西井 正彦 院長の独自取材記事
にしい腎泌尿器科
(四日市市/高角駅)
最終更新日:2024/08/20

近鉄湯の山線高角駅から徒歩7分、四日市メディカルビレッジにある「にしい腎泌尿器科」は2022年10月に開業したばかりのクリニックだ。泌尿器科受診に際しての気恥ずかしさを軽減するため、リラックスできる環境づくりに配慮。また一次診療を担うクリニックとして診断を重視し、エックス線やCT、膀胱鏡など各種検査機器を充実させている。西井正彦院長は大学卒業後、母校である三重大学医学部附属病院や三重中央医療センターなど地域の中核を担う病院で研鑽を重ね、がんから排尿障害まで幅広い病気に対応している。「泌尿器科は潜在的に悩んでいる人が多い領域。気軽に相談できるかかりつけ医になりたい」と意気込む西井院長に、クリニックのこだわりや泌尿器疾患で気をつけるべきポイントなどについて詳しく話を聞いた。
(取材日2022年11月2日)
泌尿器科疾患に幅広く対応する地域医療のとりでに
開業おめでとうございます。まずは意気込みをお聞かせください。

仕方のないことなのですが、病院はどうしても重症の方が優先になる傾向にあります。ですが、患者さんご自身は軽症であれ重症であれ、同じように悩みを抱えて受診されます。私自身勤務医でしたから、軽症の方に対して十分に時間をかけて診療ができないということに非常にジレンマを感じていたんです。医療を提供する側と診療を受ける側でミスマッチとも言えます。そこで病院の手前にあるクリニックでの一次診療が充実していれば、その問題が解決できるのではないかと思い開業を決意しました。特に泌尿器科領域のクリニックは認知されづらく、地域診療のとりでとなるような存在にしたいと思っています。それが結果的には患者さんのためになり、また病院の負担軽減につながって、より多くの重症患者さんにも対応できるようになるはずです。
医師をめざしたきっかけや泌尿器科を選んだ理由を教えていただけますか?
父が勤務医だったので、幼い頃から医療は身近なものでした。自分が仕事を選ぶ際、感謝されるような職業に就きたいと思っていたので、患者さんたちから感謝の言葉をもらっていた父の姿に憧れたのかもしれません。泌尿器科は患者さんを最初から最後まで診ることができる診療科。例えば消化器疾患であれば、ここまでが内科領域、ここからは外科領域と切り分けられていますよね。それに対して泌尿器科は外来診療から手術、抗がん剤治療、ターミナルケアまで幅広く携わります。そのダイナミックさや繊細さに惹かれて泌尿器科を選びました。
開業されるまでは中核病院での勤務が多かったそうですね。

大学卒業後は三重大学医学部附属病院や鈴鹿中央総合病院、三重中央医療センターなどに勤務し、がん治療から排尿障害の治療まで泌尿器科に関する診療を一通り経験させていただきました。ですから何か一つを専門として学んできたというよりは、尿路結石であったり、前立腺がんであったり、排尿障害であったりと、それぞれの病院の得意な分野で研鑽を積んできたという印象です。泌尿器科領域を幅広く診療してきたというのは、町のクリニックという役割を果たすためにも非常に役立っていると感じています。
尿に関する悩み、腎臓の異常も泌尿器科を受診
どのような症状の時に泌尿器科を受診すれば良いのでしょうか?

