浅井 和康 院長の独自取材記事
浅井耳鼻咽喉科医院
(横浜市港南区/上大岡駅)
最終更新日:2023/12/04

京急本線の上大岡駅東口から徒歩1分。50年以上も地域に親しまれてきた「浅井耳鼻咽喉科医院」には、子どもから働き盛り世代、そして高齢者まで多くの患者が訪れる。父が開設した同院を引き継ぎ、2代目院長として地域医療を支えるのは浅井和康院長。「患者さんの苦痛を取り除くことを第一に考えています」と、慢性副鼻腔炎の日帰り手術など、耳や鼻、喉の苦痛を取り除くことを目的とした治療に積極的に取り組む。ダニやスギ花粉に対する舌下免疫療法や、耳鳴り、めまい、喉の異物感といった慢性的な症状に対する漢方処方など、幅広く対応しているのも特徴だ。穏やかな語り口の中に、地域の耳鼻咽喉科医師としての強い使命感が感じられる。そんな浅井先生にクリニックの特徴や診療に対する思いを聞いた。
(取材日2019年10月29日/更新日2023年11月30日)
50年以上にわたり親しまれてきた耳鼻咽喉科医院
まず、こちらの医院の成り立ちを教えてください。

初代院長である父が1967年に開業しましたから、今年で57年になります。当初は線路を挟んだ駅の反対側にあったのですが、再開発で現在の場所に移ってきました。私は父から「医師になりなさい」と言われたことは一度もありませんでしたが、親の背中を見て育つうちに自然と医師の道を志すようになったという感じですね。小学生の頃までは医院の上階が自宅で、父の診療風景をよく見ていましたから、自然とすり込まれたのかもしれません(笑)。私は、1999年から院長として診療を行ってきました。
どのような患者さんが多いのですか。
患者さんの9割以上は地元にお住まいの方で、年齢層は、小さなお子さんからお年寄りまで幅広いですね。父の代から通われている方も来られます。症状としては、風邪で鼻水が出る、喉が痛い、咳が出るなどの方。慢性の症状では、耳鳴り、めまい、喉の異物感などで受診される方が多いですね。季節による違いもあり、春先はスギ花粉などによるアレルギー性鼻炎が多く、夏は比較的患者さんが少ないのですが、秋から冬にかけて気温が下がってくると、今度はインフルエンザ、風邪、喉の腫れ、中耳炎などの患者さんが増える傾向がありますね。
診療面にはどのような特徴がありますか。

慢性副鼻腔炎の日帰り手術や花粉症を含むアレルギー性鼻炎に対するレーザーを使った治療を行うなど、常に患者さんの苦痛を取り除くことを最優先に考えています。病気の原因を探るために検査をすることはもちろん大切なことですが、検査結果が出るまで患者さんをつらい状態のままお待たせするのでは本末転倒だと思うんですね。幸い、耳・鼻・喉の症状は検査をしなくても、診察だけである程度原因を特定していくことができるので、患者さんの訴えもよく聞きながら原因を見極め、いかに早く適切な処置をしてつらい症状を取り除いていくかという点に、強いこだわりがありますね。
日帰り手術や漢方薬を使った治療など多様な診療を提供
慢性副鼻腔炎の日帰り手術について教えてください。

慢性副鼻腔炎については、当院のホームページに掲載された情報を見て、遠方から来院される患者さんもいらっしゃいます。「大学病院で手術のために入院するように言われたが、仕事が忙しくて休めない」というご相談も多いですね。もちろん、中にはどうしても入院が必要という症例もありますが、そうした場合もとりあえず症状だけを取り除くことが目的の、対症療法的な処置が日帰りで可能なこともあります。一番の問題は、仕事や社会的な事情などで病気が放置されてしまうことですから、できるだけ患者さんのご希望に沿えるようなかたちで治療を行えるように、知恵を絞っています。
アレルギー性鼻炎のレーザー治療とはどのようなものなのですか?
花粉症などのアレルギー性鼻炎の患者さんに対して、局所麻酔で症状の原因になっている部分の粘膜にレーザーを照射する治療です。出血はほとんどなく治療時間は15分程度です。ただし、鼻の粘膜は再生しますから、作用が期待できる期間は約1年です。そのため、毎年、花粉症の症状が現れる少し前の時期に受けるという患者さんが多いですね。この治療はくしゃみ・鼻水・鼻づまりといった症状の改善を図るだけでなく、薬の使用量を減らすことにつながるというメリットもありますから、日常生活に支障が出るほど症状が重い方、薬を飲むと眠くなってしまう方、妊娠中や授乳中の方には特にお勧めしたい治療法です。
アレルギー疾患に対する舌下免疫療法も始められたと聞きました。

