齋藤 孝平 院長の独自取材記事
別部歯科医院
(横浜市港南区/港南台駅)
最終更新日:2025/10/16

港南台駅から徒歩15分の「別部(べっぷ)歯科医院」は鎌倉街道沿いにあってバスや車でも通院しやすい。この地域に根差して約40年診療を続けてきたが、2024年1月に齋藤孝平先生が同院を継承。従来の「丁寧に患者と向き合う姿勢」を大切にしながら、病気の原因を突き止めて根本から改善をめざす「原因療法」と、健康な状態を維持する予防歯科を実践している。初診では口腔内スキャナーや写真を用いて現状を丁寧に説明し、じっくり時間をかけて治療を進める。「100歳までご自身の歯でおいしいご飯を食べられるようにしませんか?」と穏やかな口調で語る齋藤院長に、同院の今とこれからについて聞いた。
(取材日2025年9月16日)
地域に根差す歯科医院で守ること、新たに始めること
2024年1月に継承されたそうですね。

私はもともと「別部歯科医院」に3年間勤務していました。こちらでなら私自身がめざす「地に足のついた歯科治療」を学べると考えたからです。地域の方々に愛され、時間をかけて丁寧に診療する姿勢に共感し、大きな学びを得ました。そんな中、前院長が2年前に勇退されることとなり、継承しました。前院長は全身麻酔を用いた「痛みの少ない治療」に努め、多くの患者さんに支持されていましたが、私は麻酔が専門ではない分、予防に重点を置き、生活習慣やお口のケアから健康を守っていきたいと考えています。患者さんと丁寧に向き合い、地域に根差した診療を続けています。
診療方針について教えてください。
私が大切にしているのは、原因療法です。歯科治療はその場しのぎの対症療法ではなく、なぜ病気が起きたのかを突き止めることが重要だと考えています。初診では口腔内の写真やスキャナーを使って現状を可視化し、患者さんに丁寧に説明します。痛みなど緊急性の高いケースを除き、その日のうちにすぐ治療に入るのではなく、検査やデータをもとに原因を見極め、計画的に治療を進めるようにしています。治療に際しては、常に「丁寧さ」と「納得感」を重視しています。患者さんご自身が理解し、安心した上で一歩ずつ進めていただくことが理想です。また、噛み合わせや歯並びといった全体のバランスにも配慮し、できるだけ本来の歯の形や機能を取り戻すことを目標にしています。
予防にも力を入れていらっしゃるんですよね?

はい。歯は一度削ったり詰めたりしても再生しないため、予防が非常に重要です。スウェーデンの研究では、定期的にメンテナンスを続けた人が30年間で失った歯は平均わずか0.6本と、ほとんど歯を失わずに済んでいます。このデータは、予防の重要性を示す強い裏づけだと考えています。当院では、定期的なクリーニングやフッ素塗布に加え、生活習慣や食習慣にも着目した予防を行っています。例えば、美容目的のビタミンC飲料やスポーツドリンク、食事中のお酒が虫歯の原因になることもあります。そうした習慣を見直すことで、お口の環境は大きく変わります。患者さんが納得して日々のケアに取り組めるよう、診察室だけでなく、日常生活まで視野に入れたアドバイスを行っています。例えばキシリトール100%配合のガムに変えるだけでリスクを下げることにつながります。さらに院内では、予防アイテムも豊富に取りそろえ、個々に合ったケアを提案しています。
高齢者を中心に小児歯科まで幅広くじっくり対応
患者層について伺います。

ご高齢の方が多く、70代以上の方が中心です。中には90代で新しく通い始められる方も珍しくありません。ご相談の内容としては、入れ歯や噛み合わせに関するもの、加齢に伴う歯周病や口腔清掃のケアなどが多いです。以前は、前院長が全身麻酔による治療に対応していたことから、歯科恐怖症の患者さんも多く来られていました。現在は全身麻酔の対応は行っていませんが、それでも長年通ってくださっている方や、定期的に検診に来てくださる方が多く、地域の皆さんに支えられていると感じます。
小児の予防歯科にも力を入れているそうですね。
地域的にもお子さんの患者さんは多くはありませんが、定期的に通院される方もいらっしゃいます。虫歯予防には早期の習慣づけが大切で、歯磨きの練習や仕上げ磨きのコツを親御さんにお伝えしています。また、食生活や姿勢も歯並びやお口の成長に大きく影響します。例えば、正しい姿勢は歯並びにも良い影響を及ぼすとされ、虫歯のリスクが軽減するともいわれています。口腔内スキャナーで記録した画像は、診察室で親御さんと一緒に確認するだけでなく、ウェブ経由でスマートフォンなどで閲覧可能です。小さい頃から歯科医院を「怖くない場所」として経験することが、将来の歯の健康を守る大きな一歩になると考えています。
どのような治療に対応されていますか?