患者さんからもよく質問されるんですよ。最もわかりやすいのは尿に関する悩み。例えば尿の回数が多い、出にくいというのは、ある程度お歳を重ねていけば悩む方も多くなります。また検診で高血圧や糖尿などの生活習慣病、がんなどについては調べますが、排尿については調べることはありません。今の自分の排尿状態を知るためには、泌尿器科を受診するしかありません。それに排尿というのは毎日、一生の機能ですから、気になる方は一度専門機関で評価してもらうことをお勧めします。何も症状がなくとも病気が隠れていたり、排尿で悩んでいても異常がなかったりするので、まずはご相談ください。また健康診断で腎機能の低下やエコーで腎臓に病変を指摘されるなど腎臓に異常が見つかった場合、泌尿器科の病気の可能性があります。腎臓は生きていくのに重要な臓器ですから、早期発見・早期治療をするためにも泌尿器科への受診を強くお勧めします。
どのような患者さんがいらっしゃっていますか?
一番多いのはやはり排尿関連の患者さんです。中でも頻尿の相談が多い印象です。年代は50代から90代の壮年期、高齢期が中心。実際開業して感じたことは、想定していたよりも女性の患者さんが多いことでしょうか。泌尿器科は男性がかかる診療科というイメージが強いですし、尿にまつわるところですから気恥ずかしさを感じて女性は男性に比べて相談しにくいかもしれません。以前、女性の患者さんに話を聞くと、排尿の問題を我慢していた、気になっていたけど行けなかったというケースが割とあって、潜在的に悩んだまま受診に至っていない女性がたくさんいらっしゃるのだと実感しました。そういった点においても、泌尿器科として地域で診療することの意味はあるのではないかと思います。
泌尿器疾患で気をつけたほうが良い病気について教えてください。

男性女性関係なく、血尿、特に痛くもかゆくもないが尿に血が混じっていたという無症候性肉眼的血尿が見られたときには受診すべきです。さまざまな病気が考えられますが、泌尿器科としては症状のない血尿で膀胱がんの可能性を考えます。血尿は一時的に出て止まることが多く、受診されないことが多々ありますが、病気が血を出して教えてくれているのかもしれません。また男性の場合は前立腺がんに要注意。男性では罹患率の高いがんであり、多くが無症状のため検査を受けなければわかりませんし、悪性度の高いがんを放っておくと転移して手遅れになる恐れもあります。前立腺がんは血液検査でスクリーニングできるので、罹患が増えてくる50代以降の男性は検検査を受けることをお勧めします。
困り事があれば気軽に相談できるかかりつけ医に
クリニックづくりでこだわったポイントはありますか?

患者さんには気軽に来ていただける場所でありたいと思っていますし、来てもらう以上はリラックスして過ごしてもらいたいので、外装や内装は自分なりに過ごしやすい雰囲気にしています。また一次診療のクリニックには、このまま治療をして良いのか、それとも病院に紹介したほうが良いのかと判断をする役割があります。そのため可能な限りクリニックで評価、診断ができるよう検査機器を充実させました。尿検査はもちろん、エックス線、エコー、CT、膀胱鏡と泌尿器科で必要な検査に自院で対応できるようにしています。特色としては使い捨てタイプの内視鏡を導入していること。使い捨てタイプは大変珍しく、毎回新品の滅菌済みのスコープを使用することで感染リスク低減を図っています。
患者さんと接する際には説明と同意、そして納得を大切にされているそうですね。
常に十分な説明を行い、納得していただいた上で検査や治療を行うよう心がけています。これは当たり前のことですが、時間の制約などでおろそかになりがちです。一人ひとりの患者さんに対して、今の状態やどんな対応が必要かをお話しし、その上で治療の選択肢を示し同意してもらうことが大切だと考えています。診療においては患者さんの体が第一。まずは治療しないといけないものがないかどうかを評価し、次に患者さんの悩みの解決を図ります。安易に患者さんの要望に応えるのではなく、本当に必要なのかどうかという観点から判断することが重要。そのため時間をしっかりと確保して説明を行い、診察室のドアを出る時には納得して帰っていただけるように努めています。
最後に今後の展望を含めて読者の皆さんにメッセージをお願いします。

この地域で泌尿器科にまつわる困り事があれば、まずは「にしい腎泌尿器科」に相談するような、皆さんのかかりつけ医になりたいと思います。そのためには患者さんからの信頼が必要ですし、紹介する病院からの信頼も必要です。それにまだまだ泌尿器科の病気自体の認知も低いので、私自身が地域へと情報を発信し、もっと気軽に受診できる診療科だということを伝えていきたいと思います。前立腺がんのように自覚症状のない病気もありますから、困っているけれどどこに行けば良いかわからないという患者さんがいなくなるように頑張ります。