牧 稔人 院長の独自取材記事
まきファミリークリニック
(名古屋市瑞穂区/瑞穂区役所駅)
最終更新日:2024/11/28

瑞穂区役所駅から徒歩2分の交通至便な場所に立地する「まきファミリークリニック」。小児科の医師として長年にわたり地域医療に貢献してきた母親から引き継ぎ、小児科に内科を加えて2023年7月に継承開業した。気さくな人柄の牧稔人院長は、脳神経外科の医師として豊富な経験を持つ。昨年末は小児の患者たちを集め、院長の妻が講師を務めてクリスマススワッグ作りの催しを開いたといい、院内にはイベントの写真やクリスマススワッグの実物が飾られている。不安いっぱいでクリニックの扉を開けた子どもにも大人にも安心感を与える、そんな優しい雰囲気に満ちあふれた同院で新院長として奮闘する牧院長に話を聞いた。
(取材日2024年5月23日)
ベテラン看護師の在籍で、生後1ヵ月の乳児も安心
継承の経緯を教えていただけますか?

18年前に小児科の医師だった母が当院を開業し、母の急逝に伴い、2023年の7月から私が継承し院長を務めています。母の時代は小児科だけだったのですが、現在は一般内科も診療しています。私は継承前までは、大学病院や総合病院で脳神経外科の医師として忙しい日々を送っていて、母の死が突然だったこともあって、独立への心の準備は整っていませんでした。しかし母の残したクリニックを引き継ぎたいという強い思いから、継承に至りました。小学生の時から20歳頃までずっとこの近くで暮らし、住み慣れたこの街で医師として地元の皆さんに貢献できることをうれしく感じています。
突然の引き継ぎは大変でしたね。約1年、振り返ってみていかがですか?
母の時代からの看護師さんや事務の方がいらっしゃって、日々支えられていますね。いろいろ手伝っていただき、とても助かっています。脳神経外科では大人の患者さんを診ることが多かったのですが、スタッフたちの支えもあって、自然な流れで小児科診療に取り組むことができています。もともと医師をめざした時点で、将来は小児科を継ぐだろうという意識があったものですから、子どもの診療に対しては心構えができていました。地域医療についても、地方の病院に勤務していたことがあり、医師が少なかったため、専門以外の一般内科もずいぶん診ました。現在、その時の経験が非常に役立っていますね。
特に多い主訴や患者層を教えていただけますか?

大人の場合、発熱や咳、頭痛、喉の痛み、胃腸の不調、高血圧症・糖尿病などの生活習慣病などが多いでしょうか。小児は、熱、咳、鼻水などの上気道症状か、腹痛などの消化器症状、また頭痛や皮膚疾患なども多いですね。皮膚疾患は発疹やアトピー性皮膚炎、乳児湿疹やおむつかぶれなどの小児の皮膚疾患全般に対応しています。さらに、傷の処置も行っており、時には縫合など外科処置も行います。地域に根差す内科クリニックとして、幅広く対応しています。患者層は、母の時代から引き続き来ていただいている患者さんもいますし、やはり小児が多いのですが、高齢者や主婦の方、働き盛りの世代の方も増えてきました。お子さんに関しては、本院は生後1ヵ月の乳児も受けつけています。看護師も小児科の大ベテランで、小さな子どもの扱いには慣れていますので、安心して任せていただければと思います。
脳外科での経験を生かし、脳卒中予防に努めたい
診療で心がけていることはありますか?

