浅井 俊弥 院長の独自取材記事
浅井皮膚科クリニック
(横浜市保土ケ谷区/保土ケ谷駅)
最終更新日:2025/03/14

保土ケ谷駅西口から徒歩2分、道沿いに複数のクリニックが並ぶ便利なエリアに「浅井皮膚科クリニック」はある。院長を務める浅井俊弥先生は、日本皮膚科学会皮膚科専門医であり、日本臨床皮膚科医会副会長を務める皮膚科のエキスパート。皮膚のかゆみや腫れなど、日常生活で誰もが経験する悩みに寄り添い、地域住民から頼りにされている心優しき皮膚科医だ。「皮膚科だけにとどまらず、医師としての務めを果たしていきたいです」と、語る浅井先生が大切にしているのは、地域医療や学校保健、災害対策。医療と社会全体の未来を見据え、精力的に活動する浅井先生は、今、どんな想いを抱いているのか。これまでの経験談や今後の医療へ望むことなどを語ってもらった。
(取材日2025年1月27日)
日常の困ったことに寄り添う皮膚科クリニック
クリニックの開業から27年たちますが、地域や患者さんに変化はありましたか?

地域の患者さんとは長いお付き合いをしている分、ご高齢の方が多くなってきた印象です。皮膚には季節柄の症状がつきものですから、主訴に関する大きな変化は特にありませんね。冬の時期に多いのは、寒冷からくるしもやけで、夏ですとミズムシや汗が原因で起こるかゆみなど。他に、体のどこかが腫れてしまったとか、日常生活の中で困ったことがあれば来ていただきたいですね。
地域医療にも注力されていると伺っています。
生まれ育ったこの土地、保土ケ谷で、現在は横浜市保土ケ谷区医師会会長を務めています。さまざまな診療科の医師や他職種の方と積極的にコミュニケーションを取り、連携を強化しています。他の診療科の医師が困ったときに手助けするのも、皮膚科医の仕事の一つです。高齢者施設入所者や在宅患者の皮膚症状には不慣れな先生もいらっしゃるので、治療方針などの相談を受けることもあります。また、ここ数年で新しく取り入れたのは、オンライン診療です。新型コロナウイルス流行以降、初診や再診を含むオンライン診療が正式に認められましたから、往診の先生が媒体さえ持っていれば、いつでもどこでも、ビデオ通話などで対応できます。
在宅患者さんの治療は、どのような内容なのでしょうか?

皮膚の症状を確認したり、爪を切ったりなど、基本的な視診や処置を行っていますね。高齢者や施設入居者を含む在宅患者さんの7割以上が、皮膚科に相談したい皮膚疾患を抱えているといわれており、ケア担当の看護師や在宅主治医が判断に困ったとき、私に相談の連絡が来るというわけです。ここで機能するのが、私が参加している「在宅医ネットよこはま」です。各専門分野の医師が集まり、新しい治療方針や今後も高齢化が進む社会へ向けた対策などを行っているんです。シビアだけれども避けては通れないテーマを考えながら、医師として社会問題に向き合っていきたいですね。
医療の一つの柱は、子どもの健康を支えること
保土ケ谷区医師会長の他にも、役職を務めているとお聞きしました。

日本臨床皮膚科医会の副会長を務めています。また、地域医療や被災地医療に関心があり、JMAT(Japan Medical Association Team)の隊員にも任命され、2024年5月には能登へ赴き、避難所に住む高齢者の床ずれのケアや爪切りなど、医療支援を行ってきました。今後も多くの先生方と意見交換をして、できることを増やしていこうと思っています。
先生は校医も担当していらっしゃるそうですね。
皮膚科医が内科校医を務めるケースは、あまり多くありません。しかし、アトピー性皮膚炎など、学校生活で困る皮膚の病気を持つ子どもたちがいます。中にはいろいろな事情で、専門の皮膚科にかかれない子がいるかしれない。学校検診は多くの生徒を診察できる機会でもありますし、皮膚疾患を持つ生徒のケアは、医師としての大事な務めです。子どもの健康を支えることは、医療の一つの柱なんです。
さまざまな取り組みへの情熱は、どこから生まれるのでしょうか?

医師としての務めを果たすという考えは、何かをきっかけにというより、もともと自分自身の中にありました。現在はいろいろな役割と責任も背負っていますが、「よく頑張っているね」と周りから声をかけてもらうこともあり、やりがいを感じています。それに、さまざまな活動をするためには、医師会との関係性も重要で、学校医の担当や被災地への派遣などは、私自身が医師会で活動しているからこそ巡ってくるチャンスなんです。大変なことも多いですが、良い経験をさせてもらっているなと思います。
若手医師に望むのは、医師としての務めを果たすこと
改めて、先生が大切にされている考えを教えてください。

皮膚科医の前に医師であるということです。私自身、皮膚科という枠組みから外れた活動が多くて。皮膚科だけにとどまらずというか、広い視野で社会と向き合うようにしています。ただ、最近は時代の変化とともに価値観も多様化しています。研修終了後の医師の進路も多様化してきており、プライベートを大切にする生き方を選ぶ医師も増えてきました。それはとても大切なことですし、否定するわけではありません。あくまでも私の価値観で、医療全体を見て医師としての務めを果たしたいと思っています。もちろん無理強いはしませんが、同じような考えを持つ若者が、今後増えてくれるといいなと考えています。
先生が今後も背中を見せ続けていかなくてはいけませんね。
周りから「死なないでね」とよく言われますよ(笑)。確かに、まだ試行錯誤している段階のことがたくさんあるので、倒れるわけにはいきません。最近は、1日の歩数を気にするようになりました。雑誌の編集もしていますし、20年弱ほど毎月コラムも執筆しているので、パソコンに向き合っている時間が多いんです。運動不足解消のため、なるべくよく歩くことを心がけています。
先生の願いや今後の医療への想いをお聞かせください。

学校保健や医師会の活動に積極的な若手が育ってくれることを願います。今後も大きな課題として残るのは地域医療です。団塊世代に加え、団塊ジュニア世代も高齢者に含まれる年齢に達し、高齢者数のピークを迎えるといわれているのが2040年。これが今、2040年問題として取り上げられている社会課題です。つまり、医療も介護も今以上に必要になるのではと感じています。2025年問題が解決していない今日、将来へ向け、医療としてどのように地域を支えていくか、他職種とどのような連携を取っていくべきなのか。行政も含めて、模索し続けないといけないと考えています。