永吉 泰雄 院長の独自取材記事
東松山いいはなファミリー歯科
(東松山市/東松山駅)
最終更新日:2025/07/14

歯周病は虫歯と並んで、多くの人が悩む身近な疾患である。しかし、その原因や進行メカニズムを正しく理解し、日々のケアと定期的な診療を続けることで、予防や管理は十分に可能だ。「東松山いいはなファミリー歯科」の永吉泰雄(ながよし・やすお)院長は、継続的なケアが日常に根づいてこそ、真の予防につながると考えている。総合病院・インプラントセンター・大型医療法人など多様な現場での経験を重ね、「正しい診断を行い、検査に始まり、検査に終わる」という診療方針を貫く。また、英語学習を趣味とし、外国人患者への対応や、海外で開かれる勉強会への参加にも役立てているという。永吉院長に、予防歯科への考え方と同院での取り組みについて話を聞いた。
(取材日2025年6月11日)
原因を調べ、対策をする「治療」としての予防を重視
歯科医師をめざしたきっかけを教えてください。

もともと私の母方の家系には医療系の人が多く、曽祖父と祖父母は歯科医師でした。そうした環境の中で育ったこともあり、自然と医療の道を選びました。中でも、特に影響を受けたのは祖父母の存在です。子どもの頃は、祖父母の歯科医院の技工室が遊び場で、よく出入りしていました。患者さんが来院される様子も目にしていましたし、その姿が今でも印象に残っています。中でも記憶に残っているのが、祖父のもとに遠方から患者さんが通っていたことです。「この治療なら、あの先生にお願いしたい」と、100キロ、200キロ離れた地域からも患者さんが訪れていました。そうした様子を見て、自分も将来、人の役に立てる歯科医師になりたいと思うようになりました。
診療にあたって大切にしていることを教えてください。
初めて当医院で歯周病治療の検査を受ける方には、必ず1時間ほど時間を取って、しっかりお話しするようにしています。エックス線撮影や口腔内写真の撮影など、必要な検査を実施した上で、現在のお口の状態や治療方針を丁寧にご説明します。状態によってはそのまま歯石取りに入ることもありますが、重度の炎症がある場合などは、無理に処置を進めず、まずは原因や対策を考えることから始めます。私はよく患者さんに「治療は検査に始まり検査に終わるもの」と伝えています。適切な検査や診断をせずに治療を始めるのは、血圧を測らず薬を出すようなものだからです。また、できる限り患者さんをお待たせしないようにし、診療の内容と所要時間を事前にお伝えした上でご予約を取っています。患者さんの貴重な時間を無駄にしないことも、大切な診療方針の一つです。
予防歯科に対するお考えを教えてください。

「予防=掃除」と思われがちですが、それだけでは意味がありません。よく「3ヵ月に1回は歯医者へ」と言われることがありますが、例えば歯周病を抱えていた場合、ただ表面の汚れをクリーニングするだけでは、またすぐにお口の中の状態は元に戻ってしまいます。大切なのは、なぜそうなったのかという原因をしっかり調べ、説明し、治療につなげることです。歯周病は糖尿病や脳梗塞などの全身疾患にも関わる感染症です。ただ汚れを掃除をして終わりではなく、再発を防ぐための正しい歯の磨き方や生活習慣の改善も含めた「治療」としての予防が必要だと考えています。
汚れを除去してからが本当の意味での予防のスタート
予防歯科では、どのような検査をしているのでしょうか?

