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皆川 英明 院長の独自取材記事

紙屋町こころのクリニック

(広島市中区/本通駅)

最終更新日:2023/02/22

皆川英明院長 紙屋町こころのクリニック main

広島電鉄宇品線、またはアストラムラインの本通駅から徒歩約3分。広島市内だけでなく、県外からもアクセス良好な「紙屋町こころのクリニック」は、2022年の11月に開院。診察室にはシックな書店やくつろぎのリビングを連想させる、医院らしからぬ趣が漂っている。ここで院長を務める皆川英明先生は、広島大学の医学部を卒業後、大学病院や国立病院などで長年、精神科医として勤務。ロンドンにあるメンタルヘルスの専門施設、タビストッククリニックにも留学するなど経験が豊富だ。現在も定期的に研究会を主催するなど、診療に生かすための勉強に余念がない。紙屋町という広島市の中心部に開業し、1ヵ月半がたったこのタイミングで、医院の現状や診療に対する思いについて話を聞いた。

(取材日2022年12月14日)

患者が訪れやすいように、広島市内中心部に開業

医師をめざした理由は何だったのでしょうか?

皆川英明院長 紙屋町こころのクリニック1

父親が終戦直後に市民病院を建てる仕事をしていまして、病院に縁があったのだろうなとは思っています。また、私が育ったところが広島大学の医学部がある霞キャンパスに接していて、ずっと白衣の人を見ていたんです。そこでいつのまにか憧れていた、というのもあるかもしれません。私は覚えていないのですが、同級生が言うには、中学生の頃から「精神科医になりたい」と言っていたようなんです。言われてみれば医療関係の本をたくさん読んでいました。心理系の本が特に好きでしたね。高3の夏までは工学部志望だったんですが、思い出したように志望を変更したんですよ。心の問題に興味があったので、心理学科か医学部かなと。ただ、理系で進んできたので、文系の勉強がさっぱりでして。心理学科は諦めて、医学部をめざすことにしました。今になってみれば、心と体は切り離せないものなので、体の問題も学べる医学部を選択したことは、正しかったと思います。

医師を志した当初から開院をするつもりでしたか?

まったくそのつもりはありませんでした。前の職場で定年退職するつもりだったんです。ただ、そこでは災害支援の仕事が多く、広島だと豪雨災害などですね。現地に赴いて被災者の方の精神的なケアをするわけですが、惨事ストレスというものもあるんです。自衛隊の方や消防隊の方のような支援者側が悲惨な状況を見たり、被災者の話を聞いたりすることでPTSDになることがあるんですよ。実は私も少し影響を受けました。昨年の夏、熱海の土砂災害のニュースを見て、気持ちが不安定になっていることに気づいたんです。家族は私よりも早い段階でその様子に気がついていて、ニュースやそういった題材を扱うドラマも、私がいるときは見ないようにしていたようです。家族にも気を使わせていたんですね。だから、これは辞めたほうがいいなと考えて、すぐに開業の準備を始めました。

紙屋町を開業の地に選んだ理由は何でしたか?

皆川英明院長 紙屋町こころのクリニック2

広島市内はもちろん、県外から来る患者さんもいらっしゃいます。また、私は医師との研究会を主催していて、先生方もいろいろなところからいらっしゃるんですね。そこで、交通の便に優れた場所が良いなと思い、市の中心部にしました。最初は広島駅で考えていたんですよ。ただ、そもそもの物件が少ない上、条件が合わず、諦めていたところに、今の物件に出合ったんです。内装にはこだわっていまして、できるだけ病院感を出さないようにしてもらいました。私は精神分析の勉強をしていたんですが、技術取得のためには、自分自身も分析を行わなければならないんです。ロンドンで専門家から精神分析を受けた空間がこういった雰囲気で、そのイメージが良かったんですね。

院長1人ではなく、チームで診療を行う

開業して間もないですが、医院の体制について教えてください。

皆川英明院長 紙屋町こころのクリニック3

現在、医師は私が常勤で、看護師が3人に受付が2人です。さらに、非常勤の医師が3人来ることになっているんですよ。実は、これまで研究会をやっていた仲間たちをはじめ、一緒にやりたいという医師がたくさん出てくるだろうなと思って、最初から医院を広めに造っていたんです。私1人なら診察室も1つでよかったですし、あんなに大きい会議室も造る必要もないですからね。昔から交流があり、20年以上も一緒にやっている先生や、私が専門にしている精神分析療法を一緒に学びたいと言ってくれている先生方が来てくれることになっています。

