲気を大切にしています。
【直彦院長】呼吸器疾患を扱う上で、感染症対策は最優先です。院内で発熱者専用の外来と通常の外来を明確に分け、動線が交わらないように設計しました。待合スペースはできるだけ広く取り、自然光を多く取り入れています。白を基調に木の素材を合わせることで、医療施設らしさよりも「安心できる空間」に近づけました。また、CTや検査室の配置も患者さんの移動距離を最小限にするよう工夫しています。検査から説明までをできる限り院内で完結させることを大切にしています。
設備面の特徴について教えてください。

【直彦院長】院内にCTや呼吸機能検査機器を備えています。適切な診断を行うためには、問診と画像と検査値が必要です。患者さんにも結果を一緒に見てもらい、自分の状態を理解してもらうことを重視しています。呼吸機能検査では、喘息、COPDや間質性肺炎の経過を客観的に評価できるため、治療の有用性を実感しやすいのも利点です。こうした見える診療が、治療意欲の維持にもつながると感じています。
【美香副院長】循環器の視点からも補完的に診ることができます。特に息切れや倦怠感のような症状では、呼吸器・循環器どちらにも原因が潜むため、機器の情報が連携を後押ししてくれています。
呼吸器の専門性で「見える診療」を
こちらの患者さんの症状で、最も多いものは何ですか?

【直彦院長】一番多いのは喘息です。年齢層は幅広く、40代前後の働き盛り世代も多く来院されています。「咳が長引くけれど放っていた」という方も少なくありません。咳が続くのを体質と思い込んでいるケースもあり、慢性咳嗽の中に喘息が隠れていることもあります。治療では吸入療法を中心に、必要に応じて生物学的製剤も使用します。最終的には薬を減らし、やめることを目標に伴走しています。基幹病院ではどうしても重症例が中心となるのですが、クリニックでは初期から重症まで一貫して診ることができる点も強みだと認識しています。
以前と比べて、喘息治療についての考え方は変化しているのでしょうか?
【直彦院長】かつて喘息は「治らない病気」「一生付き合っていく病気」とされていましたが、今は寛解をめざす時代になっています。炎症をコントロールし、発作のない期間を維持できれば、治療の終了も視野に入ります。私は1年間安定した状態が続いたら薬を減らし、5年間再発がなければ治癒と考えます。これは世界的にも注目されている新しい概念で、患者さんにとって希望を持てる指標です。治療のゴールを明確にすることで、患者さん自身の意欲や生活の質の向上にもつながると感じています。
小児の診療についてはどうされていますか?

【直彦院長】小児科から成人科への移行期にある高校生は、引き継ぎの役割を意識して診療していますが、基本的には成人を診療対象とさせていただいています。小児喘息は治療指針や薬の使い方が成人とは異なり、小児科での専門診療が望ましいためです。線引きを明確にすることで、診療の質を保つことを心がけています。専門性を維持することは信頼関係を継続することにもつながるため、当院としてはこの立ち位置を守ることが使命だと考えています。
信頼関係を築きながら、病気だけでなく人を診る
どんなときに受診すれば良いのでしょうか?

【直彦院長】「咳が3週間以上続く」「夜になると息苦しい」「痰が増えた」といった症状があるときには、早めの受診をお勧めします。年齢や体質の問題だと誤解しながら慢性的な咳を我慢している方は意外と多く、早期に診ることで重症化を防ぐことも望めます。また、息切れの背景には肺だけでなく心臓の問題が隠れていることもあります。必要に応じて循環器の検査も行い、原因をしっかりと突き止めていきます。紹介状を持参された方はスムーズに受診可能です。また、必要に応じて近隣の病院・診療所と紹介・逆紹介を行っています。
印象に残っている患者さんのエピソードはありますか?
【直彦院長】長年診ている患者さんが、薬を減らしても安定した状態を保てるようつなげられたなら、本当にうれしいでしょうね。診療の原点は、病気だけではなく人を診ることです。呼吸器疾患は長期にわたる経過観察が必要となるため、10年以上のお付き合いになるケースもあります。また、呼吸器内科はどうしても人が亡くなることが多い分野で、治療を尽くしても助けられない場面が多数存在します。そんな中でも勤務医時代に、亡くなられた患者さんのご家族から「最後まで診てもらって良かった」とお言葉をいただいた時は、医師としての責任とやりがいを強く感じました。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

【直彦院長】今後は、基幹病院と地域のクリニックがより連携できる仕組みづくりを強化していきたいと考えています。当院の役割は「入院機能のない専門的な外来」として、外来医療に特化することです。必要に応じて基幹病院に戻すなどの循環を円滑にできることが、患者さんの安心にもつながります。また、在宅酸素療法など在宅医療にも力を入れ、患者さんの生活に寄り添う医療を続けていきたいと考えています。
【美香副院長】咳が長引く、息苦しい、胸が重たいなどの症状があるときは、「もう少し様子を見よう」と思わずに、早めに受診していただきたいです。呼吸器や循環器系の病気は、初期の段階では風邪と区別がつきにくいことも多く、重くなるまで我慢してしまう方が少なくありません。何でも構いませんので、生活の中で少しでも違和感を覚えたら、相談してもらえたらと思います。

