土田 幸平 理事長の独自取材記事
宇都宮消化器・内視鏡内科クリニック
(宇都宮市/宇都宮駅)
最終更新日:2025/03/05

宇都宮市の医療モール内にある「宇都宮消化器・内視鏡内科クリニック」。理事長の土田幸平先生は消化器内科、特に内視鏡分野を専門として研鑽を積んできた。仕事や子育てで忙しい現役世代を中心に幅広い年齢層の患者が気軽に利用できる医療体制をめざし開業。スタッフとの連携の緊密化を図ることで待ち時間を短縮し、事前にウェブでの問診を活用することでスムーズな診療を心がけている。同院では病気の早期発見のため、受けやすい内視鏡検査を意識し、安心して検査を受けられる環境づくりに注力。男女別の準備室とトイレも備え、内視鏡検査の不安を軽減できるよう努めている。「胃や大腸の内視鏡検査を受けたことがないという人がいない状況をつくりたい」と熱く語る土田理事長に、診療ポリシーやめざす未来について話を聞いた。
(取材日2024年11月28日)
忙しくても気軽に受けられる医療をめざして
医師を志した経緯をお聞かせいただけますか。

本格的に医師を志したのは高校生の頃です。もともとは設計やデザインに興味がありましたが、医師の親戚がいたことで医療が身近だったことも影響しています。社会や仕事を深く理解していない時期でしたが、医師の仕事を知るうちに自然と興味を持つようになりました。私が医師になった年はスーパーローテーション制度が始まった初年度で、外科、内科、産婦人科などさまざまな診療科を経験しました。その中で最終的に選んだのが、急速に発展していた消化器内科です。特に内視鏡技術の進化に魅力を感じ、患者さんの体に負担の少ない精密な診断・治療の可能性を目の当たりにしたことが決め手でした。
どのようなきっかけで、地域医療に注力したいと思われたのでしょうか?
医師としてキャリアを積む中で先端医療の重要性を感じる一方、地域医療の大切さにも目が向くようになりました。 私はここ栃木県宇都宮市の出身で、地元の医療体制や地域の方々の健康維持に自然と関心を持つようになったのです。大学病院勤務時代は特殊な病気や先端の医療が中心で、地域医療の現場が見えにくかったことがありました。 そこで視野を広げたいと思い、国立病院機構宇都宮病院に移り、部長として3年間地域医療の現場を経験しました。
クリニックモールを立ち上げた経緯を教えてください。

地域医療の現場を経験する中で感じたのが「気軽に受けられる医療」の必要性です。特に、働き盛りである40〜60代の健康を支える体制を強化する必要があると感じました。現役世代は忙しさから健康管理が後回しになりがちです。しかし、適切な診療を受けて健康を維持できれば、将来的に医療を必要とする状況を防げるのではないかと思ったのです。健康維持ができれば、健康の心配なく働くことができます。病気も未然に防げる可能性が高まります。忙しいと病院に行く時間がなかったり、複数の医療機関に行く時間が取れなかったりすることが多いです。そこで、内科や眼科などが1ヵ所に集約されていたら、もっと気軽に医療を利用できるのではないかと思ったのです。調子が悪い時に気軽に相談できるような医療体制を立ち上げたいと思い当院とともに開業しました。
内視鏡検査のハードルを下げ、患者の不安を軽減
胃や大腸の内視鏡検査で大切にされていることを教えてください。

