飯島 貴宏 院長の独自取材記事
久里浜糖尿病・甲状腺クリニック
(横須賀市/京急久里浜駅)
最終更新日:2023/07/06
京急久里浜駅前に「久里浜糖尿病・甲状腺クリニック」を開院した飯島貴宏院長。横須賀の総合病院で診療に携わる中で、三浦半島エリアは高齢化が進み、合併症の進行した糖尿病患者が多いにもかかわらず、糖尿病を専門に診る医師が少ない現状に直面。地域と総合病院をつなぐ存在となって地域医療を支えたいと開業を決意したという。患者の気持ちや背景にも配慮した全人的な対応をモットーに、糖尿病を専門としたスタッフと連携しながら、チーム医療で患者を多角的に診ていきたいと語る。高い専門性と、地域医療への強い責任感が印象的な飯島院長に開業の思いやめざすところを聞いた。
(取材日2023年6月14日)
久里浜で糖尿病と甲状腺疾患の専門的な診療を提供
こちらのクリニックの特徴を教えてください。
当院は糖尿病や高血圧、脂質異常症などを診る代謝内科と、甲状腺疾患などを診る内分泌内科を専門としています。糖尿病は国民病とも言われる、とても患者数の多い病気ですが、自覚症状に乏しい場合も多く、不十分な治療のまま長期間経過して合併症が進行していることが少なくありません。血糖値が高いからといって、ただ闇雲に薬を増やしていくだけでは低血糖などの副作用を起こしてしまったり、さらには心疾患や認知症のリスクを高めてしまったりする可能性もあります。当院では、日本糖尿病学会糖尿病専門医である私と、糖尿病について研鑽を積んだ看護師、管理栄養士や臨床検査技師がチーム一丸となって患者さんに合わせた生活指導や薬物治療を行うのが特徴です。院内は、感染対策も考えて、患者さんの動線とスタッフの動線を完全に分けました。また血糖値やHbA1c、尿検査については5分程度で結果がわかるなど、診療が迅速に進むように心がけています。
医師を志したきっかけや専門について聞かせてください。
医師を志したのは、開業医であった祖父の影響が大きいです。ただ医師への道はストレートではなく、当初他の国立大学医学部に進学したのですが、同級生の死にショックを受けていったん医学を諦め、予備校講師をしていた時期がありました。医学部コースなどで指導するにつれ、再び医師になりたいという気持ちが芽生え、三重大学の医学部に入り直しました。この講師経験から、患者さんとコミュニケーションを取りながら指導していく糖尿病内科を選択しました。横浜市立大学内分泌・糖尿病内科に入局後、大学病院や横須賀市立市民病院、横須賀共済病院、平塚市民病院など地域の総合病院で診療に携わってきました。
この地で開業した経緯は?
三浦半島エリアは神奈川県でも有数の高齢化地域であることに加えて、ハンバーガーなどアメリカナイズされた食事が多い一方、新鮮な魚介類が豊富で塩分多めの食生活も目立ち、高血圧や肥満傾向が強いことが特徴的です。そのため、糖尿病が進行し合併症を併発する人が多いことを実感しました。それにもかかわらず糖尿病専門医はとても少なく、特に専門的な医療を必要とする方が、わざわざ中央まで出て来ないと受診できない状況でした。そこで三浦半島の南側にも地域に密着した、専門的な糖尿病診療を受けられるクリニックが必要だと考えるに至りました。また、2025年には市立うわまち病院が久里浜に移転予定で、綿密な連携が期待できることもきっかけとなりました。
糖尿病治療に精通したスタッフが在籍
実際に開業されていかがですか?
開業してみて初めてわかったのですが、レセプトやゴミの処理などありとあらゆる仕事に自分の判断が求められ、今までどれほど病院やスタッフに支えられていたかを実感しました。一方、クリニックだからこそ型に囚われないフットワークが軽い検査や診療などシステムの変更が行えて、診療の説明に時間をかけられるようになったことは良かったと思います。また、患者さんは御自宅から遠い病院に時間をかけて通われていた方も多く、便利になったと喜んでいただいています。糖尿病患者さんは、平均年齢が70~80代の方で歩行が困難な方も多いですから、久里浜の地で開業できて本当に良かったです。
糖尿病専門のクリニックを受診するメリットは?
