本田 至史 院長の独自取材記事
ほんだ歯科ますいクリニック
(札幌市中央区/西28丁目駅)
最終更新日:2023/11/30

札幌市中区宮の森。自然豊かな住宅街の一角に「ほんだ歯科ますいクリニック」はある。一般的な虫歯治療はもちろん、歯周病、インプラント治療、入れ歯、審美面に配慮した治療まで幅広く対応する同院だが、最大の特徴は、本田至史院長が日本でも数少ない歯科麻酔を専門とする歯科医師であるということ。歯科麻酔を専門としてきた豊富な経験を生かし、病気や心理的な理由で歯科治療が困難な方に対して、眠っているような感覚で痛みに配慮した治療を試みる、静脈内鎮静法を保険診療で提供している。「誰もが平等に歯科治療を受けられるように」という思いを大切にする本田院長に、開業の経緯や静脈内鎮静法や静脈麻酔を用いた治療について詳しく話を聞いた。
(取材日2022年9月22日)
一人ひとりの患者と丁寧に向き合うクリニックをめざす
先生が歯科医師をめざしたきっかけは何ですか?

私の家は父も祖父も歯科医師だったので、歯科医師になるのが自然な流れだったと思います。とはいえ、歯科医師をめざして真っすぐに進んできたわけではなくて、高校卒業後に家を飛び出して自動車のドアを作る仕事をしたり、ダンスが趣味だったのでダンスインストラクターの仕事をしたりと、少し寄り道をしたこともありました(笑)。その後、やはり歯科医師をめざそうと思い直して、祖父と父の出身大学である東京歯科大学に入りました。今はその寄り道も人生経験として無駄ではなかったなと思っています。高校を卒業後に大学に進んでいたら出会わなかった人たちにも出会え、いろいろな立場の人と接した経験は、患者さんを理解する時にとても役立っています。みんなが歯の健康に興味があるわけではなく、仕事が忙しくてなかなか通院ができない人や、歯の治療どころではない人など、世の中にはいろいろな状況の人がいるということを知れたのは良かったと思います。
開業までの経緯を教えてください。
私は静岡の出身なのですが、妻が稚内の出身ということもあって、3人の子どもたちを北海道で育てたいと思い、引越してきました。北海道に来てからは中央区の志村デンタルクリニックで5年間お世話になり、そろそろ開業をしたいと考えていた時に、うすい歯科クリニックから継承の話をいただいたんです。20年近く診療をされてきたクリニックだったのですが、とてもきれいに使ってくださっていたようで、内装などもほとんど変えずに引き継ぐことができました。うすい歯科クリニックの院長先生は患者さんからもとても人気があって、閉院のときには皆さんがとても悲しまれていたのが印象的でした。その患者さんたちで今も当院に続けて通ってくださっている方も多く、ありがたいなと思います。
どのようなクリニックにしたいとお考えですか?

今はクリニックも大型化していて、分院などをどんどん増やすところも多いのですが、将来的には、また昔のスタイルに戻るのではないかと思っています。高齢者が増えたり、人口が減っていくことを考えると、小さい規模でゆっくりこだわりを持って患者さんと接するクリニックが、これからは増えていくのではないかと思っており、そのようなクリニックが私の理想でもあります。一人ひとりの患者さんに丁寧に時間をかけて向き合うことはもちろん、治療に関しても自分ができる範囲のことを全力で提供し、できない部分については専門の先生を紹介するという形がいいなと思います。すべてを自分の力で無理に診ようとするのではなく、得意分野を極めている先生と連携しながら適切な医療機関につなげていくことが、患者さんにとっても良いと思うんです。
歯科麻酔に関する専門性を生かし痛みに配慮した治療を
こちらのクリニックの診療ポリシーを教えてください。