当院では虫歯や歯周病といった一般的な治療に幅広く対応していますが、その際も、原因をしっかり突き止めた上で計画的に進めることを大切にしています。入れ歯や噛み合わせの治療にも力を入れ、できるだけ本来の歯の形や機能を取り戻せるよう丁寧に調整しています。また、歯を残すための根管治療や精密な処置も行い、可能な限り歯を長く保つことをめざしています。お子さんに対しては「怖くない診療」を心がけ、親御さんとデータを共有しながら成長を見守る体制を整えています。地域の方々に安心して通っていただけるよう、幅広いニーズに応えられる診療を心がけています。
スタッフの皆さんもベテランぞろいだとか。
当院のスタッフは、前院長の時代から長く勤めているメンバーが多く、地域の患者さんから強い信頼を寄せられています。実際、私よりも歯科衛生士のほうが信頼されている場面もあるほどで、その安心感は当院の大きな強みだと思います。現在は歯科衛生士が常勤1人、非常勤2人、助手と受付がそれぞれ1人という少数精鋭の体制ですが、一人ひとりが丁寧に患者さんと向き合っています。私はスタッフに対して、大ざっぱではなく勉強熱心で、常に知識や技術を更新する姿勢を大切にしてほしいと考えています。長年の経験と新しい学びを融合しながら、患者さんに安心して通っていただける歯科医院をチーム全体でつくっていきたいです。
歯の健康を守ることで全身の健康を守る
どのような経緯で予防歯科と原因療法に着目されたのですか?

学生時代の病院実習で、歯は治療しても再生せず、詰め物やかぶせ物はあくまで代用品に過ぎないことを痛感しました。歯の疾患は外傷のように自然治癒せず、悪くなれば繰り返し問題を起こす。この現実に直面し、対症療法よりも原因を突き止める治療の必要性を強く感じました。その後、日吉歯科診療所の熊谷崇先生が提唱する「定期的なメンテナンスが全身の健康を支える」という考え方に出合い大きな影響を受けました。大学卒業後に予防を実践しているクリニックに勤務し、予防を基盤とした診療を実地で学ぶ機会を得ました。こうした経験を重ねる中で、生活習慣や食習慣にまで目を向け、原因からの改善をめざし、健康を維持することを診療の中心に据える今のスタンスが形づくられんだと思います。
今後の展望をお聞きします。
今後は「治療するための歯科医院」ではなく、「治療しなくても済むように支える歯科医院」をめざしていきたいと考えています。悪くなってからではなく、定期的なメンテナンスを通じてお口の健康を守り、患者さんが自分の歯で長く食事を楽しめるようにしたいですね。特に地域にはご高齢の方が多く、健康寿命を支える場としての役割を果たすとともに、お子さんのうちから生活習慣や姿勢を整え、虫歯や歯並びの予防にも力を入れたいです。「患者さんが主役」であり、私たちはその健康を支える“サポート役”にすぎません。世代を問わず「ここなら安心して通える」と感じてもらえる歯科医院をスタッフとともにつくり上げていくことが私の目標です。
地域の皆さんにメッセージをお願いします。

別部歯科医院は、40年近く地域の皆さまに支えられてきました。その思いを受け継ぎ、これからも丁寧に患者さんと向き合ってまいります。歯は一度悪くなると元には戻りませんが、日々のケアや定期的なチェックで健康な状態を守ることが望めます。そのためにも、お子さんからご高齢の方まで、どの世代の方にも安心して通っていただける場所でありたいと思っています。お口の中に不安を感じたときだけでなく、悪くならないように予防のためにも、ぜひお気軽にご来院ください。これからも地域の皆さんの健康づくりを支えるサポート役として、スタッフ一同取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。