諸岡 雄也 院長の独自取材記事
諸岡小児科ちくし通りクリニック
(福岡市博多区/竹下駅)
最終更新日:2025/08/04

「いいでしょう、この世界地図。子どもたちにも好評で」陽気でフレンドリーな先生だと会った瞬間に思わせるのが「諸岡小児科ちくし通りクリニック」の諸岡雄也院長。小児医療を専門病院でゼネラルに幅広く経験をし、博多区諸岡に2023年7月同院をオープンした。「こどもまんなかのあたたかいクリニック」をポリシーに、小児科クリニックが子育ての一つの拠点になれるよう、小児医療も少しずつギアチェンジできたらと語る。エネルギッシュに、かつ真摯に自身の熱意を伝えてくれる院長。「自分自身も2児の子育て中で、ますます小児科診療への思い入れが強くなった」と優しい父親の顔ものぞかせる。今回はそんな院長に、同院のポリシーや小児医療にかける思いなどたっぷりと語ってもらった。
(取材日2023年9月12日/情報更新日2025年7月17日)
2院で医療連携しながら、地域の子どもたちを見守る
こちらは井尻にある「諸岡小児科」のサテライトクリニックとしてオープンされたそうですね。

「諸岡小児科」は1957年に私の祖父母が開院し、現在は両親が継承。60年以上地域の子どもたちのかかりつけ医として歩んできました。そんな環境でしたので仕事のイメージが湧きやすかったのか、私自身も小児科医への道を選択したんです。かっこよく言えば、両親や祖父母の背中を見て育ったという感じでしょうか(笑)。夜中に緊急対応をしている姿もよく覚えています。「諸岡小児科」は、将来的には同じく小児科医である兄が継承する予定です。それで弟の私は、ここ博多区諸岡に「諸岡小児科ちくし通りクリニック」を開院した次第です。近隣の2院で休診日をずらすなど協力できるので、継続して診療を提供するような相互的な医療体制をつくれるメリットがあります。生まれ育ったエリアの子どもたちを見守り、地域に貢献したいという思いです。
院内感染対策にもこだわったのだとか。
コロナ禍で、患者さんや保護者の方の感染症に対する考えがガラリと変わりましたよね。それが本来のあるべき考え方なのでしょうし、なるべく皆さんに不安を与えないような設計にしたいと思いました。基本的に感染症は飛沫感染ですので、院内は感染症・非感染症ゾーンに分け、待合室も分離し、なるべく患者さん同士の接触がないようにしています。ですので、例えば予防接種で来院される患者さんは、非感染症の診療スペースで完結できるような動線分離が可能です。また感染者用の個室待合も完備し、場合によっては会計をお持ちしたり、隣の調剤薬局が薬を届けてくれたりすることも。ケースバイケースで対応できるように工夫しています。
その他にも特徴はありますか?

緊急時を除いて、基本的に当院は予約制。問診もウェブで事前にご記入いただき、なるべく待ち時間を減らすシステムにしています。ウェブ問診のメリットはご受診の契機となった症状以外の保護者の相談や気になることを伺えることです。これはウェブ問診表に入力箇所があるのですが、自宅で事前に落ち着いて入力できるからか、結構ご入力いただく方が多いんですよ。便秘、皮膚トラブル、発達の悩みなど病状に関係なくても、診察中にはなかなか言えないことでもいいです。ちょっとした悩みから思わぬ病気が見つかるケースもありますし、何かご心配があれば遠慮なくご入力くださいね。
めざすのは子どもの疾患を総合的に診療する小児科医
これまでどういった診療に携わってきたのですか?

