天本 藤緒 院長の独自取材記事
シーズンズ神奈川リウマチクリニック
(横浜市港北区/新横浜駅)
最終更新日:2025/05/13

さまざまな路線が乗り入れる新横浜駅から徒歩1分。幹線道路を挟んで駅向かいに立つビルの7階に「シーズンズ神奈川リウマチクリニック」がある。院長の天本藤緒先生は、日本整形外科学会整形外科専門医および日本リウマチ学会リウマチ専門医の資格を持つ。ルーツは整形外科だが、リウマチの予防や治療中の患者にも適した食事についても造詣が深く、同院のホームページでも情報を発信している。喫煙がもたらす悪影響を説くなど、通院を希望する患者には禁煙を強く求めているが、話す口調はとても穏やかだ。長い間リウマチの治療に携わってきた天本院長に、リウマチの種類や治療の流れ、同院の特徴、そして予防としてぜひ取り入れたい食生活などについて聞いた。
(取材日2025年4月3日)
整形外科と内科の医師によるダブルチェック体制
リウマチはどのような疾患ですか?

リウマチ発症の約50%は遺伝子が原因といわれ、親がリウマチだと子どもは通常より4~5倍発症しやすくなります。発症の確率は女性なら50人に1人、男性で200人に1人と、女性に多いことが特徴です。リウマチといってもさまざまで、一過性の軽いものだと数年で治療が終わることがありますが、そうでないものは5年、10年と長期間の治療が必要になります。女性はホルモンの関係で40歳を過ぎたあたりから軽いリウマチの症状が出やすくなるので、これを含めると50人に1人どころではなく、10人に1人ぐらいの割合になるのではないかと思います。腱鞘炎を起こしやすくなり、手首、肘、肩、首などに痛みが出て、特に肘の内側の骨が出っ張っている部分に痛みを感じる方が多いです。
関節に痛みを感じたらどうすれば良いですか?
関節に1箇所でも痛みが出たらクリニックに足を運び、血液検査や超音波検査を受けてください。健康診断でリウマチ因子の数値が基準値を超えた方も同様です。血液検査をして、リウマチ因子の数値が低ければ、いずれ数値が上がる可能性を考えて心構えをしておくべきです。一方、リウマチ因子の数値が高く、抗CCP抗体検査という血液検査でも高い数値が出ると、本格的なリウマチであると考えられます。仮に今症状が軽くても、その先のことは予測がつくので、対処するために投薬を始めることができます。
リウマチの診療に関して、こちらのクリニックの強みは何でしょうか?

このクリニックで整形外科と内科の領域を診療できることです。整形外科出身でリウマチを専門とする私と、膠原病内科を専門とする原田茉莉子先生の2人で1人の患者さんを診ていきます。リウマチの治療は長期間にわたることが多いので、その間に患者さんが風邪を引いたり、こじらせて肺炎になったり、血圧が高くなったりすることがあります。リウマチの診察と並行して別のトラブルも一緒に対処できることは、患者さんのメリットになると思います。また、このダブルチェックの体制は、リウマチ以外の膠原病を見逃さないことや、リウマチとそうではない関節の病気とを判別することに役立っています。
膠原病内科を専門とする原田先生は、どのような方ですか?
膠原病に詳しいリウマチ専門医です。妊娠中は服用できる薬とそうでない薬があり、そうした診療の経験が豊富なので、妊娠や出産を控えた若い女性のリウマチを担当しています。また、超音波検査のエキスパートでもあります。例えば、1ヵ所だけどうしても痛みが取れない場合、薬を増やす と全身に影響する副作用のリスクが上がってしまうので、局所治療といって痛みのある関節に注射 をします。その際、事前に超音波で患部を確認しなければいけません。超音波検査は、リウマチの診断の他、こうした特殊治療でも行います。
通院やコスト面でも患者を支える
治療で大切なことは何ですか?

