青山 剛士 院長の独自取材記事
あおやま訪問・救急クリニック
(宮崎市/宮崎神宮駅)
最終更新日:2023/05/12

宮崎市中心部から北西へ、通称宮崎高鍋線の県道44号沿いに田園や団地、住宅が広がる池内町にある「あおやま訪問・救急クリニック」。2023年4月、青山剛士院長が身近なかかりつけ医としての役割を担いたいという思いから一軒家を改装して開院した。これまでドクターヘリやドクターカー、救急医療、へき地医療と実にさまざまな経験を積んできた青山院長。なんでも総合的に対応できる医師をめざし、救急往診と在宅医療という新たな選択肢を地元宮崎の医療にプラスしようと奮闘する青山院長に医師をめざしたきっかけから開業、診療方針まで、語ってもらった。
(取材日2023年03月30日)
地域に貢献するためにできることを考える
大宮地区は先生の地元だそうですね。

大宮地区で生まれ、育ちました。ここからすぐ近くにある大宮小学校、大宮中学校出身です。当院からは実家も近いですね。平和台団地は高齢化率が高く、在宅医療をされている医師も多いけれど、まだまだ求められている地域だということもあって、私も在宅医療をしようと考えました。救急往診や在宅医療について、保険診療では病院から16キロ以内という決まりがあります。クリニックからその範囲になってしまうのですが東西南北で考えたとき、西は綾町役場、北は児湯郡新富町の新富駅、南は宮崎大学の近くまで行くことができます。完璧ではありませんが、ほど良くカバーができているかなと考えています。
どのような年齢層を対象としたクリニックになるのでしょうか? また、専門についても聞かせてください。
年齢で区切ることは考えていません。開院にあたって、地元に住んでいたけれどなかなか今まで話をする機会がなかった方と話すことができました。その時どんなことに困っているかを聞くことができましたし、こういうクリニックにしたいということを話すと、ありがたいと喜んでもらえたんです。地域のかかりつけ医として、どんな状況でも必要とされれば精いっぱいやりたいし、お子さんやご家族も含め、地域の皆さんを診させていただきたいと思っています。専門については、私は日本救急医学会救急科専門医、日本内科学会総合内科専門医ですが、総合的にどんなお悩みにでも対応できるよう努めています。
先生が医師をめざしたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか?

きっかけは、医師でもある宇宙飛行士の方なんです。もともと宇宙が好きで、小学校の図書館にあった宇宙の本を読んでいました。どちらかというと最初は宇宙飛行士になりたいという気持ちのほうが強かったかもしれません(笑)。小学校5、6年の時、その宇宙飛行士の方が宇宙に行かれたんですが、ドクター兼宇宙飛行士だということを知って、とてもすごいなと思い、憧れたのがきっかけです。それで、宇宙飛行士や医師をめざして勉強し、最終的には医師になりました。
救急往診にたどり着くまで
大学時代や、研修医時代のエピソードを聞かせてください。

私の1つ上の先輩からちょうど研修医制度が変わったんです。専門を決めようが決めまいが、まずはいろいろな科をとりあえず回って2年間研鑽を積み、3年目からそれぞれの科に入るようになりました。もともと私は小児の精神に興味があったんです。学生時代にそういったボランティアに関わっていたこともあって、最初はそちらに進もうかとなんとなく考えていました。でも、県立宮崎病院で救急科外来を経験し、その後、県外の病院に勉強するために出て、二次救急と三次救急もそうですが、地域や病院によって大きな違いがあるんだと強く実感しました。研鑽を積む中で宮崎の救急をより良くしたいという気持ちが強くなったんです。
へき地医療も経験されているそうですね。
総合的になんでも診られるようになるために、へき地にも行かせてもらいました。そして、へき地医務が終わったあと、救急に行きました。ただ、救急の専門の勉強も、へき地だとなかなか学ぶことができません。それで、へき地医務が終わった後も全国各地へ行きました。どうしても、へき地だと指導者も少ないし、専門のプログラムからも外れてしまいます。やりたいこととも離れてしまう部分もあります。でも、来たものは何でも診るという診療スタイルができたのは、へき地での医療経験のおかげです。これは救急の医師の経験にも生かせたし、今やろうとしているクリニックの診療にも生かせると思います。技術やスキルアップにもつながり、自分の医療の基礎をつくることができました。かけがえのない経験になったと思っていますね。
ドクターカーやドクターヘリに従事されて感じたことや学んだことも、聞かせていただきたいです。

ドクターカー、ドクターヘリはプレホスピタルといって、待っているだけでは助けられない命があるということで始まった救急医療です。千葉北総病院に行かせてもらったとき、「宮崎でもこういうスタイルを救急のかたちとして取り入れたい」と強く思いました。それで、へき地医療から戻ってきたとき、県立宮崎病院でドクターカーに携わり、その後は米盛病院でドクターヘリに乗るようになりました。限られたものやスタッフ、人、空間を駆使し、そこで頭を使って時間を意識して患者さんを救うためのサポートをする。待つだけではなく患者さんに近づいていく医療で救命率を上げたり、後遺症を減らしたりすることをめざす。この経験が今につながっていると思います。
開院し、クリニックの在り方について考える
救急往診で対応が可能なのはどのような症状でしょうか?

対応可能な症状の例としては、発熱、悪寒、咳、痰、喉の痛み、頭痛、腹痛、嘔吐、下痢、便秘、めまい、動悸、胸痛、呼吸苦、じんましん、湿疹、やけど、打撲、捻挫、切り傷、擦り傷、腰痛などですね。初診の方も、急病や一般負傷なども年齢に関わらず診療します。イメージとしては、救急車を呼ぶほどではないけれど、病院の待合室で待つよりは自宅で横になりながら待ちたいという方ですね。例えば、田植えの時期、昼間は平気だったけれど夜になったら腰が痛くて動けなくなってしまった……なんていうこともあります。ほかにも自宅で介護や子どもの世話などをしていて、病院に行く暇がないという方に使ってもらいたいですね。
救急車を呼ぶほどではない場合は救急往診を選択肢に入れると考えて良いでしょうか。
はい。逆に、呼吸が苦しそう、冷や汗をかいている、反応が悪い、顔色がおかしいという、一刻を争うような症状のときは救急車や救急の外来の利用を呼びかけています。こちらについてはSNSでも注意喚起をしています。救急車を待つことで手遅れになったらまずいですから、1分1秒を争うと思ったら迷わず救急車を呼んでださい。そこまでではないと思うけれどちょっと迷う場合、例えば救急車を呼びたくないけれど体がつらいとき、自分で行くかどうしようかと悩んでいるときに、選択肢の一つとして、救急往診というものがあるんだと思ってもらえるといいですね。
患者さんと接する際に心がけていることを教えてください。

患者さんを中心に診療方針を考えるということは常に意識しています。医療者側の意見や都合を押しつけず、しっかり患者さんの話を聞くこと。直接、話ができるのならば聞かせてもらいたいし、できない場合でも何がその人にとって一番良いことなのかを考えていくようにしています。それから、「これ」とこだわらないで診ることですね。患者さんに困っていることがあるならそれについて勉強するし、一緒に考えます。必要があれば他の病院や先生に相談することもあります。人間の体というのは、一つの中にさまざまな臓器が関連していますから、しっかり全体を見渡していくことが大事だと考えているんです。これまでもそうしてきたし、これからもそうしていきたいと思っています。