緻密なインスリンの調整が必要な1型糖尿病の方に十分に時間をかけることができます。また、高血糖の方でも総合病院に入院せずとも、当日外来で血糖測定やインスリンを導入することができます。糖尿病の治療は、以前は血糖値を下げる注射製剤はインスリンしかありませんでしたが、近年GLP-1受容体作動薬という、低血糖を起こしにくく、体重を減らす効果が望め、さらには心保護や腎保護作用をもつ有用な薬剤が開発されました。毎日頻回注射が必要だったのが、1日1回で済むと望めたり、さらには週1回へと負担の軽減がめざせたりするようになったのです。また血糖測定も、リアルタイムCGMという患者さんの負担が少ないものが開発されており、当院は先端の医療の導入を積極的に進めています。
スタッフの果たす役割も大きいのですね。
糖尿病治療は医師が投薬を行って終わりというものではなく、生活指導が肝要です。そのために看護師や管理栄養士、臨床検査技師、医療事務などのスタッフとのチーム医療が必要となってきます。スタッフと役割分担を行い、情報を共有することで、私自身患者さんとじっくり話をする時間を確保するようにしています。それでも看護師や栄養士が確認すると、患者さんが理解できていない場合も少なくなく、チームでの対応の重要性を改めて実感しています。将来的には、理学療法士にも加わってもらい、運動療法にも取り組んでいきたいと思っています。
甲状腺疾患についてはいかがでしょうか?
甲状腺の病気は、ホルモン分泌の異常や甲状腺そのものに炎症や腫瘍ができることで起きるもので、若い女性に多く見られます。免疫異常によって甲状腺が刺激され過剰に機能するバセドウ病や、自己抗体によって甲状腺の破壊が起こり、機能が低下する橋本病が代表的です。症状が多様なので不定愁訴と間違われやすいですが、浮腫みや動悸、急激な体重の増減、首の腫れなど症状が気になる場合は、お気軽にご相談ください。当院では、甲状腺ホルモンは50分程度で結果がわかり、また診察室で私自ら甲状腺エコーを行うことで、迅速に診断を行うことができます。
病診連携で三浦半島の糖尿病診療を支える
患者さんと接する際には、どのようなことを心がけていますか?
医学生時代、患者中心の医療について研究を行い、患者さん自身が満足できる医療をめざしてきました。とはいえ、勤務医時代は、重篤な患者さんの最後の砦として運び込まれる病院に勤務していたため、限られた短い時間の中でできる治療を行ってきました。しかし、このクリニックでは、患者さんの望む人生の在り方と、医師が考える適切な治療をすり合わせて、患者さんが満足されて納得できるところをゆっくり時間をかけてめざしたいと思っています。患者さんがメリット・デメリットを理解した上で、選ばれる治療法や生活スタイルを尊重したいと思っています。糖尿病が進行して、失明や人工透析になる苦しさもよく知っているので、患者さんにどう生き方を選択していただくか、その辺りが一番難しいところです。
専門の医師の立場から、どのような展望がありますか?
糖尿病は従来、あまり治療法がない病気というイメージがありました。糖尿病内科も新しい診療科です。2000年代に入ってどんどん新薬が開発され、糖尿病治療は目覚ましく進歩し、患者さんのリスクや負担を軽減しながら、適切な薬を選択できるようになってきました。糖尿病専門医となった今でも常に勉強が欠かせません。その知識をもって、今後は多くの糖尿病患者さんが専門的で適切な治療にアクセスできるよう、総合病院だけではなく他のクリニックとも連携しながら、地域を支えていきたいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
当院は、専門的な治療を地域で身近に受けていただくことをめざすクリニックです。糖尿病は、決して治ることはなく、長く付き合っていかなければならない病気ですから、ともに歩くものとして、気軽に相談していただける温かいクリニックで在りたいと思っています。最近、インスリン注射だけでなく、患者さんのリスクや負担の軽減を図りながら効果が期待できる治療法も登場していますので、糖尿病と診断された方はもちろん、健康診断で高血糖や高血圧が指摘された方などに気軽に受診していただきたいと思います。また甲状腺疾患も専門家が少ない領域ですので、地域で専門的な診療を行い、お役に立ちたいと思っています。