浅田 愼太郎 先生の独自取材記事
おおかみこころのクリニック
(新宿区/新宿駅)
最終更新日:2024/04/18
新宿駅西口から徒歩約3分。にぎやかな繁華街にあるビルの5階に2023年6月オープンしたのが、「おおかみこころのクリニック」だ。ホッとするような温かみのある院内の雰囲気が印象的な同院は、精神疾患に幅広く対応する中で、適応障害やうつ病など働く世代に多い精神疾患の診療に注力。場所や診療時間など、仕事などで忙しい人でも受診しやすい環境を整えることで、病気が悪化する前に患者が元気を取り戻せるようサポートすることをめざしている。そんな同院の診療部長で、「患者さんに治療を押しつけるのではなく、一緒に決めて進めていくことを一番大事にしています」と話す浅田愼太郎先生に、さまざまな話を聞いた。
(取材日2023年5月7日/更新日2023年7月3日)
受診しやすい精神科・心療内科のクリニックをめざす
最初にクリニックを紹介していただけますか?
当院は、6月1日に開院した精神科・心療内科のクリニックです。都内でも中心部で人通りもかなり多い新宿という場所で、30〜40代の比較的若い働く世代の方々に診療を提供することをめざしています。私は、これまでにクリニックや大学病院、精神科専門の病院などで働いてきましたが、働く世代の悩みは最近増えてきているように感じていました。同時に、精神科や心療内科に対する偏見が少しずつ減ってきて、受診につながりやすくなってきたように感じていました。一方で、予約が取れない、日中は仕事が忙しくて通院できないなど、なかなか受診できない現状もあります。そこで、当院は日中はもちろんですが夜間診療をメインに、不定休にして土日や祝日も診療を行うなど受診しやすい環境を整えることで、新宿エリアで働く世代をサポートしていきたいと考えています。
ユニークな院名ですが、どのような想いが込められているのでしょうか?
今もお話ししたように夜間診療をメインにしていく中で、夜行性の動物をクリニックの名前に入れたいな、と思いました。夜行性の動物について調べているうちに、これは私も知らなかったのですが、オオカミが非常に仲間思いな動物であることを知りました。凶暴や肉食など、あまり良くないイメージを持っている人もいるでしょう。しかし、本当は知能が高く、群れで行動して、弱っている仲間がいると助けるなど、仲間想いな動物なのです。実際、日本では古くから人々を護る動物として、物語などに登場してきました。われわれもそんなふうに皆さんの健康を守るお手伝いができればと思い、「おおかみこころのクリニック」と名づけました。怖いイメージにならないようにひらがな表記にして、ロゴもかわいらしくしてあります。
特徴は、どのようなところですか?
まずは、誰でもいつでも来られるところです。新宿駅からも徒歩数分で夜も10時まで、土日祝日も診療を行うなど利便性が高く、場所もクリニックビルではなく飲食店などが入っている一般のビルなので、受診しやすいと思います。加えて、誰でもというのは年齢や性別もそうですが、精神疾患に幅広く対応していることも特徴です。私は、これまで認知症にも力を入れてきましたし、当院にはアルコール依存症や統合失調症を専門にしてきた医師や女性の医師も在籍しています。また、かなり重症の方には連携している病院を紹介して、入院につなげられるようにしてあります。さらには、美容皮膚科の分野にも対応しています。実は、精神疾患と美容は結構親密に関係しているところがあり、相談に応じられるようにしています。
適応障害とうつ病の治療に力を入れる
力を入れていきたいことは何ですか?
働く世代に多く、明確なストレスが原因で気分が落ち込む、倦怠感などの症状が出る適応障害。加えて、やはり患者数が多いうつ病などの患者さんを救っていきたいと考えています。適応障害は、会社や学校、家庭などで大きなストレス要因があることが考えられます。最近ではテレワークの影響で、上手にコミュニケーションが取れないことなど、社会が複雑化したことから増えている側面もあるでしょう。それによって眠れない、気分が落ち込む、不安など、あらゆる症状が起きる可能性があります。そして、適応障害の患者さんが我慢をしすぎて心や体を壊してしまったケースを、これまでたくさん診てきました。本当に限界になって仕事を辞めざるを得ないことになるよりは、早めに1ヵ月だけ仕事をお休みして、回復を図ってから仕事に戻る。そのほうが本人、そして社会のためになると思います。ですから、早めに患者さんをすくい上げることを意識しています。
うつ病についても教えてもらえますか?