「誰もが平等に歯科医療を受けられるように」という思いを大切にしています。特に私が力を入れているのが歯科恐怖症や歯科心身症の方の治療です。歯科治療が怖くて通院できない人というのは、数としては明らかになっていないだけで実は大勢います。病気や障害などさまざまな理由で歯科治療が困難な方も入れるとさらに多くの方が、通いたいのに通えないという状態にあると思うんです。そういう患者さんたちが安心して通えるクリニックにしたいと考えています。うすい歯科クリニックの時代から通ってくださっている患者さんも大切にしながら、痛みに配慮した治療にも力を入れていきたいと思っています。
痛みに配慮した治療というと、具体的にどのような治療を行うのでしょうか。
私と妻が歯科麻酔を専門としているので、静脈内鎮静法や静脈麻酔を用いた痛みに配慮した治療を保険診療で提供しています。具体的には、点滴をして、眠っているような状態のうちに歯科治療を終わらせることを試みる方法です。静脈内鎮静法や静脈麻酔の際は、局所麻酔も併用して行います。これによって、治療中の痛みの軽減に努めることはもちろん、不快に感じる音や時間などを感じなくて済むように努めています。患者さんには「治療ができた」という自信を持って帰っていただきたいと思います。
歯科麻酔を専門にしようと思ったのはなぜですか?

歯科で医療事故というのはあまりイメージできないと思うのですが、インプラントの手術で出血してしまったり、治療中に何かを飲み込んで窒息してしまったりという問題が起こることもゼロではなくて、実際に年に数例ほど亡くなるケースもあるんです。そのような万が一のトラブルの時にも、適切な対応ができるようにしたいと思い、東京歯科大学の歯科麻酔学講座で学び、卒業後は群馬の高崎総合医療センターで医科麻酔の勉強をしました。専門は歯科麻酔なのですが、結局は全身のことを理解していなければいけないので、まずは医科麻酔を学ばなくてはいけなかったのです。高崎総合医療センターでは、脳外科や呼吸器に関する医科の手術に入って全身麻酔を担当することもありました。緊急の時の対応や、救急に運ばれてきた患者さんの対応なども学ぶことができ、とても良い経験になったと思います。
勇気を出して来院した方をしっかり受け止めたい
歯科医師として、どのようなときにやりがいを感じますか?

やはり、今まで痛みが怖くてクリニックに行けなかった方が、治療を受けることができて喜んでくださっているのに出会えたら、こちらまで感動しますね。歯科恐怖症の患者さんの中には、クリニックで「どうしてこんな状態になるまで放っておいたんだ」と叱られて深く傷ついてしまう方もいて、とても残念なことだと思うんです。たかが虫歯の治療ですが、本当に苦手な方にとっては、椅子に座って口を開けるということだけでも強いストレスを感じる方もいます。ですから、当院では勇気を出して来てくださった方を、しっかりと受け止めるためにも、どのような理由で苦手なのか、何が怖いのかを時間をかけて丁寧に話をお聞きするように努めています。
休日はどのようにしてお過ごしですか?
子どもが3人いるんですが、休日はできるだけ一緒に過ごすようにしています。子どもと遊べる期間は限られていて、10歳くらいになったらもう友だちと遊ぶのに忙しくなってしまうはずです。その時になって後悔することがないように、休日は子どもと遊ぶ時間を大切にしています。どちらかというと、私が遊んでもらっているというほうが正しいかもしれません(笑)。以前は勉強会などに参加するときには出張で時間が取られてしまうことが多かったのですが、今は新型コロナウイルス感染症の流行下ということもあって、勉強会もオンラインで行われるものが多いんです。そのおかげで、子どもと過ごす時間がたくさん取れるのでうれしいですね。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

今後は歯科麻酔についてもっと皆さんに知っていただけたらうれしいですね。静脈内鎮静法や静脈麻酔を用いた痛みに配慮した治療ができるクリニックが身近にあるということを、積極的に周知していきながら、今後も、誠実に患者さんと向き合い、丁寧な説明を重ね、患者さんが安心して通えるクリニックをめざしたいと思います。札幌にもクリニックはたくさんありますが、患者さんにはどこに通うのか選ぶ権利があって、私たち歯科医師は患者さんが来るのを待つしかないわけです。選んでいただけるクリニックになるために努力を続け、「歯科治療は苦手だけど、ここなら通える」と思っていただけるようなクリニックをめざしたいと思います。