3人の医師が協働して提供する
幅広い悩みに対応した訪問診療
りょうハートクリニック
(吹田市/岸辺駅)
最終更新日:2025/04/11


- 保険診療
高齢化に伴い、訪問診療に対するニーズが高まっている。その一方で、どのような人が利用できるのか、どういった内容の診療が受けられるのか、あまりよく知らないのが現状ではないだろうか。訪問診療を専門とする「りょうハートクリニック」では、心臓血管外科と循環器内科、脳神経外科と精神科、泌尿器科と、それぞれに異なる専門領域を持つ3人の医師が、互いに連携を図りながら訪問診療に対応している。同院の訪問診療の特徴や、訪問診療で提供される診療の内容などについて、松浦良平院長、西田誠先生、石川匠先生の3人に聞いた。「在宅でこんなこともできるのか」と、訪問診療の見方が変わる人も多いかもしれない。
(取材日2025年3月25日)
目次
3人の医師が各自の知識や経験を生かし、専門性が求められる診療にもしっかり対応
- Qこちらには各分野の専門家が在籍しているそうですね。
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A
▲医師たちが連携し、一人ひとりの患者に向き合って診療を進める
【松浦院長】3人の医師の専門領域がそれぞれ異なるのが特徴です。私は心臓血管外科と循環器内科を専門としており、心不全の患者さんや補助人工心臓をつけている方や、退院後の生活に不安を感じている方などに対応しています。
【西田先生】私の場合、脳神経外科で15年ほど診療を経験した後、精神科の診療にも携わるようになりました。院長から心の問題を抱えている患者さんが多いと聞き、お役に立てればと考えたからです。
【石川先生】市立東大阪医療センターの泌尿器科を経た後、当院で訪問診療に携わっています。病院での診療経験を通して、在宅での対応が必要な患者さんの多さを実感しており、訪問診療に取り組むようになりました。
- Q訪問診療で専門的な治療を提供しているのは珍しいですね。
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A
▲患者の家族とも連携を取り、負担を減らせるよう努めている
【松浦院長】患者さんはさまざまな疾患や症状を抱えており、専門的な知識が必要になる場面も少なくありません。3人とも患者さんの全身を診るという点では、しっかり対応できるのですが、異なる専門領域を持つ医師がそれぞれに力を発揮して、患者さんにより専門性の高い診療を提供したいと考え、現在の体制を採用しました。依頼を受けた場合は、主となる疾患に合わせて、3人のうち誰がその患者さんを担当すべきかを決めます。複数の疾患がある患者さんについては、それぞれの重症度を踏まえた上で、複数で診ていけるのも当院の強みです。医師間で患者さんの情報をきちんと共有する必要があり、医療機関向けのツールを活用しています。
- Q精神科ではどのような治療に対応していますか?
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A
▲精神科を担当する西田先生は、脳神経外科での診療経験もある
【西田先生】心臓の手術が成功したのに動けないなど、ストレスが具体的な体の障害となって現れている方、うつ状態にある方、統合失調症の患者さんで向精神薬の処方に配慮が必要な方もおられます。私の場合、脳神経外科での診療経験があるので、糖尿病や高血圧症の管理などを行いながら対応しており、脳梗塞後のうつ、脳血管性の認知症の診療にも、脳神経外科での経験が役立っています。一方、高齢化に伴い認知症の患者さんも多いですね。患者さんとご家族との意思疎通がうまく取れずトラブルになる周辺障害と呼ばれる問題があることも、訪問診療を始めて実感しました。この場合は薬物療法を行い、ご家族の負担軽減につなげています。
- Q泌尿器科ではどのような治療に対応していますか?
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A
▲泌尿器の疾患が必要な患者に合わせて訪問診療を行う
【石川先生】現在は、前立腺がんのホルモン療法を受けたいけれど、通院が難しいという患者さんが多いですね。泌尿器の疾患、手術のために排尿が困難となった患者さんの場合、尿を体外に排出するために膀胱留置カテーテル、腎ろう、膀胱ろうをつけておられ、定期的な交換が必要です。泌尿器科の医師でないと処置が難しく、抜けてしまうと救急搬送や速やかな受診が必要となるため、訪問診療で交換を希望される方は少なくありません。また、当院ではお看取りにも対応しています。悪性腫瘍で追加の治療が難しく、自宅で余生を過ごしたいといった場合は、アプリツールを活用して介護関係と連携しながら、緩和ケアも含めて対応します。
- Q心臓血管外科ではどのような治療に対応していますか?
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A
▲それぞれが持っている専門的な知識と経験で対応をする
【松浦院長】お薬が必要だけど通院が困難という患者さんに対して、お薬の処方に加えて、継続して診ながら種類や量を調整できるのが訪問診療のメリットだと思います。私が専門的に対応している補助人工心臓をつけている患者さんの場合、月に1回病院への定期通院が必要ですが、突然調子が悪くなることも多いので、訪問診療で対応しています。心臓の手術は1日で済みますが、患者さんはご自宅で長く生活していかなければならず、そうした患者さんをしっかり受け止めたいですね。表面上は見えない患者さんやご家族のお悩みをくみ取るため、診療を終える際には「何か聞いておきたいことはありませんか?」などの言葉がけを心がけています。