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篠原 一之 院長の独自取材記事

キッズハートクリニック外苑前

(港区/外苑前駅)

最終更新日:2025/08/12

篠原一之院長 キッズハートクリニック外苑前 main

子どもに共感し、味方になる。良いところを褒めてあげる。穏やかにそう語るのは「キッズハートクリニック外苑前」の篠原一之院長。長崎大学卒業後、児童精神科医として研鑽を積みながらも、より科学的なエビデンスを求め脳生理学研究室に入る。親子の五感を介したコミュニケーションや家族愛の脳科学を探究し、大学教授として長年研究と教育に尽力。そして「研究成果を診療で生かしたい」と、2023年に外苑前で開業。3歳からの児童精神科に加え、近年増加する思春期女子の双極性障害の適切な治療にも注力。また、保護者を対象に「親ごころ」の外来も開始予定だ。専門職チームによる包括的支援や独自の診療体制など、家族全体を支える仕組みづくりへの思いを聞いた。

(取材日2025年6月24日)

研究者から臨床医へ、実現する理想の児童精神科の医療

医師、そして児童精神科を選ばれた経緯をお聞かせください。

篠原一之院長 キッズハートクリニック外苑前1

高校時代、シュバイツァーに憧れ、アフリカでの医療活動を夢見ていました。誰もやらないような分野に挑み、自分の存在価値を見い出したかったのです。児童精神科を志したのは、大学の時に受けた衝撃的な講義がきっかけです。私の恩師である精神科の教授の講義で、統合失調症の子どもが牢屋のような部屋に閉じ込められている現実を映したスライドを見ました。裕福な家庭でも実際にそうした対応が行われていると知り、「この子たちを救いたい」と強く思いました。また、その恩師は「うつ病は脳内伝達物質の異常による」と日本で初期に唱えた方で、その考えを子どもの治療にも生かせるのでは、と感じたことも進路選択に影響しました。

一度研究の道に進まれたそうですね。

長崎大学卒業後、最初から児童精神科を志し、国立精神・神経センターや東京都立梅ヶ丘病院で研鑽を積みました。ただ当時は、子どもの精神疾患の診断基準がまだ曖昧で、科学的根拠に乏しい面も多くありました。そのため、客観的な指標で子どもの心の状態を捉えたいと、脳科学研究の道へ進みました。しかし、大学教授として研究を続けながらも「いつか臨床に戻ろう」と思っていました。そして、長年研究で培った知見を実際の診療に生かしたいという思いが強くなり、2023年にこの地で開業しました。

外苑前という立地を選ばれた理由は?

篠原一之院長 キッズハートクリニック外苑前2

アクセスの良さが決め手でした。銀座線に加え、青山一丁目駅からは半蔵門線や大江戸線も利用でき、どこからでも来院しやすい立地です。また、落ち着いた環境にあるため、親御さんにとっても通院時の負担が少ないと考えています。また、院内はデザイナーの方と相談しながら、いわゆる医療施設らしさをなくし、サロンのような温かみのある空間をめざしました。木のぬくもりを大切にし、大正ロマン風の格子戸も取り入れています。待合室はご家族全員でゆったりと過ごせる広さの設計、診察室からは外苑前のイチョウ並木が一望できます。都心にいながら、自然を感じられる環境を大切にしています。

院内のテーマは「五感で感じる空間」だとお聞きしました。

子どもとの意思疎通では、言葉よりも五感を通じたやりとりがとても大切ですから、院内はこだわり抜きました。例えば、小鳥のさえずりが天井から、川のせせらぎが足元から聞こえるようにスピーカーを配置し、まるで森にいるような音の立体空間をつくっています。目に映る景色では、院内にたくさんの緑を置き、窓の外に広がるイチョウ並木とつながるようデザイン。また診察室の鉄のドアが冷たい印象を与えないよう、患者さんの視線から隠すこまやかな工夫もしました。触れる物にもぬくもりを感じていただきたく、家具には手触りの優しい天然木を使いました。診察室の机はデザイナーの方が一から手作業で仕上げています。初めての診察はどんな方でも緊張するものですので、五感を通じて安心してもらえる空間づくりは診療と同じくらい大切だと考えています。