チームで診療していけるように、体制を整えているんですね。

幸いなことに、とても優秀なスタッフが集まっているんです。5人募集したところに60人もの応募があったりしましてね。特に中心になってくれている看護師は、予診を取るときに、患者さんと30分くらい話をするんですが、その人が話を聞くと、患者さんがたくさんしゃべってくれるんですよ。その後、私が話を聞くので、さらによく話してくれて、スムーズに診療が行えます。そんなふうにチームで診療をしているという意識は強いですね。週1回行っている研究会もその1つです。私たちの仕事はどうしても密室になりますので、道を踏み外したら大変なことになります。だから20人ほどの医者同士が研究会で集まって、自分が診療している患者さんの報告をするんです。常に他の先生からの意見を聞くことで、客観的に判断できるようにしています。

医院の治療方針を教えてください。

皆川英明院長 紙屋町こころのクリニック4

自分がずっと勉強してきた精神分析を基盤に診療しています。精神分析というのは、皆さんがカウンセリングとしてイメージしてらっしゃる治療法の一部で、そのもとになっているものです。今から130年ほど前にウィーンでフロイトが提唱しました。その後、ナチスの迫害のためにフロイトは晩年にロンドンに亡命しました。フロイトの精神分析はそれからもずっと受け継がれているんですね。だから、今もその分野ではロンドンが世界の中心です。特にタビストッククリニック。世界中から留学生が集まる施設なんですが、日本人が少なかった時代にそこに行ったのが、この医院の名誉院長でもある衣笠隆幸先生です。ロンドンの精神分析療法を日本に持ち帰って、指導されていました。私もずっと衣笠先生に学ばせてもらい、先生と同じようにタビストッククリニックにも留学しています。

受診するかどうかを悩まず、早め早めの来院が大切

こちらの医院を訪れるのは、どんな患者さんが多いですか?

皆川英明院長 紙屋町こころのクリニック5

場所柄か、アクセスも良いため、10代から50代まで幅広い世代の方々に来院いただいております。仕事で悩んでいる方、育児や子育てで疲弊している方など、日々の生活の中で抱えるストレスを主訴に来院される方が中心です。先日は広島高等検察庁からお話をいただいて、配信で講演もしました。検察の仕事でも、事件現場に足を運んだ際や解剖などに立ち会うことで、メンタルの不調が起こることがあるようでしてね。中国5県の地方検察庁の職員さんに向けて、惨事ストレスなどの話をさせてもらいました。

心の不調は、どんなタイミングで受診するべきでしょうか?

30年ほど前に私が医師を始めた当時は、統合失調症などの患者さんが中心でした。職場のストレスが原因の心の不調で受診される方というのは、ほとんどいなかったんですね。精神科や心療内科を受診することのハードルが高く、治療を受けずに無理をされていたのだと思います。でも、今はそういう方もたくさん受診してくださるようになりました。本当にさま変わりしたなと思います。ですから、何か日々の生活の中でつらいなと感じたら、早め早めにお越しいただけたらと思います。早ければ早いほど、治療期間も短くなります。最初のサインは「眠れない」ということが多いですよ。すぐに目が覚めてしまうとか、熟睡できないなどを感じ始めたら注意してほしいですね。

医院の今後の展望を教えてください。

皆川英明院長 紙屋町こころのクリニック6

身体障害、知的障害に精神障害が加わって、3障害と言われるようになってから、福祉としてきちんと心のケアができる社会になったと思います。ただ、それで精神科に足を運びにくくなっている面もあると思うんです。職場でストレスを感じ、メンタル不調をきたしていても「障害者扱いされるのでは」と不安をお持ちの方もいるでしょう。そういった人たちにも、きちんと治療を提供できるような医院にしていきたいですね。そういう意味では、丁寧な診療を保てる範囲で、オンライン再診もできたらと思います。心の不調を感じたときに、医院を受診すべきかどうか葛藤があるかもしれません。しかし「相談して良いのだろうか」ということからもう、相談しにきてほしいくらい、どんどんお話を伺えればと思っています。

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