岩崎 忠臣 院長の独自取材記事
さくらトータルケアクリニック
(宇都宮市/宇都宮駅)
最終更新日:2025/07/15

宇都宮市、作新学院近くにある「さくらトータルケアクリニック」。岩崎忠臣院長は、医師としてのキャリアを血液内科からスタートし、麻酔科に転科後、手術・疼痛管理・終末医療に従事。その後は在宅医療に足を踏み入れ、診療科の枠を超えながら診療にあたってきた。「体の不調には必ず背景がある」と語る院長は、表面的な症状だけでなく生活習慣や心理的要因にも目を向け、患者ごとの人生に寄り添う医療を志向。また慢性疾患や風邪、日常的なけがなど幅広く対応している。単なる便利なクリニックに留まらず「来るだけで元気になれる場所」をめざす院長に、診療にかける思いを聞いた。
(取材日2025年5月16日)
一人ひとりが自分らしく輝けるようにサポート
まずはクリニックの特徴を教えてください。

当院では心と体は切り離せないものとして、両面から診るトータルケアを大切にしています。ペインクリニック内科では、痛みに悩む方の生活を少しでも楽にできるよう治療を行っています。内科では風邪などの体調不良から生活習慣病といった慢性疾患まで、幅広い疾患に対応しており、すり傷や切り傷、やけどなどに対する外科的処置も可能です。より専門的な治療が必要な際には信頼できる医療機関をご紹介します。「困ったときに思い出してもらえる存在でありたい」という思いを胸に、私たちは日々真摯に向き合っています。ちなみに外から直接入れる2つの個室は感染症対策として空調設備を完備しており、風邪の方はもちろんお子さま連れの方や障害のある方など、他の患者さんと同じ空間で過ごしにくい方にも利用していただいています。受診控えにつながりがちな状況でも、気兼ねなく受診できる体制をとっています。
診療方針をお聞かせください。
お体の不調は、生活習慣や環境・心の状態とも深く関わっていると考えています。ですから私は薬だけに頼るのではなく、体の使い方や心の持ち方、姿勢、生活管理を含めた総合的な視点で向き合うことを大切にしています。「一緒に歩いていこう」というスタンスで、対話と信頼を重ねながら最適な道を探していきます。
診療の際に大切にしていることは何ですか?

医師が一方的に治そうとするのではなく、患者さんご自身が自分の体や心と向き合うことが不可欠だと考えています。また、何事も良くするためには素直な心も大切です。とはいえ「素直になる」ことは、その方のもともとの気質、そして双方の信頼関係も関わりますので、大切なのは「この人となら進めるかも」とどこかで感じられるかです。そう感じていただけるのであれば私は全力で向き合います。しかし、中には私の診療スタイルが合わないと感じる方もいらっしゃるでしょう。それは自然なことであり、無理に歩調を合わせる必要はありません。いつまでもしっくり来ないのであれば無理はせず、お互いが心地よい形を探すことも誠実な選択だと思います。私の思いは患者さんが自分らしく豊かに生きること。そのための最適なタイミングや場所、パートナーは人により違うものでしょう。だからこそ合う・合わないも含めて大切にできるような医療でありたいと思っています。
来るだけで元気になれるような場所をめざして
今後の目標をお聞かせください。

クリニックというより、“人生のコンディションルーム”をめざしています。健康を整えるために気軽に来られる場所になることが理想ですね。中でも働き盛りの世代の方はなかなか受診することが難しいでしょう。それでも月に1度は立ち寄って自分の体や心に目を向ける時間を持てたら、もう立派な“健康づくり”だと思うんです。また医療の枠を超えた他業種とのコラボレーションにも力を入れたいと考えています。「楽しい」と「整う」が重なる場所を仲間と一緒につくっていく。そんな新しい地域医療の形を模索したいです。
患者さんのことをとても大切に考えていらっしゃるのですね。
一人ひとりに心を込めて寄り添いたいと思っています。当院には心と体、それぞれのつらさを抱えて来られる方が多くいらっしゃいます。中には「何をしても変わらない」と心を閉ざした状態で来られる方も。ですが私はそのような気持ちも含めて“その人自身”だと考えています。本当は変わりたいけれど自分を信じる勇気が湧かない、素直になれない状態なのかもしれません。痛みや不安を抱えている方にとって「自分を信じ直す場所」になれたら幸いです。そしてその先にある、その方らしい人生にもう一度光を当てられたらと願っています。
患者さんに寄り添うためにどのような工夫をされていますか?

