出雲 美佳 院長の独自取材記事
千歳船橋いずも内科クリニック
(世田谷区/千歳船橋駅)
最終更新日:2024/10/15
「千歳船橋いずも内科クリニック」の出雲美佳院長は、昔なじみの近所のお姉さんのような、気さくな雰囲気の医師だ。幼少期からおしゃべりが好きで、小学校の席替えでは、話をよく聞いてくれる子の隣の席にされていたそう。「今は患者さんとおしゃべりをするのが楽しい」と語る。新生児の心臓病をエコー検査する循環器の医師に憧れ、循環器内科を専攻。医師になってからは、大学病院や総合病院の循環器内科で研鑽を積み、2023年1月に同院を開業した。エックス線やエコー検査をはじめ、詳細な脈の変化を調べられるホルター心電図なども設備し、総合病院レベルの診察の提供をめざしている。患者と接する時には、常に「自分の家族だったら」と考えるという出雲院長。循環器内科で診られる疾患や、循環器の医師としての強みについて聞いた。
(取材日2024年3月25日)
患者、スタッフ相互が安心安全なクリニックをめざして
受診される患者さんはどういった疾患の方が多いですか?
咳や風邪の症状でお困りの方が多くいらっしゃいます。年齢は30~50代の方が中心です。発熱患者さん専用の外来を設置しているので、新型コロナウイルス感染症の抗原検査やインフルエンザが疑われる患者さんも受け入れています。感染症が流行すると地域の医療機関がひっ迫して、発熱があっても受診できない患者さんも少なくありません。そうした患者さんを少しでも多く受け入れられるようになったのは、開院して良かったことの1つだと思っています。
内装やレイアウトでこだわった部分はありますか?
発熱専門の外来と一般外来の動線を完全に分けたところです。建物の形状上、動線を分けたレイアウトを考えるのにとても苦労しました。動線にこだわった理由は、一般患者さんへの感染防止はもちろん、発熱患者さんと接するスタッフを最小限にしたかったということもあります。クリニックでの感染拡大を防ぐにはスタッフの健康管理も大切ですから。また、外来用の部屋に設置したベンチにも意味があります。発熱患者さんは抗原検査だけで終わってしまいがちですが、他の病気が隠れていないか診察することが重要です。横になって触診などができるよう、ベンチにしました。その他、一般外来の患者さん同士も待合室で距離が取れるよう、L字に椅子を配置するなど工夫しています。
循環器内科では、どういった病気を診るのでしょうか?
循環器内科では、心臓や血管にまつわる病気を診療します。心臓では胸の痛みや息切れ、動悸といった症状が出やすく、主な疾患は突然発症する急性の心不全や生活習慣病に関連する慢性心不全、動脈硬化などによって血管が狭くなり痛みが生じる狭心症などです。診断にあたっては、心電図やエックス線、採血、エコー検査などを実施し、より精密な検査が必要と判断した際には総合病院などを紹介します。
難易度の高い心エコー、ホルター心電図にも迅速に対応
若い人でも心臓病のリスクがあるそうですね。
はい。心臓の病気は若い世代でも注意が必要です。例えば、心不全の症状の中に咳があります。咳の症状で受診したところ、心不全が発覚することは少なくありません。心不全は既往歴などによらず、健康診断で異常なしだった方も突然発症します。発症すると生死に関わるため、非常に危険です。しかし、若い方の場合、咳という症状から心不全を診断するのは容易ではありません。私は循環器を専門としていて大学病院などで勤務し、運ばれてくる患者さんの経過を見てきた経験があるので、そこは強みだと思っています。
特に診療で力を入れている疾患などはありますか?