まずは「歯周ポケット」という言葉を聞いたことがあるかをお尋ねするところから始めています。患者さんとの言葉の認識をそろえることが大切だと考えているからです。その上で、歯周ポケットの深さや、歯茎を軽く触れたときに出血があるかどうかを確認します。患者さんの中には「普段の歯磨きでは出血しない」とおっしゃる方もいますが、それは歯ブラシの毛先がうまく届いていなかった可能性があります。こうした検査結果と患者さん自身の認識にずれがある場合には、数値や状況をもとに丁寧に説明し、納得いただけるよう心がけています。
予防を継続してもらうために、患者さんへの指導や声かけで工夫されていることはありますか?
検査に始まり検査に終わるとお伝えしていますが、もちろんそこで完了ではなく、そこからが予防のスタートです。見える範囲の汚れは患者さん自身がきれいにできますが、歯周ポケットの中にあるような見えない汚れを除去するのが歯科医師の仕事。そうした汚れをきちんと取り除き、汚れにくくするために状態を整えてから、ようやく本格的な予防が始まります。そこからは患者さん自身の管理が中心で、必要に応じて私たちがサポートします。初診時には「今が人生で一番お口の中が汚れていると思ってください」とお伝えしますが、そこから検査の数値を見ながら少しずつ良くしていきましょう、と前向きに声をかけるようにしています。
定期検査を続けることで、どのような気づきや変化がありますか?

数値の変化を通して口の中の状態を把握するだけでなく、患者さんの生活や体調の変化に気づくきっかけにもなります。以前はしっかり磨けていた方が、急に磨き残しが多くなったというようなことがあれば、何かしらの理由があると考えます。例えば、リウマチの影響で手が思うように動かなくなり、歯磨きがしにくくなったなどの理由が考えられます。そのような場合は、歯ブラシの種類や補助道具を見直すなど、無理なく続けられるケア方法を提案します。患者さん一人ひとりの状況に合わせたサポートを行うためにも、継続的なチェックには大きな意義があると考えています。
「行かされる」のではなく、自分の意思で通ってほしい
予防のためには、定期的な検査だけでなく、習慣づくりが大切なのですね。

はい。予防の鍵は「習慣化」にあると考えています。歯周病は細菌感染が主な原因ですから、いかに日々のケアを継続できるかが重要です。いきなり完璧な歯磨きやフロスの使い方を身につけるのは難しいので、当院では「学習塾」のような感覚で、1~3ヵ月の回定期来院ごとに磨き残しのチェックを行っています。結果は数値で可視化し、「ここはよくできていますね」「ここはもう少し頑張りましょう」と一緒に振り返ります。定期的に通っていただく中で、自分の歯磨きの傾向を把握することをめざし、状況に応じて通院間隔も個別に調整しています。例えば、磨き方が上達し、出血も少なくなり、検査で問題がない状態が続けば、通院間隔を延ばすことも可能です。1年半ぶりの来院でも、10%未満の磨き残しをキープできるような場合もあるでしょう。そうなれば歯科医師としてもうれしいことですし、セルフケアが習慣化されれば、予防は成功だと考えています。
今後の展望について教えてください。
一人でも多くの方に、「きちんと病態を把握し、原因から治してくれるクリニック」だと思っていただけるような存在になりたいと考えています。原因を理解し、予防に前向きに取り組む患者さんが増えてくれたらうれしいですね。例えば、1年、1年半と通院の間隔が空いても、磨き残しがほとんどないような場合は、すでに日々のケアが習慣化されているといえます。そうした方が増えれば、たとえ通院が途切れても、ご自身で健康を維持できるようになります。それこそが、当院がめざす予防歯科のかたちです。また、現在通ってくださっている方々が、将来的に通院が難しくなった場合にも、お口の健康を見守り続けられるよう、訪問診療を含めた体制づくりにも力を入れていきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

歯科医院には、「行かされている」のではなく、「自分の意思で行くもの」という意識を持っていただくことが大切です。例えば、「磨き残しが多いから注意される。だから仕方なく通う」という受け身の姿勢では、なかなか予防は長続きしません。むしろ、「きちんと磨いているつもりだけれど、磨き残しがあるかもしれないから確認してもらおう」「今のきれいな状態を保ちたい」という前向きな気持ちで通っていただけたらうれしいです。今、通っている歯科医院でしっかりメンテナンスを続けていらっしゃる方は、ぜひそのまま継続してください。「もっと原因からしっかり見てもらいたい」「検査を受けて自分の状態を把握したい」と感じた方は、お気軽にご相談いただければと思います。