中山 恵介 院長の独自取材記事
大塚小松台眼科
(宮崎市/宮崎駅)
最終更新日:2023/09/20

JR宮崎駅から国道10号線を西へ、大淀川を渡って北上した小松台の閑静な住宅街に2023年1月に開業した「大塚小松台眼科」。どの世代の人にも気軽に来院してほしいと、建物は足を踏み入れやすい優しいイメージで設計を依頼したという中山恵介院長。開業にあたって掲げた理念は、「正確に診察し、きちんと伝え、正しく治療する」こと。眼科医になる前は研究者としてのキャリアを持ち、客観的に検査データや所見を確認した後に、根拠に基づいた治療を丁寧に行うことをモットーとしている。中山院長のこれまでの経歴やクリニックのこと、今後の展望などについて語ってもらった。
(取材日2023年5月10日)
研究者から眼科医へ、そして地域に根差した診療を
研究者としての経歴をお持ちだと聞きました。

子どもの頃から研究者になりたいという希望を漠然と抱いておりまして、「研究するなら医学が一番面白そうだな」という、今考えれば、いささか軽々しい考えで信州大学の医学部へ進学しました。大学卒業後、細菌学教室で博士課程へと進み、希望どおり研究者としての道を歩み始めました。信州大学が位置する長野県松本市からこちらに移り住んだのは、当時の研究指導教官が宮崎大学の教授に就任した際に、「一緒に仕事しないか」と声をかけてくださったことがきっかけでした。私が29歳の時です。宮崎大学で医学部感染症学講座の助教となり、病原性大腸菌やツツガムシ病リケッチア等のゲノム研究に打ち込んでおりました。
眼科医に転向されたのはなぜですか?
研究を長く続けているうちに、解析対象がヒトや疾患を離れ、微生物そのものになってきていることに戸惑いを感じ始めたんですよね。微生物そのものの研究は理学部や工学部でも盛んに行われていますし、医師である自分が取り組むべき研究テーマなのだろうかと思い悩む毎日でした。もっとダイレクトに臨床に関わる仕事をしたいという想いがいよいよ強くなり、2011年に宮崎大学眼科学教室に入局させていただきました。眼科を選んだのは感覚器官としての眼の特殊性に惹かれたことや、内科的加療から外科手術まで幅広い内容の診療ができることが大きな理由でした。当時、眼科と共同研究をしていたことも影響しましたね。大学病院や県立病院などで研究活動を続けながら眼科医として臨床の研鑽を積み、これまで難病を含むさまざまな疾患の診療に携わってきました。
開業されてから半年たちました。いかがですか?

患者さまの年齢層は幅広く、主訴に関しても偏りがない印象です。診療対象となる疾患はコモンディジーズから重症例までバリエーションに富んでいて、大学や県病院におけるこれまでの経験が生かせています。他院よりご紹介を頂くことも多いですし、セカンドオピニオンを求めて来院される患者さまもいらっしゃいます。私の専門は眼感染症やブドウ膜炎なのですが、この分野における患者さまの加療にも積極的に取り組ませていただいております。研究職時代には科学的なものの見方、つまり「主観を排し、対象を客観的・多角的に見て、証拠を積み上げることで真実を明らかにする」という方法論をたたき込まれましたが、現在、この姿勢が患者さまを診察・加療する際に自分の強みになっていると感じます。現在の眼科医としての私はやはりこれまでの研究生活の延長線上にあるんだなと改めて思います。
正確に診察し、きちんと伝え、正しく治療する
スッキリした印象のクリニックですね。

