平山 大雅 院長の独自取材記事
山本メディカル逗葉メモリークリニック
(逗子市/逗子駅)
最終更新日:2023/11/10

逗子市と葉山町の地域を一体的に診ることをめざし、逗葉の名称を用いた「山本メディカル逗葉メモリークリニック」。認知症の患者や物忘れなどで認知症の不安がある地域住民などを対象に、適切な診断と予防・治療に努めている。また、認知症と関係が深いとされるうつ病やうつ症状にも対応し、早期から予防につなげる役割も担っている。平山大雅院長は「認知症の方や軽度の認知障害の方をご自宅で抱え込まず、早めに専門家に相談してほしい」と話す。東洋医学の観点も含めて心と体を総合的に診るという同院で、診療の特徴や平山院長の認知症治療への思いなどを詳しく聞いた。
(取材日2023年10月11日)
逗子・葉山を対象に認知症やうつ病を専門に診療
クリニックの特徴をご紹介ください。

当院は60代またはそれ以上で認知症や軽度認知機能障害(MCI)が疑われる方、物忘れが多くなって不安な方のほか、40代以上でうつ症状や不眠で悩まれている方などを対象にした専門のクリニックです。病気の進み具合に合わせて、認知症の予防、早期発見、重症化の防止と幅広く対応できる点が特徴の一つです。また、うつ症状や不眠は、現在の生活に支障が出るばかりでなく、生活習慣病や不活発な生活パターンなどと並んで、認知症のリスク因子とも考えられています。加えて認知症の症状としてうつ病が現れることもあり、認知症と密接に関係しているといえるでしょう。このほか、認知症の方を介護しているご家族がうつ病になってしまうケースも見られます。そのため、うつ病・うつ症状、不眠症も認知症とあわせて対応すべきと考え、当院ではうつと不眠の外来も設けています。
クリニック名の由来や開院のきっかけを教えてください。
クリニック名を「逗葉」としたのは、逗子市と葉山町を一体的に診ていく方針だからです。この中には昔からお住まいの方が多いエリアもあり、高齢化も進んでいるでしょう。近くの医療機関より東京都内の大きな病院に行く方もおられるようですが、通院の大変さや予約の取りづらさなどを考えると、もっと近くで気軽に受診できる当院のようなクリニックが必要なのではと思いました。一方で、認知症が疑われる方や認知症になった方を、ご自宅だけで面倒を見ようとされるご家族も心配です。場合によっては認知症に24時間対応しなくてはならず、ご家族が疲弊するケースは多くあります。クリニックでの早期治療、介護サービスの利用など、必要なときは専門家に頼ることが認知症の介護をうまく続けるポイントなんです。
物忘れが増えて不安なときはすぐ受診したほうがいいのですか?

年相応の物忘れなのか、軽度の認知機能低下が始まったMCIなのか、そして認知症になっているのかを知るためにも、早めの受診をお勧めします。単なる物忘れなら安心できますし、認知症の予防につながる生活面のアドバイスなども当院では行っています。MCIと思われる場合は運動や機能低下を補うためのトレーニングをご提案します。また、現在一般的に使われている認知症の薬は症状の進行を遅らせるのが目的で、根本的な治療が目的ではありません。そうした薬を使う場合も、早期のほうが効果が期待できるはずです。
一人ひとり異なる認知症患者にきめ細かく対応
認知症の方への対応ではどのようなことを大切にされていますか?