お話し中に「ここだけの話なんですけど」と本音を打ち明けてくださる方が増えてきました。それでも患者さんの不調の奥にある背景まで知るには、少し踏み込んだ質問も必要です。そこで診療ではNLP(神経言語プログラミング)など心理学的視点も取り入れながら、心と体の両面から丁寧にアプローチするよう心がけています。また待合室に植物を飾り、空間にも整う力を出せるように気を配っています。当院がパワースポットのような、立ち寄ると肩の力が抜けて「もう大丈夫かも」と感じてもらえるような場所にしたいんです。帰る時には「痛かったのどこだったっけ?」なんて笑っていただけたらうれしいですね。
出会いこそが人生を豊かにすると信じて診療を
ペインクリニック内科ではどのような治療を行っているのですか?

ペインクリニック内科では首・肩・腰・膝・腕・頭など、さまざまな部位に現れる痛みの原因を探り、緩和と根本改善をめざします。痛みには必ず理由があります。例えば、肩凝りや腰痛なら無理な姿勢や偏った動き、習慣の癖などが隠れていることが多いです。症状に応じて注射を使うこともありますが、根本の生活を見直さなければ同じ痛みが戻ってしまいます。そこで私はその方の暮らしに寄り添いながら、「どう体を使えば痛みが出にくいか」という具体的なアドバイスをお伝えしています。また生活の中には痛みのヒントがあります。ヒントは患者さんのお話をじっくり伺ってはじめて見えてくるものですので、診察時間が長くなることもありますが、それもまた私の診療スタイルの一部だと思っています。
痛みの治療の奥深さを感じました。
痛みの治療の基本は、薬や神経ブロック注射といった医学的アプローチです。ただ痛みはいわば氷山の一角。見えている部分はほんの一部で、その下には生活習慣や姿勢、心の状態、環境などさまざまな要素が潜んでいます。ですから私は痛みを和らげるだけではなく、痛みの奥にあるものを一緒に見つけて整えることを大切にしています。患者さんの声に耳を傾け、時に一緒に笑い涙を分かち合う。そんな時間を過ごすとその方の中に眠っていた治癒の力が顔を出す瞬間があるんです。治療者というより黒子のようにそっと寄り添い、伴走する存在でありたい。そんな思いで、毎日患者さんと向き合っています。
ちなみに先生はどのようなご経歴を歩まれて来られたのですか?

痛みから解放され自分らしい毎日を取り戻すにはどうするかが、私の医療の原点です。私自身、野球をする中で何度かけがをしました。痛みにより本来の力を出せない歯がゆさから、痛みの治療に興味を持っていました。医師になった後はまず血液内科に入局し、救急医療や循環器内科を中心に、内科全般の経験を積みました。その後麻酔科に転科し、術中の全身管理や痛みの外来での疼痛管理に携わりました。終末期の患者さんを診ている中で、最期までその人らしく生きる旅を支えることを目標に旅行会社の立ち上げにも挑戦。軌道には乗りませんでしたが、想いに共感してくれた在宅医療の先生との出会いがあり、在宅医療の道に進むことになりました。そこでチーム連携と全人的なトータルケアの大切さを実感しましたね。またそんな折に前院長とのご縁があり開業につながりました。出会いが人生を豊かにすると信じています。これからもすべての出会いを大切にします。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
「腰の痛みで立ち上がるのがつらい」「痛みで眠れない」といったとき、神経ブロック注射が大きな助けになる場合もあります。例えば手術を可能な限り避けたい場合には、週2回の注射で改善が見込めるケースも。ぎっくり腰なら週1回の注射で効果が期待できることもあります。でも本当にめざしているのは痛みを取ることではなく、その方がその人らしい人生を取り戻すこと。気づけば前向きに歩き出していた。そんな医療の力を信じて日々向き合っています。どうぞどんな些細なことでもお気軽にご相談ください。