症状に乏しく失明に至る緑内障
40歳を過ぎたら定期検診を
つじ眼科
(久留米市/西鉄久留米駅)
最終更新日:2024/11/12


- 自由診療
日本人の40歳以上の20人に1人が発症するといわれる緑内障。白内障と違い、緑内障は治療しても視機能の改善は得られず、最終的には失明に至る病気だ。「だからこそ早期発見が重要です」と、「つじ眼科」の辻拓也院長は力を込める。辻院長は久留米大学病院で緑内障外来の責任者を担いながら、眼科領域の臨床、研究と後進の育成に情熱を注いできたスペシャリスト。開院後も、緑内障で失明する人を一人でも多く救うべく、経験値を生かした診療に努める。医師がいかに早期介入し、患者自身が治療を持続できるか否かで、数年先の生活が一変するため、どんな主訴であっても様々な可能性を疑い、クリアにするのが同院の診療スタイルだ。そこで、緑内障治療の専門家である辻院長に、緑内障の原因や専門クリニックならではの診療フローについて詳しく聞いた。
(取材日2024年3月6日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q緑内障はどのような病気ですか?
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A
目の中には房水という透明の液体が循環しています。その房水を排出する排水溝の役割を担う部分が目詰まりを起こし、房水が眼球内にたまると眼圧が上がって眼球がパンパンになります。そして、目の中にあるカメラのフィルムにあたる網膜の神経が圧迫され、視野が徐々に欠けていき、最終的には失明に至ります。これが緑内障のメカニズムです。緑内障は自覚症状に乏しく、何らかの症状を感じた時は病状がかなり進行しています。視神経は死滅すると再生できないため、緑内障を発症すると、残念ながら元の状態に戻すことはできません。このことからも、症状が出る前の早期発見・早期治療がいかに大事であるかおわかりいただけるでしょう。
- Q治療法について教えてください。
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A
緑内障にはいくつかの種類があります。まず、原発緑内障と外傷や何かしらが原因で発症する続発緑内障。原発緑内障の中には原発開放隅角緑内障と原発閉塞隅角緑内障があります。原発閉塞隅角緑内障は発症率が高く、その中には眼圧が正常であるにもかかわらず、視神経が障害されて発症する正常眼圧緑内障も含まれます。また、他の症状で受診した際に発見されたり、すでに進行した状態で受診したりと、病気の進行度合いもまちまち。それを踏まえて診断し、薬物治療、レーザー治療、手術からいずれかの治療法を選びます。どの治療法も眼圧を下げて進行の抑制を図ることを目的としており、継続して治療を行う必要があります。
- Q緑内障治療におけるクリニック選びのポイントは?
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A
緑内障専門のクリニックが少なく、困っている方も多いのではないでしょうか。当院では緑内障診療のガイドラインに沿った治療を心がけています。さらに、各症状に応じた微妙なさじ加減やたくさんある点眼薬や手術法の選択の見極めや組み合わせは医学的根拠に基づいた経験がものをいいます。また、患者それぞれの生活パターンも異なる上、緑内障は進行を抑制することが重要になりますので、患者自身が治療継続できるよう、モチベーション向上への働きかけも医師のキャリアが影響するでしょう。そういったことから、医師の専門性と臨床経験を重視したクリニック選びをお勧めいたします。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1予約し受診する
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緑内障は自覚症状が乏しく、加齢が要因で発症するケースが多いことから、40歳を過ぎたら定期的に検診を受け、早期発見・早期治療で進行の抑制を図ることが重要。症状がある場合は病態がかなり進行している可能性があるため、自覚症状がある場合は、早急に受診すること。問診では、気になる症状はもちろん、日常生活での困り事も詳しく医師に伝えると、スムーズに次のステップに進むことができる。
- 2精密検査と検査結果の説明
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眼圧が正常値でも緑内障を発症しているケースもあるため、精密検査では眼圧の測定に加え、視力検査、視神経や網膜の観察をする眼底検査、網膜の断層画像を撮影するOCT検査を受ける。その結果、緑内障が疑われる場合は、視野検査を行い、異常があれば緑内障、異常がなければ緑内障予備軍の前視野緑内障の確定診断がつく。緑内障が確定したら、進行の度合いやどのような治療を行うか、医師から説明を受ける。
- 3病型を確定後、治療を開始する
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いくつかの種類に分かれる緑内障の病型を確定。その後、緑内障について病識を高めるための指導や説明を受け、病型に適した治療法を選択する。治療を行うにあたっては最初に眼圧をどのくらい下げるか目標眼圧を設定。24時間の間でも眼圧は変化するため、朝・昼・夕方それぞれ何日か眼圧を測定して平均眼圧を出し、そこから2割~3割引いた値を目標眼圧に設定する。治療は点眼から開始し、定期的に視野検査を行う。
- 4視野障害が進行した場合は手術を検討
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目薬の種類が多種あるため、組み合わせて使用するなど、できる限り点眼で病状の進行の抑制を図る。しかし、自己管理力も要することから途中でドロップアウトしたり、薬物治療を継続したものの視野障害が進行したりした場合は、最終手段の手術へと進む。同院では手術内容によって高次機能病院と連携しながら手術を実施。病態に適した環境で治療が受けられるように、電子カルテを活用して病診連携を密に行っているとのこと。
- 5手術・術後ケア・定期検査
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視野障害が進行した場合、その進行度合いに応じた手術を行う。術後1週間以内は感染を起こす可能性があるため、約1日おきのペースで受診し各検査を受ける。もう大丈夫だからと自己判断せずに、点眼をしっかり続けることが重要。同院では、1週間経過後も、持続することの重要性を伝え、生活スタイルに合った点眼薬を処方している。視野障害の進行をいかに抑制するかが鍵となるため、定期検診を欠かさず受けることが大切だ。