小児医療をより総合的に専門的に学びたいと考え、福岡徳洲会病院、その後は福岡市立こども病院で勤務しました。診断が難しい病気や、重症者をはじめ、先天的な病気がある子や医療的ケア児、また複数の病気を抱えているお子さんなど、なかなか一般の小児科では経験しないような症例を多く診療させていただき、子どもたちやご家族から多くのことを教えていただきました。特に福岡市立こども病院では、総合診療科で、幅広い患者さんに対応してきました。とても多忙でしたが、たくさんの経験をしておきたかったんです。開業後はすべてを大きな病院にお任せすることなく、自分である程度は診療できるようになりたい、と思いながら日々診療していましたね。
今までのご経験から、どんなことを感じましたか?
小児科医は、本来は子どもの病気全般を診る医師のはずなんです。成人の方を対象とした内科で言えば、循環器内科や腎臓内科などと診療科目は専門的に分かれていますよね。同様に小児科医も、小児の循環器・血液・内分泌など細分化された分野をより専門的に研修することが多いです。ただ、現在の小児医療は高度化し専門性が増す一方で、複数の病気を抱えていたり、境界疾患だったりする子の診療を多く経験し、子どもを総合的に診療するトレーニングを受けた医師の必要性が増していると感じています。また、子どもの心理的な背景や、取り巻く社会環境を含めて包括的に診療することが大切だと考えています。
診療を行う上でのポリシーはどういったことでしょうか?

子どもたちの一番の味方でありたいと思っています。例えば一つの診察や検査をするにしても、本当に子どもたちにとって必要なのかをよく考えて行うように心がけています。嫌がる子に無理やり処置をするというようなことではなく、少し待ってみるとか、今日はやめておくとか。押さえて処置をすれば診療も滞らないのでクリニックの運営としては待ち時間も出にくいですしメリットはあります。でもそれだと開業した意味がないと思っていて。ある程度、社会的に仕方のないことはもちろんありますが、大人の都合で子どもに無理強いをさせないように気をつけています。特に小児科医は子どもたちと身近に接する職業。アドボカシー、つまり子どもたちがどう考えているかの代弁者になれるように、子どもたちに向き合い耳を傾け続けることが大切だと考えています。
子どもたちに包括的な医療を提供したい
今後の展望を教えてください。

小児科医の役割を少しずつ広げていかなければならないと思っています。もちろん病気を診ることからスタートするのですが、診察や予防接種をするだけではもったいないなと。もっと大きな視野で、子どもたちの置かれている環境や地域社会を守っていく役割にシフトしていきたいです。現代は疾病構造が変化し、アレルギーや肥満、不登校など、子どもたちが抱える問題は思った以上に大きいです。医師や看護師、スタッフたちは、子育てをサポートするポテンシャルがありますし、小児科クリニックを地域の子育て拠点にできたらという思いです。医療を中心に、子どもたちの社会的・心理的な面まで包括的にサポートしたいですね。地域全体で子どもを育めるよう、もっと子育てしやすい場所になるのが理想ですし、当院も一丸となって見守っていきたいと強く思っています。
地域の方々へメッセージをお願いします。
最近はありがたいことにたくさんの患者さんに来院いただいており、診察が混み合っている状況です。ウェブ予約が取れない場合は、お電話をいただき受診調整をすることもあります。お待たせしないよう努力していますが、かかりつけの予約外の方もできる限り診たいと思うと、どうしても待ち時間が長くなることがあります。そのような場合でも、お断りしないことがかかりつけ医としての責任だと思っています。そのために、お電話で受診の相談をいただいた際は、すぐに診る必要がある場合はもちろん優先して対応。症状が落ち着いていて翌日まで待てそうであれば、明日以降の受診をお願いする場合があります。大幅な待ち時間は患者さんの負担が大きいですからね。私自身、同じ地域に暮らし、同世代の子どもがいる親として患者さん親子に親近感を覚えるだけに、不安な思いに寄り添えるよう努めています。
かかりつけとして頼りにされる患者さんの体調不良には、可能な限り対応したいということなのですね。

ええ。「待ってもいいから」と言ってくださる方が多いのはたいへんありがたいことです。スタッフも頑張ってくれているのですが、現在の受け入れ数は限界に近く、持続可能な体制でないことも理解しています。お子さんの急な体調不良時に、慣れたクリニックで診療を受けていただく体制を維持するために、「次は自分たちが急な体調不良で予約外受診になるかもしれない」という視点で、待ち時間が生じる場合があることをご理解いただければありがたいです。これからも無理に詰め込んだり、不要な検査や処方をしたりするのではなく、お子さんの状態を丁寧に診ていきたいと考えています。安心してもらえる診療を心がけていますので、少しでも不安があれば遠慮なく相談してくださいね。