患者さんになるべく不安を与えず、安心して診療を受けていただけるように心がけています。そのためには患者さんと医師との信頼関係が大切です。日々のコミュニケーションを患者さんと丁寧に行うことを重視し、気楽に何でも話せるような雰囲気づくりを大事にしています。小児科の場合は、お子さんは自分の症状を言えないことも多いので、親御さんから症状や状況など、過去のことも含めて、いかにいろいろな詳しい情報を聞き出せるか、その能力が医師にとって重要だと思います。親御さんにお願いなのですが、お子さんを注意深く観察していただき、食べることができているか、夜間は眠れているか、喉が痛いなどと不調を訴えていないかなど、どんな些細なことでも受診の際、お話しいただければありがたいです。
得意とする領域はありますか?
脳神経外科の医師として、脳卒中や頭痛、めまい、しびれ、認知症などの治療に長年携わってきましたので、その辺りが得意分野ですね。CTやMRI検査は外部の医療機関で行っていただくのですが、結果を分析する画像診断は豊富な経験があります。頭痛の外来も設けていますので、長引く慢性頭痛や片頭痛にお悩みの方は一度ご相談ください。薬局に売っている頭痛薬を飲むのではなく、医師から処方された薬を適切なタイミングで飲むことで改善も見込めます。また、何かあればすぐに専門の病院を紹介できるよう、信頼できる医療機関のネットワークを築いています。その他に、脳卒中の原因となる生活習慣病の診療にも自信を持っていますし、急性期病院で手術を行っていたため、日常的な切り傷、擦り傷、やけどなどの治療も任せていただければと思います。
脳卒中を予防するために、気をつけたほうが良いことを教えていただけますか?

基本的なことになりますが、まず喫煙は良くありませんね。でも、タバコを吸っている人にとっては喫煙が当たり前の習慣になってしまっているので、辞めることはなかなか難しいでしょう。一本一本減らしていけるよう、地道な指導をしています。また、糖尿病や高血圧症、脂質異常症の疑いや予兆があれば、できるだけ早期に治療することをお勧めします。例えば、糖尿病を患う人は血管を傷つけてしまい、脳卒中のリスクが高まることが知られています。日頃から健康的な生活を心がけたり、定期的に検査を受けたりすることが大切です。当院では予防だけでなく、脳卒中や脳梗塞の既往をお持ちの患者さんの再発防止や治療継続などのアフターフォローも行っているんですよ。
身内を亡くしたからこそ、定期検診と健康管理を訴える
医師をめざしたきっかけを教えていただけますか?

幼い頃からずっと母のクリニックを継ぐという意識があり、医師をめざしましたが、研修医の時には小児科の道を進むか、脳神経外科の道を選ぶかで迷いました。脳神経外科に興味を持ったのは、親族が脳の疾患で亡くなったことでしたので、その病気について知りたい、なんとか治療する方法を探りたいという強い気持ちがありました。また同時に、脳神経外科の世界が面白くて、興味が尽きなかったこともあります。脳神経外科の分野では、治療や手術により劇的な症状の改善も見込めます。治療しなかったら命に関わるかもしれない患者さんを自分の手で治療できることは、大きなやりがいがあります。責任も伴いますが、得られる充実感も大きい診療科ですね。
クリニックを継承された理由は、お母さまへの思いが大きいのですね。
母が生きていた頃はなかなか親孝行できなかったのですが、今、やっと恩返しができているように思います。治療で改善が見込める患者さんを医師としてたくさん診てきたわけですが、けっきょく自分の家族には何もできなかったことは心残りです。母にも定期的な検診を勧めていたのですが、忙しいからか、全然行ってくれなかったんですよね。身内を病気で亡くしたから思うのですが、やはり日頃からの定期的な検査や、生活習慣などの日常の健康管理は非常に重要だと感じます。地域医療を支える医師として、少しでも病気で亡くなる方や、家族を亡くして悲しむ方を減らしていくことに貢献したいです。
今後の抱負と患者さんへのメッセージをお願いします。

今後、患者さん宅を訪問して診療する往診に取り組んでいきたいです。往診は、定期的にご自宅や施設を訪問する訪問診療とは違い、急に体調不良になった患者さんやそのご家族から連絡を受けて、患者さんのもとへ訪問して診療することです。例えばお子さんの場合、夜中に熱を出したり咳が止まらなくなったりすることも多いので、ご自宅にお伺いし、緊急の処置や必要であれば救急科につなげます。継承してからは慌ただしくて、なかなか考える時間が取れませんでしたが、やっと心と時間の余裕ができたので、いろいろ構想を深めていきたいですね。自分も子どもの父親なので、子どもさんを心配する親御さんの気持ちはよくわかります。また大人も含めて、健康や病気に関することはどんな些細なことでもいいので、お気軽にご相談いただければうれしいです。