長く循環器内科で診療を行ってきたので、循環器の病気は専門的に診たいと思っています。循環器の疾病を検査するための機器も整えました。大きい病院では、2週間~1ヵ月先となってしまうことが多いエコー検査や心電図検査も、当院ではすぐに行えるようにしました。不整脈の検査で使うホルター心電図は、患者さんに計測器を装着して長時間過ごしてもらい、そのデータを採取する機器ですが、外部機関に解析を依頼するため時間がかかります。当院ではその場で解析できる機器を導入し、即日での診断に努めています。患者さんが当院に来る頻度も減らせるので、導入して良かったです。また、心臓を診る心エコー検査は難易度が高いため、実施できる医療機関もさほど多くありません。当院では日本超音波医学会超音波専門医として私と、大学病院で修練している臨床検査技師に月1回来てもらい、スピーディーな検査を可能にしました。
医師として心がけていることについて教えてください。
患者さんを家族だと思って診療することです。そう思うようになったのは、前職の上司に言われた一言がきっかけでした。その方は、仕事に情熱を注ぐ方で、いつも120%の治療を行うにはどうしたらいいかを考えていました。ある時、私が仕事に身が入っていない様子を見て、「その患者さんが家族だったら、どうするんだ」と声をかけられ、その一言にはっとしました。それからは、どんなに疲れていても、患者さんに寄り添った診療を心がけるようにしました。患者さんにはおせっかいとか、余計なことと思われてしまうかもしれませんが、もしその方が私の家族だったら……と、思うことを伝えるようにしています。
専門的な知識を生かし、患者が納得できる説明を
日本内科学会総合内科専門医の資格をお持ちと伺いましたが、その強みについて教えてください。
検査や治療の必要性を患者さんが納得できるように、詳しく説明できることだと思います。例えば、高血圧の患者さんは頭痛や気持ち悪さといった症状があるので、服薬を続ける動機があるのですが、コレステロール値が高い患者さんの場合はそうはいきません。コレステロール値は高くても自覚症状がないため、患者さんは薬を続けることに不安を覚えてしまいます。勤務医時代、他院でコレステロールの投薬を続けている患者さんが相談に来たことがありました。首のエコー検査を行い、動脈硬化があることを説明することに。患者さんに画像を見てもらい、動脈硬化が原因で脳梗塞などにならないために薬での予防が必要なんですよという説明をすると、とても納得した様子でした。「内服する意味がわかったので、薬を続けます」と言ってくださいました。そうした説明も、さまざまな症例を経験したり学んだりしてきたからこそ行えることだと思います。
先生はエコー検査のスペシャリストですが、エコー検査ではどういったことがわかるのでしょうか。
エコー検査では、臓器を断面で観察することができます。エックス線と比較すると、エックス線は重ね合わせの画像のため大まかな情報はわかるのですが、詳細まではわかりません。心臓の検査の場合、エックス線で心臓が大きいことはわかっても、なぜ大きくなっているのか、どの部分が悪いのかまでは調べられないのです。一方、エコー検査ではそうしたことが詳細に調べられます。また、エコーはリアルタイムの動画で臓器の動きを確認できるというメリットもありますね。本来はエックス線とエコー、心電図など多方面の検査を行いたいところですが、やはり患者さんの費用負担が気になります。行いたい検査をすべて合わせると、数万円はかかってしまうこともありますから。患者さんにスマートウォッチの心電図データを見せてもらうなどして、負担が少なく済むように考えています。
今後、どのようなクリニックにしていきたいかお聞かせください。
地域の方に信頼してもらえるクリニックにしたいなと思います。大規模病院では、担当や勤務地の変更があって、1人の患者さんと長くお付き合いすることがありませんでした。開業して新鮮に感じたのは、患者さんの生活に多少なりともつながりができるということです。発熱で受診したことのある若い患者さんが就職して雇用前健診に来てくれたり、「この前うちの妻が受診したよ」と言ってくださる患者さんがいたり、そうして患者さんの生活やご家族とつながっていけるのはうれしいですね。循環器疾患は生活習慣の改善が必要なことも多いので、患者さんと長くお付き合いする中で、予防の取り組みも一緒にできればいいですね。地域のクリニックの先生方との連携も深めていきたいと思っています。周辺には素晴らしい先生方がいらっしゃるので、そうした先生方とつながることで、1人の患者さんを地域で支えられる体制となることが理想です。