ダニやスギ花粉のアレルギーに対して舌下免疫療法を取り入れています。1日1回エキスを投与して3年間継続し、症状の改善をめざします。治療に2〜3年かかりますが、長い人生を考えると有用な治療法だと思います。治療できる対象年齢が広がったので、当院では、小学生の患者さんにも治療を行っています。明らかにアレルギーと認められる方、1年中鼻がつまってつらい方にお勧めしたいですね。また咳が続く、咳喘息というアレルギー疾患の方も増えていますので、この場合は、抗アレルギー剤の吸入剤による治療を行っています。
新しい治療法を取り入れる一方、漢方薬を使った治療にも力を入れているそうですね。
漢方薬を使うのは、主に耳鳴り、めまい、喉の異物感、副鼻腔炎といった慢性的な症状が見られる疾患が対象になります。西洋医学の薬は症状を止めることを目的としたものなので、もう少し根本的な治療が必要な慢性疾患の場合は、漢方による治療のほうが役立つこともあるのです。また喉の痛みのような急性期の症状で、ご飯を飲み込むのがつらいほど症状がひどい時期は抗生物質を処方しますが、その後も症状が2週間、3週間と続くようであれば、漢方薬を試すこともあります。とはいえ、なんでもかんでも漢方薬がいいというわけではありませんので、患者さんの状態や体質などを踏まえた、臨機応変な対応を心がけています。
生活習慣にも注目し、患者それぞれに合った治療を
ところでお休みの日はどのように過ごされていますか。

読書ですね。子どもの頃から家の中で本ばかり読んでいたんですよ(笑)。小学校の時に、家にあった日本の古典文学、ギリシャ・ローマ神話、ラテン文学などを一通り読破しました。そのおかげで、中学1年生の時には漢字の全国大会で1位になりました。10年ほど前に漢字検定1級も合格したのですよ(笑)。今も蔵書は1万冊以上あるので、休日は、四方を本棚に囲まれた部屋で本を読んで過ごすことが多いですね。
今後の展望についてお聞かせください。
慢性副鼻腔炎の日帰り手術と花粉症などのアレルギー性鼻炎の治療はニーズが高いので、これからも積極的に対応していきたいと考えています。高齢化が進み、衛生状況が改善する中で、耳鼻咽喉科では感染症が減り、アレルギー疾患やストレスに関連する症状が増えてきています。ですから今後はもっと患者さんの生活習慣に注目していきたいと考えています。漢方薬も積極的に利用して、患者さん一人ひとりに応じた治療を行い、根本的な改善をめざしたいですね。特に、ストレスが原因ではないかと考えられるめまいの症状が増える傾向にあると感じています。耳鼻咽喉科で治療可能なめまいは基本的には生死にかかわるものではありませんが、脳に何らかの原因が潜んでいないかなどを、正確に診断することが必要ですので、めまいを感じたら受診するように啓発していきたいですね。
最後に読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

高齢の方の難聴や耳鳴り、飲み込む時に唾液が出にくい、というような症状は、「年齢のせい」にされがちですが、実は対処が可能なケースも少なくありません。高齢だからと諦めず、一度検査で原因を調べることをお勧めします。また女性に多いめまいや耳鳴り、喉の異物感といった症状の場合、耳鼻咽喉科と内科のどちらを受診すればよいかと悩まれる方が多いのではないかと思います。そんな時は直接ご相談いただいてもよいですし、当院のホームページに掲載されている解説を参考にしていただければと思います。風邪やインフルエンザについてもどちらを受診したらよいかとよく聞かれます。耳鼻咽喉科は、耳、鼻、喉といった局所を治療する診療科ですから、症状が鼻水や喉の痛みだけでしたら、耳鼻咽喉科を受診したほうが早く対処できる可能性が高くなると思います。一方で下痢などの全身症状がある場合は、内科を受診してください。