認知症というのは病名ではなく、加齢や病気をはじめ多様な要因で認知機能が低下して、生活に支障が出ている状態を指します。このため、認知症の患者さんへの対応は一人ひとり異なりますし、認知症予防も同様です。当院ではそれぞれのケースに応じたテーラーメイドの診療を目標に、こまやかな見立てと患者さんお一人お一人に応じた治療ができるような選択肢をご用意しています。私は医師になる前から東洋医学的な観点での健康づくりに興味があり、当院でも認知症の方、その前段階の方、うつ病・うつ症状の方に対しても心と体を一体的に診ることを大切にしています。状態によっては漢方薬が適している場合もあり、個別性の高い治療のために東洋医学の知識を学んでおいて良かったと思います。
認知症の方のご家族とのコミュニケーションも重視されていると伺いました。
ご家族とのコミュニケーションをとるのは、患者さんのご自宅での様子を詳しく伺うという目的があります。ご家族との個別面談により、ご本人の前では言えなかった問題行動などを聞けることもあるためです。また、介護をしている方は気を張っているせいか、どうしてもご自身の不調に気づきにくく、知らないうちに介護うつになっていることもあります。うつ病は認知症リスクを高める可能性がありますから、放っておくと「老老介護」でなく「認認介護」になりかねません。実際、お話を伺っていると「実は自分も最近物忘れが増えた」などと打ち明けられることもあります。当院でうつ病・うつ症状を診るのは認知症の早期予防が主な目的でしたが、それがご家族のサポートにも役立っているんです。
認知症になりにくい生活について教えてください。

まだ認知症になる可能性が低い、いわば青信号の方や少し認知機能の低下が始まった黄信号の方などは、有酸素運動や筋力トレーニングなどの運動習慣をつけることが大事です。週2〜3回以上、30分以上の運動をお勧めしています。また、認知症の症状が進んだ方も含めて食事にも気を配りましょう。例えば、当院では、野菜を多く食べること、古くなった油を使った揚げ物など健康に悪影響があるといわれる食べ物を避けること、必要な方は緩めの糖質制限をすることなどはよくお話ししています。今後は認知症予防の公開講座なども開催して、広く地域の方に向けて健康づくりに役立つ情報を発信したいと考えています。
人生の終わりまで豊かなヒストリーを紡げるように
どのようなきっかけで医師をめざされたのですか?

私は大阪府北部の都市で育ちましたが、家族が病気がちで病院に通うことも多く、小さい頃から健康への関心は高かったと思います。高校卒業後は、体と心を一体に診る東洋医学的な視点から人の健康を支える仕事をしたいと考え、専門学校の柔道整復科に入学して、その後は鍼灸師の専門学校に行く予定でした。ただ、柔道整復の現場実習に出た際、自分のイメージとかなりのずれを感じ、進路を考え直して医学部への進学を決意したんです。もちろん東洋医学的な見方はその後も私のベースにあり、神戸大学医学部卒業後も「心と体はつながっている」という観点で患者さんにアプローチする心療内科の医局に入局しました。さらに病院の精神科で勤務しながら、別の病院の内科で非常勤として勤め、医療現場で心体両面の診療について経験を積んできました。
では認知症やうつ病の患者さんのご家族が注意すべきことはありますか?
最近は理解も進みつつあると思うのですが、うつ病や不眠は単に気の持ちようで良くなる病気ではありません。生活面でストレスが続くなど環境の影響も大きく、何とか仕事を続けるように励ますことは、疲労骨折したスポーツ選手に根性で練習しろと言うようなものです。まずはクリニックでメンタルケアを受けながら、体や環境の問題に対応していき、時間をかけて回復を待つのが適切です。認知症の方のご家族の場合は、ご自宅で何とかしようとして、専門家に頼るのが遅れることもしばしば。ギリギリまで踏ん張り、どうしようもなくなって施設に入れてしまうのは、ご本人にもご家族にも望ましい結果とは言えないのではないでしょうか。当院のような身近なクリニックにご相談いただき、家族、医療、介護で手分けをして対応していくことをお勧めします。
最後に、地域の方にメッセージをお願いします。

認知症になった方は、何でも忘れたり性格が変わったりするとよく言われます。ただ、患者さんによっては記憶もある程度残り、その人らしさや品性といった部分があまり失われないこともあるのです。これには適切な環境やご家族の対応など、さまざまな要因が関係しているはずで、当院も医療の面からそうした患者さんを増やすお手伝いができればと考えています。当院は認知症の予防や早期の防止策も考慮し、さまざまな状態やニーズに対応できるように選択肢をご用意しています。もの忘れやうつが心配な方は、一度ご相談いただければと思います。