桶田 賢次 院長の独自取材記事
純誠会歯科医院
(三郷市/新三郷駅)
最終更新日:2023/04/11

ラグビーで鍛えた腕で軽々と荷物を担いで、「純誠会医院」の桶田賢次院長は車に乗り込んだ。外来の間を縫って、歯科医院に通いたくても通えない地域の人の自宅へ訪問診療に出かけていくのだ。幼い頃、医師として地域に尽くす祖父の姿に感銘を受け、患者の人生に寄り添う医療人の道を志したという桶田院長。「街の歯医者さん」の一人として奔走する日々は、憧れだった祖父の背中に1歩ずつ近づく日々でもあるのだろう。患者が訴える症状の原因を診断で探り、その人にとって最も良い治療法を考え抜く。選択肢を提示し、丁寧に説明する。患者の考えを尊重し、決して無理強いはしない――。当たり前のことをおろそかにしない桶田院長の診療姿勢は、着実に三郷の町に浸透しつつある。
(取材日2023年3月22日)
子どもから高齢者まで、あらゆる年代を診る
もともとこの場所にあった歯科医院を継承されたと聞きました。

ここで長く診療していた先生がリタイアすることになり、後継者を探していたときに出会いがありました。高齢化が進む地域の状況を鑑みて訪問診療にも力を入れ、子どもから大人まで幅広く診るクリニックだったと聞いています。私がめざす歯科医療に近い形で診療をしている先生だったので、ぜひ後を任せていただきたいと思いました。継承にあたっては、患者さんと先生がこれまで築いてきた信頼関係を崩さないように、一人ひとりの症状や考え方などについてもよくお聞きしています。長いお付き合いの患者さんのお口の健康を引き続き見守りながら、歯科医院をお探しの地域の方に少しずつ知っていただけると良いですね。
以前から、地域密着型の歯科医院をめざしていたのですね。
お子さんから高齢の方まで、地域の皆さんとともに歩める歯科医院をつくりたいと思っていました。この辺りも高齢化が進んでいるのは確かですが、若く働き盛りの30代、40代の方もよく外来を受診されます。また、「孫が近くに住んでいるんだけど、ここで診てもらえるか」「うちの子も一緒に連れてきて良いか」とご家族を紹介してくださるケースも増えてきました。お子さんの検診のついでにお母さんを診たり、おじいちゃんに付き添ってきてくれたお子さんも一緒に治療したりと、家族ぐるみで気軽に頼りにしてもらえる歯科医院にしていきたいと思っています。
外来では、どんな症状の方が多いですか。

「しばらく歯科医院に行っていなくて、なんとなく歯が痛いような気がする」という方や、「義歯の調子がおかしい」「詰め物が取れた」という方など、本当にさまざまですね。外傷や親知らずの抜歯などに対応する口腔外科、小児歯科にも対応しています。継承に伴い、院内の壁紙など古くなった部分は入れ替えましたが、子どもたちが楽しみにしていたというキッズスペースは手入れをしてそのまま残しました。おままごとセットが充実していて、みんな夢中で遊んでいます。女の子だけかと思いきや、男の子も熱心にお料理を作るまね事をしているんですよ。色やおもちゃで男女をわける時代は終わったんだなと、生き生きと遊ぶ子どもたちを見ていると実感します。お子さまも怖いではなく、楽しい遊びに行こう!と気楽に来ていただければと思います。
診断力を武器に、治療で地域医療に貢献したい
地域医療を志したきっかけを教えてください。

祖父が医師で、地域の人のために尽くす医療人でした。決して偉ぶらず、「街のお医者さん」として困り事を抱えた患者に寄り添い、要望を丁寧にくみ取って治療していた姿をよく覚えています。祖父の診療スタイルは、「病ではなく人を診る」という全人的医療そのものでした。地域に医療で貢献したいと思ったのは、そんな祖父の背中を見て育ったからだと思います。今も、患者さんが理解できるまでわかりやすい言葉で説明していた祖父の後ろ姿を思い出しながら、「正確な診断と納得できる説明」を重視して診療しています。
その後、歯科医療を選んだ理由もお聞かせいただけますか。
漠然と医療の道をめざし始めた高校時代、とある授業で老人保健施設へ行き、診察に来ていた歯科医師と話をする機会がありました。その先生は、「食」の漢字を挙げて、「食は人を良くすると書く。良く生きるには食べなくてはならず、食べるためには良い歯が必要だ」と話してくれました。まさにそのとおりだ、と感銘を受けたのを覚えています。以来、口腔内の健康と全身の健康のつながりについて考えるようになりました。そして、健康の原点ともいえる歯科領域で、祖父のような医療人になりたいと考えるようになったのです。
大学では、放射線科で学ばれたそうですね。

医科も歯科も、診断はすべてのベースです。診断に誤りがあれば、当然正しい治療はできませんし、治療計画や予後の予測にも齟齬が生まれる可能性が高いでしょう。歯科の診断においては画像診断が非常に重要な役割を果たすため、専門的に学んで「画像を見る目」を養っておくべきだと考えました。虫歯や歯周病がどこまで進行しているか、歯の根に異常がないか、歯茎や顎の状態は良いか、といったことを画像で確かめた上で、その方に合った治療計画を立案しています。患者さんに納得のいく説明をするためにも、画像を正しく読み取って診断するための力は欠かせません。今後も、診療を通して常にスキルアップを図っていきたい部分ですね。
患者の悩みや不安にも耳を傾ける全人的医療を実践
診療のモットーをお聞かせください。

正確な診断に基づいて、わかりやすく説明すること。無理強いをせず、患者さんの意思を尊重して最大限の成果を出すこと。患者さんのキャラクターによって、コミュニケーションの取り方を工夫すること。この3つはいつも心がけています。特に、患者さんのプライベートな空間に足を踏み入れる訪問診療では、患者さんとの距離の取り方に細心の注意を払っていますね。「治療だけしたらすぐ帰ってほしい」という方もいれば、私と世間話をすることを楽しみにしてくれている方もいるからです。その後の診療予定にもよりますが、患者さんが話し足りないようなら少し時間を長めに取って、できるだけ一緒にいられるようにしています。
先生の人柄が伝わる、丁寧な診療方針ですね。
会話の中で、歯の健康につながる生活習慣に気づくことも多いんですよ。ご家族のことや自分のことをいろいろと打ち明けてくださる方もいます。歯に直接関係がなくても、お話を聞くことで少しでも悩みや不安の解消に貢献できればうれしいですね。訪問診療をしていると、「膝が痛くて通院ができず、義歯の不具合を諦めていた」「歯が痛いけど、病院まで行く手段がなく我慢していた」といった患者さんにたくさん出会います。歯科医師になった当初、一見こわもてで不愛想な患者さんを担当したことがありました。諦めずにコミュニケーションを取り続けた結果、「先生のおかげで安心して食べられるようになった」と言っていただけたのは良い思い出です。
最後に、読者にメッセージをいただけますか。

幼い頃は、私も歯医者が苦手な少年でした。お子さんが治療を怖がる気持ち、不安になる気持ちはよくわかります。最初から完璧に治療できなくても構いません。まずはお父さん、お母さんの治療についてくるところから始めて、キッズスペースで遊びながら歯科医院に慣れていきましょう。また、今後はより一層訪問診療に力を入れていきたいと思っています。ご家族や親戚、近所の方で、通院が難しい方がいればお気軽にお声がけください。訪問診療をよく理解した歯科医衛生士と一緒に、患者さんのご自宅まで伺います。