患者さんが少しでも検査を受けやすい環境を整えることを重視しています。日本は内視鏡検査を手軽に受けられる非常にまれな国で、費用も抑えられて短時間で済みます。これに対しアメリカでは、全身麻酔が必要で費用も高額なため、気軽に受けられるものではありません。私がめざしているのは、これまで検査を受けたことがない方にその重要性を伝え、不安や怖さを和らげて実際に受けてもらうことです。健康意識の高い方は毎年検査を受けますが、そうでない方も多いのが現状です。最終的には「胃や大腸の内視鏡検査を受けたことがない」という人がいない世界をめざし、隠れている病気を見逃さないことを考えています。
男女別の準備室もご用意されていると伺いました。
男女別の準備室は大腸内視鏡検査を少しでも安心して受けていただくために設けています。大腸がんは日本人の死因で非常に高い割合を占め、女性ではがんによる死因の中で第一位です。内視鏡検査で早期診断・治療が可能ですが、それにもかかわらず死亡率が高いという矛盾した状況なのです。その理由の一つが検査へのハードルの高さから早期発見が遅れるケースが多いことです。検査では恥ずかしさや怖さなどのネガティブなイメージが強く、下剤を服用すると頻繁にトイレを使用するため、男女同室では抵抗を感じる方もいらっしゃいます。そこで、患者さんが感じる負担を減らし、受けやすい環境に整えることが必要なのではと思いました。男女別の準備室と、さらに1人1つ専用のトイレを用意し、落ち着いた環境でストレスを軽減し、安心して検査を受けていただけるよう配慮しています。
診療ではどのようなことに重きを置いていますか?

まず、患者さんが何を訴えているのか、主訴をしっかりと把握することです。例えば「おなかが痛い」という訴えがあった場合、その原因が何なのかをできるだけ明確にすることを大切にしています。また、特に重要だと感じているのは、処方するお薬についての説明です。患者さんが「この薬は何のためのものかわからない」という状況を避けたいと思っています。薬を服用するというのは、ある種の害を与えるかもしれないものを口にするわけです。ですので、患者さんには「胃酸を抑えるための薬です」など、薬を服用する目的を理解してもらい、納得した上で飲んでいただきたいと考えています。 私はむしろ「本当にこの薬が必要なのですか?」という疑問を患者さんに持ってほしいのです。治療は医師が一方的に行うものではなく、患者さんと一緒につくり上げていくものです。だからこそ、お互いが納得しながら治療することを大事にしています。
スタッフとの連携で工夫されていることは何でしょうか?
スタッフとの連携については現場がスムーズに回ることが何より大事だと考えています。患者さんの待ち時間をできるだけ減らすために、診療の流れで詰まりやすいところをスタッフとフィードバックし合っています。患者さんにとって時間はとても大切なので、無駄な待ち時間を減らすことは常に意識しています。私が診療に集中していると気づけない部分もあるので、スタッフからの意見を聞くことが重要です。例えば「この部分で待ち時間が長くなっています」とか「ここを改善しないと患者さんが大変になってしまいます」と積極的に伝えてくれるので助かっています。今もアップデートの途中ですが、全員で改善していくことを意識しています。
早期発見・早期治療、誰もが検査を受けやすい社会へ
お忙しい毎日の中で、リフレッシュしたい時はどのようにお過ごしですか。

リフレッシュしたい時は、クリニックモール内の眼科や形成外科の先生と一緒にスポーツを楽しんでいます。最近はキックボクシングジムで体を動かしながら汗を流すことが多いです。体も心もリフレッシュできて心身ともに良いリセットになります。
今後の展望についてお聞かせください。
宇都宮市内で40歳を超えた方々の中で「内視鏡検査を受けたことがない」という方がいない状況をつくることをめざしています。そうすることで、胃がんや大腸がんで不幸になる方を一人でも減らしたいという思いがあります。そのためには、現在のクリニックだけでは対応できる人数に限界があるため、必要に応じて同じ理念を共有するクリニックの展開も考えています。患者さんがしっかりと必要な検査や治療にたどり着けるような未来をつくりたいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

内視鏡検査は「痛い」「怖い」といったネガティブなイメージも多く、それが原因で検査を避けてしまう方も少なくありません。完全に不安をゼロにすることは難しいかもしれませんが、私たちは不安をできるだけ減らすために、知識や技術を常にアップデートしています。検査を受けたいけれど不安がある場合は、どうぞ遠慮なくご相談ください。どこが心配なのか、何が障害となっているのかを一緒に考えながら、少しでも不安を取り除く方法を提案していきます。些細なことでも構いませんので、気軽にご相談いただければと思います。