適応障害は明らかに仕事が忙しいなど、症状が出ても無理はないような状況があることが多いです。ですから、その要因に応じた対策を打つことで比較的速やかに快方に向かうことが望めるのが適応障害の特徴。一方、うつ病の場合は、明確な原因がないことが多く、仕事を休んでも気分が落ち込んだままなど、現れる症状としては適応障害と一緒ですが、症状が長く続くことが多いのが特徴です。何かしらの症状がある患者さんの多くは、うつ病ではないかと心配して診察を受けに来ますが、うつ病なのか、適応障害なのかを自分で判断する必要はないと思います。悩みがあってモヤモヤしていて、体にも不快な症状があるのにどこに相談をすれば良いのかわからない。そういう時には、まずは気軽に相談に来ていただくことが大切だと考えます。
診療の際に心がけていることはありますか?
患者さんに治療を押しつけるのではなく、一緒に決めて進めていくことを大事にしています。特に、精神疾患は生い立ちから仕事などの環境や生活の背景など本当に人それぞれな中で、発症した理由も全然違います。ですから、それらをよく聞き取りながら、患者さんと一緒に意思決定をして、納得していただきながら治療を進めること。その患者さん自身の「納得感」をすごく大事なことだと考えています。例えば血圧の薬は血圧が高い人が飲めばだいたいは下がることが望めますが、精神疾患の薬は、経過を予測することが難しい場合があります。それは、生物学的な影響もあると思いますが、薬だけに頼るのでなく、治療のために生活も見直していこうというような前向きな意識も効果に関わってくると思うのです。そのためにも患者さんには納得してもらって、もしこれで駄目だったら次にはこういうのがあるというように安心感を与えることも大切にしています。
悩みや体調不良がある時は、いつでも相談してほしい
ところで、先生はなぜ医師を志したのですか?
母が薬剤師だったので、医療にふれる機会が多かったこと。加えて、昔から何よりも心や脳といったところに興味がありました。今は医学もかなり発展して研究も進んでいますが、脳や心についてはわからない部分がかなり残っています。今でも学問的な興味はかなり大きいですね。医学部を卒業してからは精神科だけの病院や大学病院などいくつかの医療機関で勤務をしていたのですが、そのような中で精神科にかかりたいけど予約が取れないという話がすごく多かったのです。それで、自分で開業すればもっと多くの患者さんのいろいろな悩みの相談に乗れるのではないかと考えて今回、自分で開業することにしたのです。
どのようにリフレッシュしていますか。
今は、子どもと遊ぶことですね。2歳になったくらいなので、ちょっとした空き時間に一緒に公園に行くのが一番のリフレッシュです。そういう意味では、最近では子育てに積極的に参加しなくてはいけないけど逆に会社は理解してくれないなど、男性でも子育ての悩みや、そこから来るストレスってかなり多いと思います。私も子育てをしながら働いている一人の父親ですから、そういうことで悩んでいる人も、ぜひ相談に来てほしいですね。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
まず、私は薬などがあまり効かない抵抗性のうつ病などに効果が期待できるTMSと呼ばれる、磁場を使った治療の研究もしてきましたので、当院でも今後の展開としてTMS治療を取り入れていきたいと考えています。さらには、臨床心理士も雇用する予定で、カウンセリングや心理検査なども今後は対応していきたいと思っています。そして、当院は精神科・心療内科の利用しやすい、相談しやすいクリニックをめざしています。私も働き世代の皆さんと年齢が近いですから、どんなことでも話しやすいのではないでしょうか。仕事や学校など日常生活の何かの悩みや不安、体調不良などでお困りのときは、いつでも相談いただきたいと思います。