岡田 昇馬 院長の独自取材記事
救急・在宅シャイニークリニック
(松山市/松山駅)
最終更新日:2023/12/19

地域のかかりつけ内科として愛されてきた新谷内科クリニックを継承するかたちで2023年2月に開院した「救急・在宅シャイニークリニック」。祝日や夜間、一次救急として、入院を必要としない軽度の救急診療を臨機応変に受けつけている愛媛県内では数少ない私設の救急クリニックだ。岡田昇馬院長は、救急科の医師としてのさまざまな経験を生かし、発熱や腹痛、頭痛、めまいや吐き気、軽度の創傷など日常的な診療にも対応している。さらに、月・水・木曜の午後は外来通院が困難な患者を対象とした訪問診療の時間とし、胃ろうや経鼻経管栄養などの処置にも対応。「患者さんの希望に耳を傾け、患者さんやご家族が選択できる医療の提供をめざしています」と語る岡田院長に、クリニックの特徴や想い、注力している診療について話を聞いた。
(取材日2023年11月17日)
救急医療の現場で従事してきた経験を生かして開院
最初に、先生のご経歴を簡単に教えていただけますか。

2006年に高知大学医学部を卒業後、宇治徳州会病院での初期研修を経て、近畿地方で研鑽を積みました。そこでは、一次救急だけでなく二次救急・三次救急も担当し、初期治療から入院後の主治医まで幅広く行いました。そこから当院の開院まではフリーランスの医師として愛媛県内や香川県で訪問診療や二次救急の輪番日の救急対応などを担当していました。離島の診療所で勤務していたこともあります。現在も大洲中央病院と松山まどんな病院では、当院休診日に限りますが二次救急の輪番日に勤務している事もあります。
一次救急のクリニックとして開院された経緯はどういったものでしょうか?
救急医療体制では、自力で来院でき比較的軽症な方を対象とした一次救急、紹介や搬送で来院する二次救急、一次・二次救急では対応が難しい重症患者に対応する三次救急となっているのですが、大きな病院の救急科は一次救急から三次救急のすべてをまかなうケースが大半です。数としてはもちろん一次救急の患者さんが一番多いのですが、その受け皿が少ないことから二次・三次救急医療機関に一次救急患者さんが受診せざるを得なくなり、救急医療体制がひっ迫している状況下にあります。日中や平日の来院が難しい人も受診でき、症状に応じた医療機関への紹介を行える体制を愛媛にもつくることで、少しでもその現状を解決できればという気持ちで当院を立ち上げました。
軽症の方でも気軽に来られるのですね。

一次救急、二次救急、三次救急は患者さんがそれを選んで来られるというわけではなく、あくまで「診察をした結果そうだった」というものなんです。ですので、一次救急、二次救急の扱いになる症状“だと思って”来られた患者さんの中にも緊急性の高い三次救急の患者さんが紛れているということを考えた上で診療しています。一次救急だと考えられる症状だから絶対に大丈夫というものでもなく、たとえどれだけ割合的に少ないとしても、紛れている緊急性の高い患者さんを可能な限り見逃すことなく診療するということを常に心がけています。
相談しやすい救急・在宅のホームドクターとして
どういった症状で来られる方が多いですか?

今多いのは発熱ですね。発熱者専用の外来も当院は予約制を取っていないので、お待たせしてしまう事も多いですが、可能な範囲内で対応させていただいています。発熱以外だと、縫う必要があるような外傷や骨折、打撲も多いですね。翌日整形外科に行けるような形に固定する処置は当院で対応可能です。緊急的な治療を要する場合は、緊急で専門の先生に診ていただけるように紹介をします。詳しい診断が必要な時は、後日専門とする先生の診察をお勧めさせていただきます。
かなりオールマイティーに対応していただけるんですね。
はい。医療の範囲内であれば幅広く対応しています。「目にゴミが入ったようで痛い」と言って来られる方もいらっしゃいます。「そんなことで」と思われる方もいるかもしれませんが、実は角膜に異物が当たっている状態が続くと潰瘍ができてしまう恐れもあるので、なるべく早く除去する必要があるんですよ。体から「痛い」という反応が出ている時点でなるべく早い処置が必要な場合が多いので、例えば目の場合だと、点眼の麻酔薬を常備していて洗えるようにしています。
何科にかかれば良いかわからない場合も来院して大丈夫ですか?

もちろん大丈夫ですよ。実際に「これはどうしたらいいですか?」という相談に来られる方はたくさんいらっしゃいます。例えば「皮膚に湿疹のようなものができたのですが、これは皮膚科ですか? それとも内科に行ったほうがいいですか?」といったようにです。当院でわかる範囲内のものであれば診ますが、診察をして症状の原因探索や症例が少なく専門とする医師の診断が必要だと判断した場合などはその旨をお伝えし、必要に応じて専門病院・クリニックを紹介させていただきます。ですので、何科にかかれば良いのかわからない場合でもお気軽にご相談ください。
患者や家族の思いを尊重する医療の提供をめざす
訪問診療にも力を入れられているそうですね。

はい。訪問診療は今後特に力を入れてやっていきたいことの一つです。また愛媛県立中央病院や松山赤十字病院、四国がんセンターからも在宅医療の話をいただくこともあり、訪問診療のニーズも徐々に高まっているように感じます。当院では救急科として、救急車を呼んで病院に搬送された場合の話や集中治療センターでの経験を踏まえた話などもできますし、「できれば家で看たい」という方には、家と病院それぞれの場所で可能な治療を説明し、提案することも可能です。これまで説明を重ねることで患者さんご本人やご家族の不安を減らし、家で看たほうが良かったのではと感じることもあったので、当院ではそういった説明をしていくためにも在宅医療には一層注力していきたいと考えています。
診療において先生が大事にされていることを教えてください。
救急科は不安を持ってこられる患者さんやご家族の方が多いので、まずは患者さんが何に困っているのか、また何が一番気になっているのかということにしっかり耳を傾けた上で診療を進めることを大事にしています。「これが医療として最適だからこうしましょう」という一方的な提案ではなく、まずは患者さんやそのご家族の話をよく聞くことを第一にし、その上でどういう治療の選択肢があるのかをこちらが提示して最終的には患者さんご本人が選択できる医療を一緒に形作っていきたいと思っています。夜間診療を行っていることで、話を聞きたいご家族が夜に来院いただくこともできます。仕事が終わった後や患者さんご本人がゆっくり休まれているタイミングで検査の結果を見ながらご家族がゆっくり話を聞けるというのは、当院ならではだと考えています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

普段あまり医療機関にかかることがない方にとっては、抱えている症状があるものの何科へ相談すれば良いかわからなかったり、病院に行くことそのものにハードルを感じていたりという場合もあるかと思います。けがや病気のことでしたらどんな相談にも乗りますので、お気軽に当院へ足をお運びください。予約を受けつけていないのでお待たせすることもあるかとは思いますが、来ていただけましたら可能な範囲内で対応させてもらいます。救急の病院なので普段は行く用事がないに越したことはありませんが、いざ困ったことが起きたときには思い出して相談していただけると幸いです。