どんな世代の方でも足を踏み入れやすいオープンでやわらかい外観の建物をめざしました。ちょっと眼がかゆいくらいでも気軽に立ち寄っていただけるような雰囲気です。院内については感染制御を念頭に置きながら、シンプルで機能性を重視した設計をお願いしました。1階は一般の検査・診察室・処置室等のほか、充血診察室、子ども用の個室検査室やキッズスペースも準備しています。手術室・術前処置室・リカバリー室は2階に設けています。感染対策やプライバシー保護の面から、これから手術を受ける患者さまと手術を終えた患者さまが動線的に交わることがないように循環型の間取りとしました。当院での手術はすべて日帰り対応ですが、術前術後に安心して過ごしていただけるようご家族と過ごせる広めの個室リカバリー室を3部屋用意しています。リラックスして快適に手術を受けられると患者さまにご好評いただいています。
クリニックの理念や診察で心がけていることを教えてください。
当院の理念は「正確に診察し、きちんと伝え、正しく治療する」というものです。所見を客観的に多角的に観察し、診察で得た情報や治療方針を患者さまと適切に共有した上で、きちんとした根拠(エビデンス)に基づいた治療を丁寧に正確に行うという診療に対する自分の理想を常に意識するために掲げています。言葉にすると簡単に聞こえますが、実行していくには不断の努力が必要で、自分に発破をかける毎日です。また、それぞれの患者さまに寄り添った診療を行うために、できるだけアットホームな雰囲気の中で診察するよう心がけています。診察室で笑いが起こることも度々あり、そんな時は患者さまと良い関係でいられることをうれしく思いますね。
診察で工夫していることはありますか?

施行した検査や治療については、その意義や結果を患者さんにできるだけきちんと、わかりやすく伝えたいと考えています。そのために、患者さんやご家族と一緒にのぞき込める場所にモニターデスクを設置して、積極的に検査画像を提示しながら説明するようにしています。また、説明に充てる時間を稼ぐため、同じ形式の診察室を2ユニット用意し、一診で診察している間に、二診で次の患者さんを呼び込む準備をしてもらうようにしています。2つの診察室を行き来するスタイルで診察していますが、私にとっては座ったままで診察を続けるよりもストレスが少なくて気に入っています。
誰もが安心して治療が受けられる環境づくり
他の施設との連携もとられていますね。

高度医療機関と太いパイプがあるのも当院の強みです。私も自院で積極的に手術を行っていますが、患者さまを第一に考え、適切な場所で適切な処置が受けられるよう常に配慮しております。入院や全身管理が必要なケースでは大学病院や県病院等に紹介しますが、こういう時には医局で外来医長をしていた経験が役に立ちますね。私もこれまで、急患を含む難症例を引き受ける側に10年以上おりましたので、患者さまを紹介させて頂く医療機関の先生達の大変さを身にしみて理解しております。そうしたバックグラウンドがあるからこそ、安心して患者さまをお任せすることができると思っています。紹介先機関や先生方には今後も最大の敬意を払いながら良好な連携がとれるよう関係を維持していきたく思います。
スタッフについての思いはありますか?
お店や飲食店に限らず、クリニックも結局はスタッフが作り上げるものですよね。どれだけ良い設備を備えていても、そこを運用するスタッフが悪ければ診療のクオリティーや患者さまの満足度は大きく下がってしまいます。ですから、開業するにあたり、志を同じくする優れた人材が次々に手を挙げてくれたことは本当に幸せで、みんなには感謝しかありません。手前みそになりますが、患者さまへの寄り添いも素晴らしくいつも助けられています。小さなクリニックでは自分の得意な分野だけこなせば良いというわけにはいかず、業務内容が多岐にわたることでいろいろと負担がかかっていると思います。できるだけストレスが軽くなるように、明るく楽しい雰囲気の職場づくりに気を使っています。
最後に先生ご自身の話をお聞かせください。

プライベートな時間は、お酒を飲みながら、集めたレコードを気に入ったステレオシステムで聴いて過ごすことが多いですね。高校時代から集めているレコードはついに1万枚を超えてしまったんですが、多くなりすぎると聴きたい盤がどこにあるのか、探せなくなるんですよね。それで、近頃、友人に譲ったりしてようやく減らし始めました。体を動かすことも好きでロードバイクに乗っています。以前は週末毎に100km以上走っていたんですが、今はとても無理で心拍数と相談しながら25〜50km程度の距離にとどめて走るようにしています。最後になりますが、ここまで本当にたくさんの方々にご協力・ご尽力いただき、自分が理想とする診療が理想とする環境でできていることに大きな幸せを感じながら毎日を過ごしています。来院してくださる患者さまに感謝しながら、これからも一所懸命、診療に励んでいきたいと思います。