黒木 春郎 院長の独自取材記事
こどもとおとなのクリニック パウルーム
(港区/外苑前駅)
最終更新日:2026/01/13
東京都・北青山にある「こどもとおとなのクリニック パウルームパウルーム」。小児科、精神科、内科を標榜し、文字どおり「子どもと大人」、家族の心身の健康のための場として機能している。院長を務める黒木春郎先生は、小児医療をベースに、公認心理師としての視点を診療に取り入れてきたベテランドクター。2005年に千葉県で小児科医として開業。子どものプライマリケアに関わるうち、家族全体の心の健康の重要性を実感し、2023年4月の同院開業に至ったという。医師として40年あまり、経験を重ねてもなお、意気盛んな黒木院長にインタビューした。
(取材日2025年12月11日)
小児医療と大人も含めたメンタルヘルスの診療
こちらのクリニックを開業した理由や経緯を教えてください。

私はもともと母校の千葉大学医学部で教官を務めていましたが、地域医療とプライマリケアを実践するために医局を去り、2005年に千葉県いすみ市で「外房こどもクリニック」という小児科のクリニックを始めました。当時、半径30km圏内に小児科がなかった医療過疎地にあえて身を置き、大学病院ではできない、子どもの初期診断のモデルを示したいと思ったんです。その後17年くらい一般的な小児診療に取り組んだ中で、ある考えが浮かびました。それは「もっと子どもの心の問題に目を向ける必要がある」ということでした。ただ、心だけを専門的に診るのではなく、体のことも含めた全体の中で、心の問題を捉えていかなくてはいけない、と感じたんです。
先生は小児科の医師であるとともに公認心理師でもあるわけですが、なぜ心の問題に注目されたのでしょうか?
いすみ市のクリニックでは、初めの頃は咳や発熱といった一般的な症状のある子どもを多く診ていました。しかし月日がたつにつれ、だんだんと発達障害やメンタルヘルスの不調、さらにいえば子どもを取り巻くご家族の心の問題などが増えていると感じるようになったんです。でも、小児科に限った話ではありませんでした。働く人たちが産業医を受診する理由の多くは、昔は重労働からくる腰痛や有害物質の吸引など業務と直結したトラブルでしたが、今ではほとんどがメンタルの不調やそれによる体調不良といわれています。19世紀以来の医療モデルは急性感染症と外傷をメインの対象としてきましたが、それが今やメンタルヘルスに変わってきているのではないかと思います。
だから「こどもとおとなのクリニック」なのですね?

そうです。いすみ市のクリニックでは、小児科プライマリケアの領域で自分にできることはすべて取り組んで、臨床試験を行ったり、市のほうで小児向けワクチンの無料化を進めてもらったりもしました。次は何をしようかと考えていた時に、一般的な小児科にメンタルヘルスへのアプローチを取り入れ、子どもと家族全体を診ていくという新たなアイデアが自分の中で形になっていきました。唯一の心配事は、いすみ市のクリニックをどうするかでした。閉業すると再び地域に小児医療がなくなってしまうので気をもんでいたところ、後輩の医師が手を挙げてくれたので、彼に後のことを託して、2023年4月にこのクリニックを開業しました。
心の問題で今まさに困っている子どもと家族を助けたい
クリニックは表参道や外苑いちょう並木からも近い北青山にあります。なぜこの場所を選ばれたのですか?

「一般の小児医療の中で心の問題にも取り組む」という当院のコンセプトを広く発信したいという思いから、情報の飛び交う量が多い都心の青山を選びました。新しい医療のスタイルが広く速く伝わってくれると期待したんです。このような場所で開業することができ、とても幸運だったと思っています。
普段の診療では、体の不調と心の問題を一緒に診ているのでしょうか?
診療の在り方は基本的に一般の小児科と同じです。発熱やインフルエンザなど体の症状があれば、まず必要な診察や検査を行います。一方、発達障害や心の不調などにより「学校で騒いで困っている」「家から出られない」といった主訴で、初めから心の相談を目的に受診されるご家族もいらっしゃいます。当院では、院長の私がいつもいる診察室の向かい側に、心の問題に関する専用のスペースを設けてあり、専門スタッフが面談やカウンセリングを担当しています。私の診察で心理的な課題が認められたときは、改めて面談を別の機会に設定します。公認心理師は私と妻を含めて5人在籍しており、交代で心理的側面からのサポートにあたっています。
心の問題を診察するにあたって工夫している点や、それによって生まれたメリットがあれば教えてください。

一般に、子どもの心の診療の初診予約は1〜3ヵ月待ちになることも珍しくありません。ですが、相談したい保護者の方と当のお子さんにとっては「今まさに困っている」状態なわけですから、当院では来院当日に診察できるよう、公認心理師が常駐する体制を整えています。今の状況を問診票に詳しく記入してもらい、それをもとに、まず公認心理師が30分ほど話を伺います。そこで得られた情報を医師と共有し、医師が最終的に診察して今後の方針を立て、丁寧に説明します。最初から医師が面談するとお一人に1時間くらいかかってしまって1日に4〜5人程度しか診られません。スタッフと役割分担することで、より多くの患者さんに向き合えるようになりました。
医療を提供するクリニックは患者がいることで完成する
受付と待合室を囲む壁一面が書架になっていますね。たくさんの児童書が並んでいて驚きました。

今は情報過多の時代といわれますが、子どもが子どもとして、親が親として成長するには、インターネット上を流れる雑多な情報より、歴史の試練に堪えた古典的な教養から身につくリテラシーが重要であり、一番の近道は良い本を読むことだと考えています。そこで、院内に子どもも大人も楽しめる約3000冊の書籍をそろえ、診療を待つ間などいつでも開くことができるようにしました。図書館と同じシステムを導入しているので、実際に貸し出すことも可能です。医療機関は堅苦しい場所というイメージを変えたくて、ブックカフェのような空間をデザインしているので、ぜひ見てほしいですね。
オンライン診療を早い段階で取り入れ、現在もたくさんのニーズに応えているそうですね。
オンライン診療は、いすみ市のクリニックにいた2016年から実施しています。当初は否定的な意見もありましたが、私は初めからオンライン診療の有用性に期待していました。今も急性感染症の診察に重宝していますし、遠方にお住まいの方や心の問題を抱えるお子さんに対しても、大いに役立っていると思います。気分が落ち込んでしまったり、不安が強くて外出ができなかったりする場合でも、自宅にいながら話せますからね。検査や処置が必要な方は来院していただきますが、経過観察であればオンライン診療も非常に優れていると思います。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

千葉の外房で診療していた頃、どうにかやってこられたのは、地元の皆さんが私の提供する医療を選んでくださったからでした。文学作品も、読者がいて初めて正当に評価されるものです。青山に来て満3年になろうとしていますが、当院も、利用してくださる患者さんによって完成すると思っています。お子さんやご家族の相談にはいつでも対応しますので、まずはお気軽にご連絡ください。初診からオンラインでもOKです。スタッフと一緒にお待ちしています。