早期発見と早期治療です。遺伝子が主な原因でも遺伝子治療はできませんから、できることは炎症を抑えることです。炎症の「炎」の字には「火」という漢字が含まれていますが、火は小さいうちはバケツの水1杯で消せるけれど、広がると大量の水がないと消すことはできません。同じように、早く発見すれば、軽いリウマチなら進行を抑えるために短期間で少しの薬で済みやすいです。本格的なリウマチであれば早く投薬して治療を進めていくべきです。
どんな患者さんが多く通院されていますか?
リウマチの患者さんが95%です。初診では、リウマチと診断されて治療しているけれど痛みが取れず「このままで良いのか」と相談に訪れる方が一番多いでしょうか。あとは、リウマチの恐れがあったりリウマチと診断されたりして、改めて診断を受けたいという方です。ほとんどが神奈川の方ですが、新幹線を利用できることもあり、静岡の方やたまに名古屋、大阪、京都から訪れる方もいらっしゃいます。
治療期間が長いと通院が大変ですが、患者さんの利便性のために工夫していることはありますか?

薬の副作用をチェックするために血液検査を行うので、定期的な通院が必要になります。当院では患者さんの状態が安定したら10週間おきの通院にしていますが、これは他の病院と比べて少ないほうかと思います。また、検査を必要としない場合はオンライン診療が可能です。オンライン診療で通院を大分減らすことができていますし、実際に需要は高いと感じています。
治療に関して意識していることは何ですか?
コストです。リウマチにはバイオ製剤といって注射薬がたくさん開発されており、どれも良い薬ではありますが、まだまだ費用が高いのです。長い間治療を続ける患者さんにとって、月々の薬代は非常に重要な問題です。ですから有用な薬で、長い間使われていて安全性に配慮でき、なおかつコストパフォーマンスの良いものを選ぶことを意識しています。
免疫システムを整えるための食生活を推奨
リウマチを予防する方法はありますか?

これをやれば必ず防げるという方法はありませんし、どんなに健康的な生活を送っていても発症することはあります。しかし、発症を防いだり、発症しても悪化を防いだりすることに役立つ努力目標はあり、患者さんにお伝えしています。簡単に言いますと、リウマチは免疫が過剰に働いてしまう病気なので、免疫システムを良い状態に保つことが大切です。そして免疫細胞の70%くらいは腸の中にあるんです。腸は食べ物を消化して吸収するだけの器官ではなく、免疫に関係する大事な器官なんですよ。そのためには自然なもの、体に良い物を取り入れることが大切です。今は合成食品が増えていて、保存できる食品には添加物が含まれます。それらは免疫をかく乱する場合があるので、調理済みのものではなく、できるだけ材料を買って自分で調理し、添加物の摂取を抑えることをお勧めしています。
特に意識すべき栄養素はありますか?
食物繊維は、さまざまな食材からバランスよく摂取することをおすすめします。ごぼうや海藻などに多く含まれ、「不溶性」と「水溶性」の2種類があります。不溶性食物繊維は水分を吸って膨らみ、腸を刺激して便通を促す働きがあります。一方、水溶性食物繊維は、腸内でコレステロールなどを吸着して体外に排出する他、腸内細菌のエサにもなります。これにより、腸内で短鎖脂肪酸(SCFA)という成分がつくられます。短鎖脂肪酸は、腸のエネルギー源となるだけでなく、腸内の免疫細胞の働きを助け、免疫システムを正常に保つ上で重要な役割を果たします。ただし、短鎖脂肪酸そのものを食品から取ることは難しいため、エサとなる水溶性食物繊維を日々の食事からしっかりと摂取し、腸内で産生させることが大切です。こうした食生活を意識することで、たとえリウマチの発症を完全に防げなかったとしても、がんや心臓病などの生活習慣病の予防に役立ちます。
では最後に、今後の目標を教えてください。

2006年に東京に「シーズンズ東京リウマチクリニック」を、2023年に新横浜で当院を開業したので、独立して20年近くになります。東京で開業する前は関東労災病院に勤めていて、当時診ていた患者さんの中には今も私のクリニックに通院してくださっている方もいます。長い付き合いの患者さんから感謝されることがあると、医者冥利に尽きますね。リウマチは若くても発症するので、当院には10代から80代までさまざまな年齢層の患者さんがいて、私より若い患者さんが増えてきていますが、90歳になるまでここで診察を続けていきたいと思っています。