思春期の双極性障害の診療と親の支援も

特に注力する診療について教えてください。

篠原一之院長 キッズハートクリニック外苑前3

当院では、ASD・ADHDなどの神経発達症や不登校、分離不安症、脅迫症など、児童精神科全般に幅広く対応しています。子どもの背景を大切にしながら、発達段階に応じた診療を行っており、その中でも最近特に増えているのが、思春期の女の子に多い双極性障害です。気分の浮き沈みを周期的に繰り返すものですが、うつ病と誤診され抗うつ薬が処方されているケースも多くみられます。適切に診断し、双極性障害に合った治療をすれば、症状が安定する可能性は十分にあります。思春期特有のストレスや発達特性が絡むことで症状が複雑化するため、正確な見立てがとても重要ですね。

診療で大切にされていることを教えてください。

大切にしていることは、子どもと仲良くなることです。距離を詰め、同じ目線で話すことを意識しています。「学校でこんなことがあった」と話してくれたら、「つらかったね」と子どもの立場に立って共感し、時には味方なってあげる。そうして少しずつ信頼関係を築いています。また、必ず良いところを褒めることも大切です。来院する子たちは自己肯定感が低くなっていることが多いので、「よく頑張ったね」と認めてあげると、子ども自身が前向きな気持ちで通ってくれるようになります。こうした子どものモチベーションこそが、治療の質を高める原動力だと考えています。

「親ごころ」に関する外来を立ち上げる予定だそうですね。

篠原一之院長 キッズハートクリニック外苑前4

9月頃から開始予定です。実は診療をしていると、親御さん自身が深く悩んでいることが本当に多いです。医師として「お子さんとこう関わってあげてほしい」とお願いをすることはありますが、親御さんも疲れ切って余裕がない、そんなケースをたくさん見てきました。これまでの経験でも、親御さんとの会話で、最初は子育ての悩みから始まりますが、診ていくとご自身がうつ状態だったり、発達の特性を持っていることも少なくありませんでした。中には、自身の幼少期に受けた傷や親子関係が影響し、「子どもが幸せそうだと、なぜか自分はつらくなる」と複雑な感情を抱える方もいます。そこで、この外来はお子さんが当院に通っていなくても利用できるようにし、親御さんを主役としたサポートの場にしたいですね。

チーム医療と未来への展望

多職種チームでの診療体制について教えてください。

篠原一之院長 キッズハートクリニック外苑前5

当院では、医師、看護師、公認心理師、ケースワーカーが連携し、子どもとご家族を支えています。子どもは自分の力だけで環境を変えることが難しく、学校や行政との連携が欠かせません。私から学校に働きかけることもあれば、ケースワーカーが調整役となって支援体制を築くこともあります。また、子どもは感情や困り事を言葉にしづらいことが多いため、公認心理師が描画法や遊戯的手法などの投影的アプローチを通じて、非言語的な側面から心の状態を把握し、心理療法につなげています。親御さんとお子さん双方の声を丁寧に受けとめるには、個々の専門性を生かした連携と役割分担が不可欠です。

今後の展望をお聞かせください。

今後、「親ごころ健康診断」という新たな取り組みも開始予定です。これは、ウェブ上の問診と心理検査を通じて、親御さんの悩みが子育て上の一時的なものか、専門的な支援が必要な状態かを知るための心の健康診断です。これまで多くの診療で実感したのは、親御さん自身が支えられることで、子どもの支援にもつながるということ。親御さんの努力を評価し、自信を失わないようサポートすることがとても大切だと考えました。また、当院で独自開発したウェブ問診システムで、初診で来院される前に自宅で答えていただくことで、初診当日からスムーズに診療を行える体制を整えています。2週間以内に予約が取れるよう調整しているのも、困ったときにすぐ相談できる場所でありたいという思いからです。

読者へのメッセージをお願いします。

篠原一之院長 キッズハートクリニック外苑前6

子育てに正解や間違いはないと思っています。誰もが試行錯誤を繰り返しながら手探りで子どもと向き合っています。うまくいかないからといって、それは失敗や間違いではありません。私自身の研究でわかってきたことは、親にもさまざまなタイプがあり、愛情表現の仕方もそれぞれだということです。スキンシップを多く取る関わり方が自然な人もいれば、一定の距離を保ちながら見守る関わり方が心地良い人もいます。そうした特性は、無理に変える必要はありません。そのままのあなたで大丈夫です。子育てに悩むことは決して特別なことではありません。困った時は、どうぞ気軽にご相談ください。一緒に考えて、少しでも気持ちが楽になるようお手伝いができればと思っています。

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