前田 裕弘 院長の独自取材記事
まえだクリニック
(堺市南区/泉ヶ丘駅)
最終更新日:2025/10/29
泉ヶ丘駅から徒歩5分の「まえだクリニック」は、血液内科を専門として40年以上のキャリアを持つ前田裕弘院長が、地域のかかりつけ医として2023年に開業。「患者さんの中には、わらをもすがるような気持ちで来られる方もいらっしゃいます」と語る前田院長は、突っぱねたり冷たい態度を取らず、患者の心の支えとなる寄り添った診療を実践。一般内科から血液疾患の専門診療まで幅広く対応している。70歳となった現在でも休日には7キロのランニングを欠かさず、24時間の電話対応も自ら行う献身的な姿勢も印象的だ。そんな前田院長に、開業の経緯や診療への思い、今後の展望について話を聞いた。
(取材日2025年9月16日)
専門性を発揮し、地域医療へ貢献
こちらのクリニックを開業された経緯をお聞かせください。

大阪南医療センターを定年退職した後、まだまだやりたいこともありましたし、自分についてきてくれている患者さんが大勢いらっしゃいました。その方たちを診療し続けたいという思いもあり、2023年に開業することを決めました。ショッピングモール内という立地を選んだ理由は、駅から近く駐車場も広く、学校帰りや会社帰りにも寄っていただきやすいこと、また2025年の11月に近畿大学の新病院がこのモールの前にできることもわかっていたので、患者さんが通院するときに便利な立地だと考えたからです。
なぜ血液内科を専門に選ばれ、どのような研鑽を積まれてきたのですか?
実は学生の時は、血液内科と免疫内科が一番苦手だったのですが、今後、血液内科の分野を専門とする医師が少ない時代になってくるのではないかと考え、血液内科を専門にすることを決めました。大学卒業後は血液内科に入局し、1990年には米国ワシントン大学医学部病理学教室で研究しました。日本に戻ってからは近畿大学医学部の助教授を経て教授になり、血液病理学、移植学、がん薬物療法、エイズ、免疫療法学など約40年間研鑽を積んできました。研究は大好きでしたね。
こちらではどのような診療をされているのですか?

当院は一般内科、血液内科、訪問診療の3つを柱に、一般内科疾患をはじめ、ウイルス疾患、感染症、膠原病、腎疾患など、幅広い疾患に対応しています。私はもともとHIV感染症を専門にしていて、近畿大学や大阪南医療センターでHIVの患者さんを診てきた中でウイルス疾患に関するさまざまな技術や知識を得てきました。また、当院の血液内科では詳細な血液検査を行っています。具体的には、赤血球系疾患、白血球系疾患いわゆる血液腫瘍、血小板・凝固因子異常など、日本血液学会血液専門医として専門性の高い診療を行っています。
患者の心に寄り添う診療をめざす
血液内科の患者さんはどのような症状で来られる方が多いですか?

一番多い血液疾患は女性の鉄欠乏性貧血です。ちょっと歩いたら動悸がする、階段を上ったら息切れがするという訴えで来院される若い女性の患者さんが多く、高校生の方も多くいます。その要因の一つが、月経過多によるものです。月経過多は通常の月経よりも多く血液が失われますが、それに見合うだけの鉄分を食事で補えていないんですね。次に多いのがリンパ節腫脹で来院される方。こちらも20代30代の女性に多い病気です。他にも、全身倦怠感、体がだるいという方、足がむくむという方も年齢関係なくいらっしゃいます。
スピーディーな検査や専門性の高い検査も行っているそうですね。
はい。例えば白血球、赤血球、血小板などの検査は、即日に結果が出せる血液検査となります。またそのほかにも即日で15項目ほどの結果を出せる検査も実施しており、緊急の患者さんにも対応できるようにしています。むくみの患者さんに対しては、心臓を調べたり心電図をとったり、栄養状態がいいかどうかや貧血がないか、甲状腺の機能はどうかなどの検査を一通り行っています。血管エコーをすることもありますね。こういった検査は大学病院で行うことが多いのですが、それが地域のクリニックでもできるのは、地域に住んでいらっしゃる方々には心強いのではないかと思います。
診療において心がけていることを教えてください。

診療後も患者さんの病状が気になり、翌日に電話することもあります。帰宅後の病状を聞いたり、自分が出した薬の効果判定も含めて確認させていただいたりしています。検査の結果は、メッセージアプリやメール、ファックスなどでお送りして、翌日にできるだけ早く患者さんにお伝えするというのがモットーです。患者さんは、時として医療機関にわらをもすがるような気持ちで来られている場合もあります。そんな時に私が冷たい態度や突っぱねるようなことをしてしまうと、行き場所がなくなってしまいますよね。ですから当院は、患者さんにとって居心地の良いクリニックでありたいと思っています。当院は患者さんに優しく、スタッフも思いやりをもって臨んでくれているので、患者さんにとって心強い場所だと思います。
患者の心の支え、病に悩む人の頼れる場所へ
訪問診療や診療後も電話での対応をされているとお聞きしました。

地域の高齢化に対応していきたいという思いから、訪問診療は担当の舟久保岳央先生を中心に、私自身は、土日や木曜日は転送電話を持って家に帰り、24時間対応できるようにしています。夜に電話がかかってくることもたまにありますね。その時は診療はできないので、アドバイスを中心に話をして、翌日にクリニックに来てもらうようお話ししています。診療後も対応しているのは、この仕事が好きだという気持ちが大きいですね。いつでも対応できるよう自分自身の健康管理にも気をつけていて、休みの日は7キロランニングしています。ちなみに、去年は姫路から大阪まで100キロウォーキング完歩しましたよ。
今後の展望についてお聞かせください。
2025年11月に近畿大学病院が目の前にできますので、そちらの患者さんの受け入れや、当院からの紹介も考えていきたいと思います。また地域のかかりつけクリニックとして近隣の方々をもっと診ていきたいという大きな目標もありますし、一般内科と専門的な血液内科があるクリニックが身近にあることをもっと知っていただけたらうれしいですね。知識・技術だけでなく、患者さんの心の支え、病に悩む人の頼れる場所として、スタッフ一同、人に優しい診療を心がけていきます。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

些細なことでもいいので、体の調子が悪いと感じた時は、電話やクリニックに来ていただけたらと思います。気軽に頼ってもらえる場所にしたいので、遠慮せず電話でもご連絡いただければと思っています。一般内科疾患から血液の専門的な病気まで専門的に対応していますので、大きな病院に行く前のワンクッションとして、ちょっとしたことでもぜひご相談いただければうれしいですね。そこから早期発見、早期治療につながることもありますから、遠慮なくご相談ください。

